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公開日:2022年6月7日
更新日:2022年6月8日
最近とある事情で真剣に「一般教養」を学んでいた。
特に人文・社会系分野を幅広く体系的に、詰め込むように学ぶ機会は、大学卒業後以降で初となった。
この過程で「教養なんて意味ない」という意見が出がちな世の中で、そもそも「一般教養とは何か?」「一般教養を身に付けることによって何が得られるのか?」について真剣に考えることとなった。
本投稿では、それらをまとめておきたい。
以前ハフポストにも「古典と教養」で記事を寄稿したことがあるが、合わせて閲覧いただければ幸いである。古典読書の具体的な効用
一般教養とは?
まず、「一般教養」の辞書的な意味は以下のようになっている。
職業的専門的知識技能に対し,広く人間として共通にもつべき教養。ギリシア時代の自由教育を原型とするヨーロッパにおける伝統的な概念で,時代により,その時代の特徴を反映したいろいろな様態を示したが,人間の普遍的,全体的,調和的完成を目指す点では一貫していた。元来,教養の主体は知識階級に限られ,したがって内容的に高い知性を必要とし,貴族的性格は否めなかったが,J.ペスタロッチや F.フレーベルらはこの高踏性を排し,一般大衆の人間性の開発のための基礎陶冶として,知性のみならず情操,労作を含めた新しい教養を主張した。すべての人間が法的に平等を保障され,かつなんらかの職業につくことを要求される現代では,専門知識との関係において,一般教養はさらに新たな展開をとげることを求められている。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
特定の職業や専門の枠を超えて、広く人間として、また社会人としてもつべき知識や技能をさす。生活に直接役だてているという即時的なものではなく、精神を深め豊かにすることを目的とし、人生をより意義深くする観点から主張された。古代ギリシアの自由人がもつべきとされたエンキュクリオス・パイデイアε’γκκλιος παιδεαつまり一般的教養ないし一般的教育に起源をもつ、ヨーロッパにおける伝統的な人間教養の理想となっている概念である。ルネサンス期の人文主義および18世紀の新人文主義にその思想が復活、発展した。現代では、科学技術の発展によって人文と科学との関係および知識の専門化の点から、一般教養の意義が現代的展開を遂げるよう迫られている。
日本大百科全書(ニッポニカ)「一般教養」
専門的知識や職業的技能と異なり,人間として持つべき基本的教養のこと。古代ギリシア・ローマで自由市民層が持つべき教養として自由学芸が成立し,それが近代の人文主義的伝統に受け継がれて定着した。制度的には,西欧中世後期に大学が成立したときに,基礎的学部として学芸学部が構成され,その理念がその後アメリカに影響を与えて大学の一般教育となった。日本の大学でも,第2次大戦後に専門教育の前段階としての一般教育がおこなわれたが,近年は専門教育と一般教育の区別を廃止する傾向にある。
百科事典マイペディア「一般教養」
一言でいうと「人間として持つべき基本的な知識や技能」ということになりそうである。
逆に言えば、一般教養で不合格になると「人間として持つべき基本的な知識や技能」が備わっていない、人間未満(最近流行った人権がない)みたいに見えないこともないが、果たして。
一般教養試験
この一般教養の程度をはかるものが一般教養試験である。「一般教養試験」と一言で言っても、いろいろな一般教養のレベルがある。おそらくこの「一般教養」が客観的な形で定量的に問われるのは、就職活動の筆記試験や資格試験のことが多い。それらについてみていくと、主に以下のものがヒットする。
公務員試験
公務員試験の一般教養試験である。試験の出題傾向は総合職・一般職・地方上級などいろいろな区分で出題レベルと傾向が異なる様子である。
範囲はいずれの場合も相当に広く、高校までの選択科目を全範囲のような雰囲気を感じる。
一般教養試験の一部には、文章を読んで答える、計算をする、図形を類推する、みたいなものまである。
教養試験とは、公務員試験の一次試験として実施される筆記試験です。教養試験は、通常、5肢択一などの択一式試験で実施され、マークシート方式で解答します。
教養試験で問われるのは、公務員として職務を遂行するために必要な知識(=一般知識)と、職務を遂行するために必要な処理能力や理解力(=一般知能)です。
一般知識分野 社会科学 政治、経済、法律など
人文科学 日本史、世界史、地理、文学など
自然科学 数学、物理、化学、生物など
一般知能分野 数的処理 数的推理、判断推理、資料解釈、図形問題など
