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博士号は世界へのパスポート?Ph.D.日本と諸外国のすごさ・価値認識の違い

2019年2月23日

目次

  • Ph.D.自体の価値認識の差異
    • 博士号の表現
      • 「運転免許証」
      • 「博士は足の裏の米粒」
      • 「入院」
      • 「学歴ロンダリング」
      • タイトルがDr.に変わる
    • 「博士号はパスポート」
        • 筆頭の学術論文について
  • アカデミアとそれ以外でのPh.D.
    • 大学教授を目指さないなんて勿体ない?
      • もし仮に大学に残ろうとする場合
    • 実績と時間・実力の関係
    • 強いセーフティーネット・保険・Bプランの重要性
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  • 終わりに
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公開日:2019年2月23日
更新日:2021年3月11日

前回こんな記事を書いた。予想外にバズってしまい、個人ブログなのにもかかわらず、その日最も話題になった記事のひとつになってしまった。サムネイルが無料の画像である時点で、そんなこと想定していなかったのは言うまでもない。

海外と日本の就職活動の歴然とした差を実感。海外大博士から見た就職活動

私が就職活動で直面した日本と諸外国の差は、就職活動自体だけにとどまらず、「博士号・Ph.D.」自体の認識の差も関係している様子である。今回はそのあたりについてまとめておく。

別に文句が言いたいとかでは全くなく「経験上、こういう違いがあると思うので、特に大学院へ進学などする人がいたら参考にしてみてもいいかもしれません。」程度の話である。なお記事タイトル内の「すごさ」はSEO対策でしかない。

また、だれが悪いとかいうわけでもなく、文化と構造の差ということも付け加えておきたい。

なお諸外国は、西ヨーロッパ・北米・カナダ・シンガポール・香港を指す。取り扱う「Ph.D.」も経験をもとに、主に数学・物理・工学などの理工系を指す。社会科学系についても少し後述する。

勝手に他人の名前を出すのは問題だと思うので、リンクなどがない場合に、聞いた話は聞いた話と書いてある。そして結構長くなっているので適宜読み飛ばしてほしい。

Ph.D.自体の価値認識の差異

そもそもPh.D.の社会的な位置づけと認識が、日本と諸外国では違う様子。

上記の記事に合わせて、こんなリプライをいただいた。

 

こっちだと物理学をやってるの?すごい!良い仕事が選び放題だね!と言われます。
日本だと物理学で博士課程?何それキモ…みたいな笑
ワンチャン英語能力が年齢の事とかカバーしてくれるかと思ってましたがそれも無さそうで軽く絶望しました😂

— まえけん@ドイツ🇩🇪理系留学中 (@lithiumspace) January 28, 2019

まさにその通りの印象を受ける。雑だが図にするとこんな感じ。

諸外国のPh.D.と日本の博士号のイメージ、のイメージ。

諸外国のPh.D.は、専門知識がどうのという以前に「世界の意思決定層への入り口」で、特定分野の専門家としての役割も兼ねる場合がある印象である。特にドイツとかはその傾向が強い印象。

実際にイギリスでも「ケンブリッジで物理の博士なんて、もう世界中で仕事選び放題でしょ!」と大学内でもいわれたことすらある。

Ph.D.を取得してからも、諸外国の外国人らと話すことがあった。大半の場合も、私がPh.D.持ちだと知ると、態度が急変。非常に丁重に扱われた。

 

一方で、日本での博士号は「よっぽどその事柄が好きなマニア」という印象を受けがちである。

私がPh.D.持ちだと知ると、逆の意味で態度が変わったこともある。

「お勉強、好きなんですねぇ…。」

という触れてはいけないものに触れたような、下手したら一部嘲笑と哀れまれるような感じを受けることもあった。

…ていうか、そもそもお勉強じゃなくて、労働としてカウントされてたんですけど…。

博士号の表現

上記のような状況を表すような呼び方にも差がある。

「運転免許証」

博士号は、運転免許証のようなもの。無いと研究者として始まらない、ということである。

「博士は足の裏の米粒」

博士号は足の裏の米粒という表現がある。

多くの人が取得するものの、生活上の役には立ちづらい学位や資格を揶揄した言葉です。足の裏の米粒は「取らないと気持ち悪いが、取っても食えない」ものであり、取得しておいたほうがよい資格だが、その資格を取っただけで飯を食っていくのは難しい、という意味合いで用いられます。

