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公開日:2018年9月28日
更新日:2019年7月15日
「天はスポーツの上にスポーツを創らず、スポーツの下にスポーツを創らず」と云へり。とは以前もどこかへ書いた。今回はゆるいスポーツ、ゆるスポーツとその中のスポーツ「ハンぎょボール」を紹介したい。
ゆるスポーツ
従来スポーツは、オリンピックやパラリンピック、ワールドカップのような勝ち負けの決着をつけるものが主でした。
しかしながら、昨今ではスポーツや運動の持つ健康への向上への効果や広く一般にスポーツをすることが推奨されてきています。
そんな中、「スポーツ弱者を世界からなくす」というビジョンで活動されている「世界ゆるスポーツ協会」。
ゆるスポーツ。それは、年齢・性別・運動神経に関わらず、だれもが楽しめる新スポーツ。
超高齢社会でスポーツ弱者が多い日本だからこそ生み出せるみんなのスポーツ。
勝ったらうれしい、負けても楽しい。多様な楽しみ方が用意されているスポーツ。
足が遅くてもいい。背が低くてもいい。障がいがあっても大丈夫。
あなたのスポーツが、必ず見つかります。
世界ゆるスポーツ協会は、ゆるスポーツを創るスポーツクリエイター集団です。https://yurusports.com/about
そのゆるスポーツのひとつに最近開発された「ハンぎょボール」があります。一般初公開のイベントに参加してきました。本記事では、その模様をご紹介いたします。
ハンぎょボールとは?
ハンドボールが強く、かつ、出世魚「ブリ」が名産の富山県の氷見市との共同で開発されたハンドボールの派生ゆるスポーツ。
ハンドボールのルールに加え:
1.ブリを脇に挟んだ側の手を必ず使ってボールを投げる(守備、ドリブルは逆の手でも可)。ゴールキーパーは両脇にウキを挟む。
2.試合時間は前後半7分ハーフ。休憩は3分間。
3.ゴールを決めると脇に抱えたブリが「出世(巨大化)」する(コズクラ→フクラギ→ガンド→ブリ) 。ゴールをした時は味方チーム全員で「出世」とコールする。
4.反則(別記)をすると「冷蔵庫」へ送られ、相手がゴールを決めると全員復帰できる。
5.試合終了後、保持している魚に割り振られている得点の計算を行い、チーム内の合計点を競う。【得点表】
コズクラ…1pt、フクラギ…4pt、ガンド…6pt、ブリ…7pt【鰤起こしタイム】
鰤起こしタイム中に得点すると「特進」(2段階出世)できる。《反則》
プレーをとめない
スレ(キズモノの漁師言葉)…フィールドプレーヤーがブリを落とした場合、冷蔵庫送り(自主的、もしくは副審の誘導に従う)。プレーは継続される。プレーをとめる
だらぶつ(ばか)…ブリを持っていない手でボールを投げた時。審判宣告後、相手チームは全員で「だらぶつ!」とコールする。
おがける(壊れる)…守備側、攻撃側の故意のボディコンタクト。
しょわしない(せわしない)…オーバーステップ
はよせーま(はやくしろ)…ボールを持って3秒より長く動かなかった場合
けっとばす(ける)…キックボール(故意で行った場合、反則と判断)
おーど(大雑把)…ラインクロス。
スレ(キズモノの漁師言葉)…キーパーがシュートを防ぐ際にウキを落とした場合、相手チームのペナルティスロー 。
※キーパーのスレは冷蔵庫には送られない。https://yurusports.com/sports/gotouchi/hangyoball
会場
会場は、浅草駅から徒歩10分ほどの、「浅草ROX3G」の屋上フットサルコート。参加者は約30人。30人の中には、元オリンピック選手や日本代表、現役の力士など、相当に変わったグループ。2時間のパッケージコース。2000円。ファシリテーターはハンドボール元日本代表の東俊介さん。彼が笑いを取りながら進行していく。
ハンぎょボール自体が、ハンドボールを基に開発されたスポーツであるため、ハンぎょボールをプレイするためには、元となったハンドボールを理解しないことにははじまらない!ということで、全員で、ハンドボールの理解を深めるために、ハンドボールのパスやシュートの基本を練習。元日本代表キャプテン本人による直々指導のハンドボールの説明セッション。
ハンぎょボール体験
さて待ちに待った本題のハンぎょボール。上記のように基本的には、ハンドボールと同じ。装備は、フィールドプレイヤーは、ブリのぬいぐるみを1匹、利き腕の脇に挟む。キーパーは、「浮き」を両脇に挟む。
フットサルコートに、魚のぬいぐるみが種類の名前と並べて順序良く並べられている。なんだこれは。築地市場か。二度見必至である。
それ以外はハンドボールと同じ。しかし、ブリを落としてはいけない。またボールを投げるときは、シュート・パスを含め、ブリを挟んでいる方の手で投げないといけない。これらはそれぞれ、富山弁で「スレ(きずもの)、だらぶつ(ばか)」という意味の反則。反則をすると反則エリア「冷蔵庫」に送られる。要するに出場停止である。
ちょっと球技をやったことがある人は、想像してみてほしい。ボールを投げるのに、ボールを投げる脇にぬいぐるみを挟んでいて、そのぬいぐるみを落としてはいけない。肘使えない。厳しくない?