文章理解 現代文、英文、古文、漢文など
司法試験予備試験
司法試験の予備試験短答試験に、「一般教養」という問題がある。これが激難問と言われて有名である。検索すると「捨てるべき?」等と表示された。
予備試験では,短答式試験において,一般教養科目が出題されます。
一般教養科目は,短答式試験では他の法律科目より配点割合が高くなっています。ただ,一般教養といいつつも,問題は非常に難しいものが多く,出題が人文科学,社会科学,自然科学,英語と非常に広範囲に及びます。
また , 予備試験合格後に控える司法試験では試験科目になっていないのも,予備試験の受験生にとっては悩みの種です。
そこで本ページでは,一般教養科目の中にも得点しやすい問題があることを中心に,短答式試験における一般教養科目の対策について説明していきます。
有人が受験していたために問題を見せてもらった。個人的には数学や理科に該当する部分はまあまあ分かったが、英語に至っては選択肢に出てくる単語ですら意味が分からないものが散見され「これが教養なのか・・・?」と思ってしまったほどであった。以前はGRE等も対策して難問奇問っぽい単語も覚えたりしていたが、それでも出来るかは不明であった。いずれにせよ広範囲にかなり高度な知識を要求されている印象であった。
別記事にまとめたいが、「日本社会における筆記試験の格式や重要性」はこの辺りに現れている印象である。
就職筆記試験
就職試験でも一般教養試験が課されることがある。就職試験における筆記試験の出来は企業によって基準が異なる。人気企業の方が基準点が高い様子である。
就活の選考では、「一般常識」が筆記試験で出題されたり、面接の際に問われたりします。しかし常識とされる範囲は幅が広く、「志望動機」などに比べると想定質問を絞ることが難しいため、いったいどんなことが問われるのか、不安を感じる人もいるのではないでしょうか。
どんなジャンルの一般常識の問題が出題されたのか、人事担当者へのアンケート結果を見てみましょう。最も多いのは時事問題(69.5%)でしたが、国語に関する問題(54.7%)、算数に関する問題(50.6%)もそれぞれ半数以上の回答がありました。
学んだ科目
学んだ科目国家公務員大卒程度レベルとのことであったので、過去問を確認し学んだ科目は、以下であった。レベルは高校卒業程度まで。大学共通テストレベルという方が分かりやすいかもしれない。
国語(古文漢文など)
数学
物理
化学
生物
地学
日本史
世界史
地理
政治
経済
倫理
その他 美術・文芸・宗教・時事など
要するに高校課程までの全分野である。通常の高校では科目は学校やコースごとの選択式になっているが、今回は幅広く全分野を学んだ。
一般教養の効果
「一般教養なんて学んでも何にもならないじゃん。結局は試験勉強なだけでしょ?」というのはよく言われることであるが、一般教養を身に付ける効果とは何だろうか?曲がりなりにも上記を学んだ一般教養この効果を考えていきたい。
世界がつながって見える
一般教養を身に付けることで、世界がつながって見えるようになる実感がある。「無関係」というのはなかなかなく、「経費の関係性や妥当性」
上記総合的な知識を基にした例を挙げたい。
例:地球の歴史
宇宙は約138億年前のビッグバンによって生まれ、地球は46億年前に誕生した。地球の発展は物質間の化学反応や物理的な動きで説明が出来る。地球の歴史を分析するために使われる示準化石の発展からも、生物の進化や放射性同位体の半減期が利用されている。
地球上の大陸がほぼほぼ現在の位置関係になっていた後、人間の四大文明の発展は、ほぼ同緯度の川の近くで発展した。これにより生物としての人間が暮らしやすい環境はこの辺りであったことが予想される。地学の上に地理学が成り立っている。
人間の文明が発展してくると、人々の争いや交流の出来事の積み重ねが出来上がる。これを歴史という。各国の歴史とそのうちのひとつである日本の歴史は関係している。人間の様々な考えが出て来る。色々あり国という形に組織されるが、国家を形作る。民主主義の取り決めが必要となる。それらを法律。お金のやり取りも発展し、経世済民も発展する。
・・・ぱっと考えるだけでも上記の科目はお互いに密接に関係していることが見受けられる。一つ一つを詳細に学ぶことで、これらの関係がより粒度が細かく理解できるようになる。
さらに「時事」というのは上記の全ての上に乗っかっている最先端の情報ということになる。これらを幅広く抑えることで時事や今後の未来についても理解が深まるであろう。
自身の置かれている状況が認識できる
自分のおかえている状況もなんとなく理解することが出来る。
聖徳太子による日本初の憲法の「十七条の憲法」の第一項は以下である。