要するに研究者としては、取らないとなんだかむず痒いが、とっても職にはつながらないということだろう。

いずれも「研究者として」というのが、考えの前提にあるのが感じられる。まだニュートラルな感じがある。

「入院」

また、大学院に入学することを「入院」ということがあるらしい。その心は

大学院に入院すると、退院後の社会復帰が難しくなる。修士課程や博士課程を卒業しても、かえって「学歴過剰」と見なされることがあるからだ。

だそうだ。

もちろん元となっている表現は、病院への入院。

退院後の社会復帰が難しいとのことである。なんともまあ。

「学歴ロンダリング」

似たような感じで、「学歴ロンダリング」という表現もある。

これは、大学の学部のよりもレベルの高い大学院に入って、学歴を、犯罪で得た収益を正当な方法で得たお金のように見せかけ「洗浄」することを言う。

ちなみにマネーロンダリングは、犯罪で得た収益を、合法な方法で得たお金に見せかけるために「洗浄」する行為。脱税隠ぺいなども含まれます。要するに犯罪行為です。

…大学院で大学を変えるのは、犯罪のようなものということなのか。

このことからも分かるように、日本では、大学の学部が至上で、それ以上は、モノ好きのお勉強好きが行くところ、という印象を受ける。

ちなみにこの類の表現は、日本以外では聞いたことがない。

 

 

タイトルがDr.に変わる

一方で諸外国だとどうなのだろうか?結構異なる。

Shinohara-san 等と連絡が来るので感じないが、外国ではMr.やMrs.から、Dr. に変わる。

先述のように態度が変わったが、そもそもDr.に対して違う扱いをするべきというのが、社会的にある様子。飛行機でもダブルブッキングなどの際に、優先的に格上げが起きたりするらしい。

…ただ、格安航空に乗った際には、Dr.の欄が無かった。

これには、「『博士様は格安航空なんかには乗らない』なんじゃないの?笑」という意見が出ていた。

博士様(笑)でも安いし便利ですよ、格安航空。

博士様(笑)でも、はなまるうどん大好きですよ。天かすとネギめっちゃ入れちゃうタイプ。

「博士号はパスポート」

少々毛色が違うもので、「博士号はパスポート」という表現があった。

その心は、以下の様子。

博士号はパスポート。研究領域に行くには、取らないと始まらない。

博士号はパスポート。海外でもグローバルに通用する。

しかし、この表現を借りれば、パスポートならこういう表現もできないだろうか?

博士号はパスポート。どこの大学ものかで、行けるエリアや対応が変わる。

各国が発行するパスポートは、国によって、ビザなしで行ける国や、アライバルビザ(到着したら空港で発行できる)等の数が違う。国交によっては、入国できない国がある。ビザの発行が異様に難しい国や、特別な事情がない限り入国を拒否される国すらある。

一方、各大学が発行する博士号は、出身大学によって、行ける業界や企業が変わってくる。大学によっては、審査が異様に厳しくなったり、特別な事情がない限り、門前払いを食らうことになる。

筆頭の学術論文について

「博士号はパスポート」に関連して、少し紹介したい。

私は詐称ではなく、紛れもなくPh.D.を取得した。ただ唯一の心残りは、共著は何本かあるものの、自分の筆頭学術論文を公開せずに卒業したことである。これも結構残念な偶然がだいぶ重なってこうなった。

まあ言い訳だがこんな感じだ。(ちょっと学術界隈の込み入った話なので、以下の線まで飛ばしていただきたい。)

 

ーーー込み入った話始めーーー

まず研究グループの先輩が「博士審査不合格1年後再審査」というものになった。要するに、質疑応答の質が悪く、やり直しである。彼は筆頭で投稿論文も出版している。(先輩も一年後は無事突破し、博士号を取得したようだが、彼本人も、指導教官も緊張感が果てしなかったようである。)

これにビビる指導教官。私の論文投稿計画は吹っ飛び、博士論文だけに集中することに。関係各所に聞いた限りでは、指導教官は、指導している学生が複数回以上審査などに引っかかったりすると、大学から怒られたり・出世に響くなどする様子である。その光景も見て私もビビった。

Ph.D.の要件は「博士論文が審査を通過すること」だけである。(厳密にいえば、Probationaryと呼ばれる1年目の正式登録審査もある。ここで落ちると退学になる。)よってここに指導教官には、学生に査読論文を出させるインセンティブはない。(科研費応募を考えると、間接的にあることはある。)

一方で、日本では論文数が博士論文執筆条件になっている場合が多いようで、そもそも投稿論文がないと卒業が出来ないから、ここに、構造として投稿論文が出るインセンティブが存在する。