また球技経験者としては、手が空いている方の手でついボールを投げてしまう。特にドリブルの後のパスなんて、そのまま投げるのが自然だろう。ドリブルはぶりを抱えていない手でできるため、ついそのままブリを持っていない投げてしまった。なんとも「だらぶつ」である。これは私だけでなく他のスポーツ経験者の参加者もことごとく引っかかっていた。
そのせいでフィールドから、球技なのに球技経験が長そうな人がコートから消えるという珍状況になることもあった。
キーパーは「浮き」のせいで、両手が使えない。もうキーパーは顔で止めに行けと言っているようなもんである。
「そんなルールだと、盛り上がらないんじゃないの?下手したら冷めそう。」という疑問も出そうだが、そんなのは心配は全くもって無用であった。むしろ今までに見たことがない光景と、斬新なルールで思わず笑ってしまう不思議な環境が出来上がっていた。
この中でもいかにして勝ちにいくか?を工夫して、普段の競技スポーツでは見られないような光景が散見された。
参加者のフリーアナウンサー脇田達司さんのハンぎょボール体験の記事に動画が挙げられていたので拝借させていただいた。
写真に写っていたが、私もスライディングで止めに行ったりと、つい真剣に頑張ってしまった。(ゴールエリアライン内に入っているので、私も反則なのだが、許していただきたい)
最後は参加者全員でハイタッチし、集合写真。なんともインスタ映えしそうなリア充な環境であった。フットサルコートにブリのぬいぐるみがセリのように並んでいたり、大漁旗が掲げられていたりと、まず見たことない光景で、前後のフットサルのグループが物珍しそうな目で見ていた。
その後有志で打ち上げがあったのだが、会場はこのフットサルコートの隣の磯丸水産であった。ブリを食べたのは言うまでもない。
ちょっとした分析
私の個人ブログであることと、描写はしたものの、分析をせずに書きっぱなしするのはよくない考えのもと少しばかり考察をします。
裏の目的の重要性
一時間ハンドボールをやれば、まあ汗かきます。ハンドボールは走ったり飛んだり、全力でボールを投げたりと結構激しい競技です。基本練習も結構ハードな部類に入るスポーツで、実際に「全然ゆるくない!」という声が散見された。
しかし、このイベントの裏の目的として、ハンドボールの認知度を向上し普及させることと、汗をかくほどの運動をすること、があるようだった。その目的は十分に達成されているように感じられた。
また地域おこしの側面も抱えている。このスポーツで、富山県氷見市の知名度も爆上がりであることは間違いないだろう。
さらに終わってからは(日本ではお決まりの)名刺交換をしていた。こういうのも含めると一石何鳥なんだろうか?
アナログの必要性
今回のセッションでは、随所に人と触接肌が触れる、目を合わせて話すといったアナログなコミュニケーションをする場面が多くあった。ハイタッチもそうだし、チーム名をつける点もそう。そもそもチームスポーツは話さないと始まらない部分がかなり多い。
うつ病患者を田舎の農家へ送り込み、畑仕事をさせたらうつ病が治ったという例にもあるように、人間は生物である以上、アナログな活動は必要である。デジタル化とインターネットの発展により、人と直接顔を合わせて話す機会が減ってきている中で、こういった生物としての人間が、汗をかきながら、他の個体とコミュニケーションをとる必要性は今後は上がっていくことだろう。
マーケティングとファシリテーション能力の重要性
協賛として広告代理店が関連していることからも、プロモーションビデオなど、非常に見せるのが上手い。
今回はハンぎょボールとハンドボールについて取り組んだわけではあるが、要は「楽しければよい、(出来れば、ちょっと変わったことで、話題になりそうで、運動をする)」という目的に対しては、何をやるかよりも、司会進行・ファシリテーション能力がすべてといっても過言ではない。その部分をうまくやることが出来れば、他のスポーツや、いやスポーツでなくとも、より多くのことを普及させていくことができるのだろう。こういった見方が多くの分野で必要である事実に目を向けなければいけないと、切に感じる今日この頃である。