「和を以て貴しとなす」
日本国国家「君が代」の歌詞は以下である。
『君が代は 千代に八千代に さざれ石の巌と なりて こけのむすまで 』現代語訳から、「男性と女性が共に支えているこの世は 千年も 幾千年もの間 小さな砂がさざれ石のように やがて大きな盤石となって 苔が生じるほど長い間栄えていきますように 』日本の国歌「君が代」は、外国の国歌とは、まるで、違います。気づいていますか。
日本国に関係する事柄の随所に協調性の話が出てくる。
日本の政治体制では、冠位十二階に始まり、院政、外様大名や譜代大名など、随所に出てくる序列や権力構造が現代の日本社会に根強くあることが分かる。元寇や黒船に代表される外国からの圧力にやたら敏感な辺りもやはり日本という感じがする。
日本人はどこまで行っても日本人なのだな、と再確認することとなった。
またどこまで行っても歴史上の超人は相当な方が多いので、日々精進せねばという気になれる。
日々の物事からいろんなことが見えてきて楽しい
最後に、教養の本来の意味である「精神を深め豊かにする」点について触れておきたい。
最近「レ・ミゼラブル」を見た。映画で公開された2012年ぶりなので10年ぶりである。
2012年当時はパリにもいったことがなく、世界史も大して詳しくなかったが、10年後の今回までにはフランスには何回も行き、世界史もある程度学び、フランスの哲学などもいくらか読んでから、今回改めて見ることになった。
以前「レ・ミゼラブル、フランス革命の話?」くらいの感じであった。
今回「あー、フランスで1815年より後ということは、フランス革命によって王政が崩れて共和制になった後、再度帝政に戻った位の時期だ。ナポレオンも島に流されている。一度自由を勝ち取ったものの、再度帝政になってしまったんだとしたら、国民の反発も強いのもよくわかる。ルイジアナ州もアメリカに売却しているし、国自体が戦争でお金もないので、市民の反乱は大きくなったはずだ。食うのに困っている人が多い中、で贅沢な服装で舞踏会していたらそりゃ反乱するよね。
ガブローシュのモデルの少年のドラクロワの絵、ルーブル美術館で本物見たな・・・作者のユゴーも当然これを見ているはずだな!
パリのノートルダム大聖堂も中に入ったな・・・!
舞踏会も(イギリスのだけど)確かにあんな感じだったな・・・!
https://ja.wikipedia.org/wiki/民衆を導く自由の女神
(改めてこの絵を見るとジャンバルジャンも写っているように見える・・・?)
レミゼな絵 ドラクロワ「民衆を導く自由の女神」を徹底解説!謎の暗号事件?
(ついでにプレゼンの上達のために舞台表現やミュージカルについて色々調べていたことや、自分でフィクションの話を書くために構成について調べていたために) こうやって対比のために、行動がわざと逆になってたり、同じ旋律を別のところに混ぜたりしてるのか。」
こういう予備知識や経験があった上で見てみると、いろんな描写の意味や意図まで良く分かった。
映画一本見るのですらも、こういう感じの差があった。日々色々見えるものが変わって、充実度が大きく変わってくるのだろう。
社会人との関係
ところで、社会人とは何だろうか?日本における社会人経験については、以下の記事に以前まとめた。
社会人経験(シャカイジンケイケン)とは何か?定義・多角的な比較と考察
私は、高校生・大学生の時には、一般教養の内容を事を学んでも、あくまでもテスト対策のものという感じであまり実感がなかった。理系科目はともかく、選挙制度や税金、それに付随する歴史などはあまり実感を持つことがなかった。
しかし、一旦働き始め、税金を納めたり、選挙で投票したり、団体を運営してみたりをすると、いろいろと見えてくることがあった。
株や外貨を持てば、円安や円高などの為替の概念、複利の概念などもすんなりと理解が出来た。高校までの教科書に書いてあったことが「あ、そういうことだったのか」とピンとくることも非常に増えた。
ここで、改めて社会人の経験を考えると以下のようにならないだろうか?
「一般教養について筆記試験や教科書で学んだことを実際の生活と関連させ応用し、実生活に生かすことが出来る人物」
当てはまらないだろうか?
見方によってはだいぶハードルが高いかもしれない。
終わりに
以上、一般教養を身に付ける効果について個人的な経験をもとにまとめた。
最後に上記の想定質問に対する、ある程度教養のある返答はこんな感じだろうか。
「一般教養なんて学んでも何にもならないじゃん。結局は試験勉強なだけでしょ?」
「そういう考えもあるかもしれませんが、私は個人的には教養を学ぶことには意味があると思いますよ。」
ご参考いただければ幸いである。