実際のところ、(オックスフォードやアメリカの有力どころも専攻によってはそうらしいとは聞いたが)少なくともケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所物理学科では、博士論文の審査と、査読の学術論文は完全に別物・独立扱いである。

博士論文の審査も、私が知る限りの日本式の予定調和ではない。海外から来る業界では結構知られた研究者が、事前に私の博士論文を舐めるように読み、ラインマーカーを引きながら、付箋を張り付けて、口頭試問の準備していた。指導教官も会場に来てはいけない。

結構有名なジャーナルに査読を通った候補者が、博士審査の再審査(大幅直しかも?)になったというものを聞いたことがある。もちろん、落とされたというのもある。学術論文は共著なので、たとえ筆頭が該当の学生であっても、事実上他の人が書いたという例は多分にあり、そこの見極めは本人を口頭で審査しないと判断できないということだろう。

証明が出せない以上、信憑性の担保が難しいが、博士の審査員からも「あなたなら自信をもって推薦する。」とコメントをもらっている。表彰とかだと公開リンクが張れて便利であるが、リンクはない。

なお博士論文を元にした投稿論文何本かの原稿は、未だに指導教官が持っているはずだが、どうなるかは知らない。

ーーー込み入った話終わりーーー

 

さて少々脇道にそれたが「博士号はパスポート」の話の続きである。

上記のように筆頭で学術論文を出していない状態でも、世界の有名どころからポスドクのお誘いは何件かあった。

特に日本の論文数至上教の方々から見ると「そんなことあるわけないだろう!?」と疑われるだろうが、本当である。

諸外国の研究員や教員採用は、少し異なっている印象を受ける。応募要件に”Ph.D. in relevant fields from World Leading Universities”のような記述をちらほら見かける。「世界をリードする大学からの関連分野でのPh.D.」が重要な様子である。さて「World Leading Universities」どこを指すのかは正直分からない。

とある中国人によると「アメリカには大学が何個かあるが、イギリスには2,3個。」という表現をしていることを聞いたことがある。これを踏まえると、いわゆる世界ランキングのトップ20-30くらいまでを指すことが多い様子である。

海外のフェローシップなどの情報が日本ではあまり話題になっている印象はない。おそらく日本でポスドクというと、学振研究員などだろう。ここで仮に日本の大学がひとつもWorld Leading Universitiesに入っていないのであれば、日本では情報がほぼ出回らないのも無理もない。

さらに英語以外の言語で博士号を取得すると「文章は書けるようだけど、そもそもこの人コミュニケーション取れるの?」と思われる可能性もある、というのもある。

日本の就職活動における「学歴フィルター」に対応するものが、おそらく世界の博士号にもあるのが予想される。日本では、裏でこっそりやることが多いようだが、諸外国では露骨に書いてあることも多い。

なお、結局のところポスドクを経て大学教員を目指すのであれば、テニュア審査等で論文数が必要なことも多いので、長期的に見たら、少々不利なのは言うまでもない。

しかしそれでも、研究内容と実績以外にも、出身校や推薦状も非常に重要なファクターのようだ。そもそも、科学研究で最高峰とされるノーベル賞ですら、推薦状の質で決まる部分がある様子である。

よって「博士号はパスポート」なのだろう。どこの大学で取るかで行けるエリアが変わってくる。

後述するが、「学歴フィルター」的なものは、アカデミア外でも結構ある様子である。むしろそっちの方が強いかもしれない。世界中のヘッドハンターが連絡をする大学リストもおそらくあり、大体上記と同じ可能性がある。

例えば、これなんて露骨であった。内定者が考えるクオンツ・ヘッジファンドの就職対策

アカデミアとそれ以外でのPh.D.

大学教授を目指さないなんて勿体ない?

「博士を取ったのに大学の教員を目指さないなんて勿体ない」こういう声をよく聞く。

確かにグローバルのトップ校で教員をやるのであれば、なんだか楽しそうではある。しかしながら、ここの競争はなんだかおかしいことになっている。血がにじむレッドオーシャンどころではない。むしろ血でできた海みたいになっている。特に数学や物理は、天性の才能が必要であると身をもって実感した。ちょっとよくわからない例を紹介したい。

飛び級を繰り返し続けて10台で博士号を取得し、20歳ちょいで大学の教員。20代前半で30代の部下を持っていたりする様子。

ネイチャー・サイエンスを毎年のように連発し続けるポスドク。このポスドクさん、日本だともう教授になっていそうなもんである。しかし「オックスフォードかケンブリッジの教員がいい」らしいので、ポスドクをまだ続けているんだとか。

ケンブリッジの正規のフェロー(倍率数百倍と言われている)になったものの、研究が嫌になったのか、コンサルに転職した人。

若手が若手なら、教員も教員でなかなかにぶっ飛んでいる。

物理学と社会学の博士号を両方持ち、ケンブリッジ大学で、両方の学部で教授職を兼任している人。

物理出身で機械学習などで実績を上げて工学部の名前付きの教授職に就いているが、再生可能エネルギーの何か国語にも訳されるベストセラーを出版。イギリスの科学アドバイザーも兼任し、元アルティメットフリスビーのイギリス代表な人。(故人)

大学教授をやりながら、特許を連発し、数社会社を経営4,5分野で大御所、部下メンバーも100人近い人

もう圧巻である。少し変わった人が多いが、基本的には好性格な人格者が多数を占める。

ということで、博士論文程度で苦戦する凡人中の凡人の私は、そもそも続けようという気にもならないのは言うまでもない。

一方で、アカデミアでの研究を止め、他の分野に移った人も多様である。

ネイチャー・サイエンスを含め学生の間に10本近く論文を出した学生もいる。研究者志望なのかと思っていたが、実際のところ彼は「研究はもういいかな?」ということで、自国で「外資コンサル」をやっている。

研究よりも、その普及の方が大事だと思いサイエンスライターになった。等々。

奨学プログラムでさえも、博士号を取得して、その後ポスドクや教員などでアカデミアの研究を継続している人は、大体1‐2割。ほかは他の分野に移っている。

「世界の一流校でなら教員をやりたいけど、それ以外ならいいや。」という感じで、さらっとGAFAなどに就職というのも多い。

「ケンブリッジ大学のPh.D.を取って、GAFAとか銀行・コンサルだと普通過ぎてつまらない」と、一風変わったスタートアップへ行く等も。

そんなこんなで世間的な評価軸「〇〇をしたら〇〇をすべき(物理の博士号を取ったのだから、研究職を目指すべき)」的な論は、なかなかに通用しない。

こんなリプライもいただいたが、まさにそんな感じである。

 

なんというか、ケンブリッジ大学にいそうな人らしいキャリア選択(笑)

私の周りのオックスブリッジ卒業生も「人の評価」よりも「自分の価値観」がキャリア選択の最優先項目。

クオンツファンドとかまるで興味無いけど、これは一読の価値あり。 https://t.co/XspDZ1MnB3

— Hideki Yamamoto (@Amo846) January 31, 2019

 

ところで上記の就活記事がバズった関係でこんな動画が送られてきた。「宇宙飛行士・外科医・特殊部隊を経て町工場に就職しようとした際に起きたというコント」。

医師免許持った宇宙飛行士や軍出身の宇宙飛行士は、頭も身体も使うので確かに相性が良さそうなので色々いそうだ。とか思って検索してみたら確かに結構いた。…というのはどうでもよい。

一般的な評価軸で見たら「成功者のキャリア」に見えるものでも、当の本人からすれば「あ、違うなー。」って感じで他のことをやり始めたというのは、なかなかに頻発しそうな話だな、というのが正直なところである。

僭越ながら、私程度でも感じたし、もっとはるかに上のレベルの上記の方々でも感じていることなのだろう。

もし仮に大学に残ろうとする場合

一応書いておく。上記のように、血の海のようなグローバルトップ校の教員争いをしている。

私が日本人である以上、もし仮に万が一にも、大学教授を目指す場合、日本である可能性が高かった。そう考える場合、日本の現状はどうだろうか?日本では、18歳人口が一気に減る2018年問題を超え、さらに佳境に入っていく。研究費はさらに減っていく方向で、若年人口も減っていく。現状や将来に関する記事はいろいろ出てくる。詳細はいろいろあるリンク先を確認してほしい。

https://toyokeizai.net/articles/-/207306

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/01/post-9390.php

尊敬する先生方もいる一方で、実情として「『研究と教育をしているが実際のところは主に雑用係』のような状況になっている人もいる」という話を耳にすることもちらほら。

なぜ一部の大学院・研究室・ゼミは哀愁が漂い活気が無く空気が淀んでいるのか?

さらにパーマネントになっている場合はまだいいが、今から実績を積み、大学教員を目指すというのは、打算的に考えて厳しくないだろうか?

似たような話で海外大でPh.Dを取った人々が「たとえ東大でも、日本の大学はちょっと…。」というような話も時たま聞く話である。

もしどうしても関連のトピックの研究がやりたいのであれば、装置などの関係でも他に方法がないために、もちろんやればいいと思うが、個人的に私は遠慮しておく。

実績と時間・実力の関係

一応個人ブログなので、私個人についても書いておきたい。説明のために以下の図が必要である。

ちょっとざっくりとした考察だが、実績と時間と実力には以下のような関係があると考えている。

実績と時間・実力の関係のイメージ図

縦軸が成果で、横軸が時間。直線の傾きが実力。時間単位でいかに成果を出せるかが実力である。

黄色で表される体系が一回のプロセスに時間がかかるものにおける目に見える実力のばらつき。青色で表される体系が一回のプロセスが比較的早く終わるものにおける目に見える実力のばらつき。

黒の実線が「真の実力」によるパフォーマンス。長い時間かけるとこういう感じになるんじゃないの?という予想の直線。

黄色で表される体系の事柄において、仮に短い時間でうまく「当てる」ことが出来れば、グラフの破線のように大変大きい傾きが得られ、客観的に見れば、相当な実力者に見える。一方で長い時間取り組んでも、そんなにいい成果が出なかった場合には、右の点線のように、相当にしょぼく見える傾向になる。

一方、青色で表される体系の事柄については、時間もそこまでかからないが、大きく当たったり、思いっきり外れることが少なく、いってみれば実力相応に見えるような事柄である。

 

私が博士論文で取り組んでいた物性物理の合成研究は、バクチ要素が高く、この図の表現からすると、まさに黄色であらわされるような類の研究であった。実際最初の2年くらいでやっていたもののひとつは、ある程度の成果が出たものの、「再現性が取れない」ということで中止になった。要は2年くらい取り組んでいた研究に関しては事実上の「成果ゼロ」となった。これで卒業も伸びたのは言うまでもない。

 

一方でGoogleの20%ルールのように、Ph.D.に向けた研究以外についても、空き時間に真剣に取り組んでいた。そちらでは、結構実績が出来た。途中からは「もしかして研究の要領で真剣に考えて取り組めば、多分野で実績が出せる?」と勘違いしそうになるほどだった。少し紹介する。

研究自体が分かりにくいものであったため「分かりやすい発表とは何か?」を考え取り組んだところ、ネイティブスピーカーを抑えて最優秀賞を何度も受賞し、歴史的なレクチャーシアターで講演なども行えた。ダボス会議で登壇している方からも、コメントを求められるようになった。

執筆に関して、寄稿の依頼を受け、オンラインメディアや雑誌に記事を書いたり、バズったりなど、執筆でも実績が出てきた。このブログ自体も表彰されている。

途上国×テクノロジーの国際プロジェクトを立ち上げたところ、チャリティファンドから助成と表彰を受けた。スピンアウトの企業も誕生した。

その実地調査の際に撮った写真が、パンフレットなどに使われ、全英研究フォトコンテストで最優秀賞。

スポーツでは、ほぼ全員イギリス人の高身長の中、年間最優秀選手や、数百人が参加するインカレで大会得点王。文武両道賞をいくつも受賞した。日本代表選手としても出場している。

期待値・確率ゲームのゲームとして取り組んだポーカーでは、学内大会優勝、オンライン予選を突破し、全英大会出場。

等々である。他にも興味で調べていたものが、知らぬ間に業者よりも詳しくなっていたりなどいろいろである。よって、単一分野にこだわらず、いろんな分野で手数が踏めるのであれば、多種多様な実績が出せそうである、と正直感じた。

こんな中、仮にアカデミアの研究、特に物質合成などに固執するのであれば、上司に実質全人生を人質のように左右され、さらに研究対象自体を運に身を任せて生きていく必要がある。

このような状況では、「ただでさえ運の要素が強い人生の中で、さらに運の要素が強い研究をやる」ということは気がなくなってしまった。

最後まで相性のいい指導教官を引くという「指導教官ガチャ」と、研究テーマで当てるという「研究テーマガチャ」、世界情勢にも巻き込まれないいいタイミングで開始し終了するという「タイミングガチャ」を少ない試行回数で行うのは、結構レベルの高いコンプリートガチャなんじゃないだろうか?

上記のポーカーも「あ、向いてないな」と思い中止した。ゲームの性質上、運よく相手を飛ばす(チップを全部奪う)ことや、運悪く飛ばされること等に嫌気がさした。また、運悪く飛ばされてしまった人の気持ちを考えると、もうやるせなくなってきた。相手をまさに自分で、相手にとっては運が悪く飛ばしてしまった時は、「謝りに行った方がいいんじゃないか?」とすら思う程であった。特に相手の顔が見えていると尚更である。

ポーカーでは、状況によっては50%の確率だとわかっている場合、運の勝負に乗らなければならないこともある。これがもう本当に嫌であった。それくらいに運に身を任せるのを好まない。運が多い世の中であっても、出来る限りのコントロールをしたい。さらに、同じ分野の顔見知りや友人と生死をかけたポストを競り合うだなんてごめんである。

強いセーフティーネット・保険・Bプランの重要性

なお、上記のように諸外国の特に採用ターゲットとなっている大学のPh.D.で、他の分野に移る人が多いのは、世界中のリクルーター・ヘッドハンターからお誘いがひっきりなしに来るからという側面も無視できない。この関係でSTEM PhDが有意に外資銀行・外資コンサル・外資ITに就職している印象である。なぜ理系で外資銀行・コンサル・ITへ就職するのか?

学内でもリクルーティングイベントはいくらでも行われており、直接メールが来たりもしていた。実際に私もこういったリクルーティングイベントで、招待でタダでヨーロッパへ海外旅行に行ったりもした。

 

このような状況で、脇目を振らずアカデミアの研究だけに行くのは、

世界中の好性格美人からひっきりなしに言い寄られてもなお、振り向いてくれるかどうかも分からない幼馴染がいい

という状況に見えなくもない。最も、ある人にとってはどうしても幼馴染がいい、ということもあるだろう。

実際に元同僚がポスドクが大変そうという話になった際には「まあ彼が選んだ道だからね。俺はいいや。」といっているPh.D.持ちの話もよく聞く。

キャリアの長期化が進む中では、他の選択肢、オプションやBプランが多い方が強いという話は、こういう本にも書いてある。

また、いい保険を掛けるほうが、起業などもうまく行きやすいという話もある。

運が重要な業界での冒険には良い滑り止め・セーフティネット設置のすすめ

日本でも、一部の大学の一部の専攻、一部のゼミや研究室ではそうなってきている様子ではあるが「研究には興味あったけど、厳しそうだから、よく勧誘が来るから、GAFAとか銀行・コンサルでもいいかな。」というオプション・保険があるのは、精神的にも良いんではないだろうか?特にバクチ要素が強い研究ならなおさらである。

もちろん「博士をどこでとるかは関係ない。指導教官と、論文の質が重要」という話はよく聞く。おそらくこれは「アカデミアだけに限った話」なのではないだろうか?

上記のようなアカデミアでの研究以外のオプションやうまくいかなかった場合を考えると、どこでとるかは関係あるのではないでしょうか?やっぱり「博士号はパスポート」だと思いますよ。

なぜ理系で外資銀行・コンサル・ITへ就職するのか?

 

 

日本の博士の就職も、諸外国ほどではないものの、日本でも徐々に変わってきてはいる。

求人の場合は、全体傾向よりも、分野や出身大学・研究室で大きく依存する。さらに案件によって様々で、個々の案件は日々変わっているので、とりあえず登録をしてメルマガを眺めるなどで、個別案件を見てみるのも有効であると考えている。

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文系博士は?

上記は理工系だけで、文系は厳しいんでは?という話も上がりそうだが、少なくとも、文学・政治学・経済学・心理学で、似たようなところ、IT・銀行・コンサルなどで働いている人を何にも知っている。所謂文系の方が、アカデミア以外でも国連やOECDやUNHCRなどの国際機関に移る人が多い印象もある。

終わりに

特に今後世界がどこへ向かうかよくわからない状態では、多くのオプションを確保したほうがいいと個人的には考えている。免許証や身分証明書としての博士号の場合は、どこの大学でも関係はないのかもしれない。しかしながら、それ以外の付加価値も考えるなら、出身大学も考えた方がよさそうである。「博士号はパスポート」の側面を持っていると思いますので。

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ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所においてウィントン特待生として物理学のPh.D.を取得後、国内外のサイバーセキュリティやマネーロンダリング対策を主とした外資コンサルに従事。現在外資系IT企業の研究職として人工知能/基盤モデル関係の研究を行う。

国際コーフボール連盟IKF委員、日本コーフボール協会理事。

200万アクセス突破。直近の目標は書籍化と出版。

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「このサイトの掲載内容は私自身の見解であり、必ずしも所属団体の立場、戦略、意見を代表するものではありません。」

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