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公開日:2018年10月29日
更新日:2019年7月15日
物理学など学術分野における3分アウトリーチトークを通して、分野外に適切に説明が伝わる「分かりやすい説明は何か?」ということで、以下のようにまとめた。
これは、「込み入った分かりづらい専門分野を他の分野の人に対して説明する一般的な方法論」とも言える。
そうであれば、やり込むほどに、高度な概念が出てくるスポーツにおいても十分に使えるだろう。そこで私が普段使っている説明を紹介したい。題材は例によってコーフボールです。
コーフボールの一般的な説明
コーフボールの一般的な一言での説明は、
オランダ発祥の男女混合のドリブルが出来ないバスケットボール
と言っている。大体的を射ているだろう。
これに際し、実際にやってみると、いろいろな疑問が出てくる。立ち位置はどうであるとか、雰囲気どんな感じであるとか。部活などで他のスポーツをやっている人が多いので、相手によって、説明を変えるようにしている。
オフェンスディフェンスコートが分かれているので、ファーストブレイク・速攻はない。
諸説あるが、コーフボールはバスケットボール以上にポジションを決めない方がよい。全員がすべての役割をできるのが理想である。
バスケットボール
なんだかんだゴールにボールをシュートする競技なので、バスケットボールが概念に一番近い。
バスケットボールには、ポイントガードからセンターまでのポジションが流動的であるが決まっている。インサイドとアウトサイドなどもよく使う単語である。
「コーフボールは、全員がポストアップをするシューティングガードなイメージ。インサイドとアウトサイドのパス交換で攻めるイメージ。」
「スクリーンもダメ。押してもダメ。相手の保持しているボールを奪うのもダメ。」
この表現が、納得していただけることが多い。
ネットボール
そもそもネットボール自体があまり日本ではまだ知られていない関係で説明することはなかなかないが、コモンウェルスと呼ばれる、イギリスの元植民地国では、特に女子ではトップ3に入るくらいの人気を誇る。
「オフェンスとディフェンスが分かれているだけで、入れるエリアは分かれていないイメージ。3フィートルールもない。」
ハンドボール
ハンドボールも、手でボールを投げて得点を競うという意味では、近いものが多い。
ハンドボールでは大体このように説明している。
「コーフボールでは、全員がポストアップするフローター。適宜中に入ってパスを回す。でもファウルで止めてはいけない。」
サッカー・フットサル
サッカー・フットサルは、足でやるが、フィールドに両チーム混ざり合って競い合うという意味では、コーフボールと概念として似ている部分がある。
サッカー・フットサルの人たちには、こういう感じだろうか?
「全員攻撃的ミッドフィルダー。お互いに指示出しあうし、チャンスがあれば自分でも行く。パス交換も重要。」
上記は、フィールド型で両チームが混ざり合い、さらにゴールを決めるものであった。それ以上にスポーツはいろいろある。
ボールを持っていない状態での立ち位置、いわゆるオフ・ザ・ボールの概念やフロアバランスの概念は、想像以上に感覚でやっているということがよくわかった。「自然と」距離取ったりしているが、この自然とそうするという概念は他にはなく、難しいもののようだ。
ただそれでも、どうにか説明をしていく必要がある。
バレーボール
バレーボールをはじめとした、ネット型で相手とコートが分かれているスポーツは、どの位置に行くかを説明するのが、少し難しくなる。
バレーボールでは、床にボールが落ちないようにすることが最重要なので、そのような位置に身体が動こうとするのだろう。
どの辺に立てばいいか?っていうのはどうやって見極めてます?という話があった。
「バックアタックラインって、どの辺りか感覚的に、わかりません?きわどいなって思う場合以外、いちいち足元見ないですよね?仮に見方が、踏み越えていたら、あれ?って感覚的に思いますよね?ゴールの位置と立ち位置もそんな感じで、なんとなく感覚でわかってくるイメージです。」
こう説明したら、なんとなく、わかっていただけたようであった。
ラグビー
ラグビー経験者へもまた、説明が難しい。ラグビーは、オフサイドがあるので、ボールも投げ方も特殊である。結構激しいぶつかり合いもあり自然と肩を入れてくる。
「ボールを味方にパスするとき、どこにいたら、ディフェンスにボールを取られないで、かつ、いい具合にラインを突破できる、ちょうどいい立ち位置ってありますよね?上手くやればアウトナンバー作れますよね?それって、ディフェンスの立ち位置と、味方の位置を総合的に、半ば無意識で判断してません?コーフボールだと、オフサイドないんで、ゴールに入れるいい位置に立つ必要があって、それが今やっているイメージです。」
こういう形で説明をすると、なんとなくわかっていただけている印象である。
アルティメット
フリスビーでやるラグビーともいわれるアルティメット。ラグビーよりも、歩数制限があるのでコーフボールに近い。
「アルティメットも、ディフェンスの立ち位置に応じて、ニアサイドとファーサイド使い分けるじゃないですか。コーフボールでもニアのパスとオーバーパスがそれに対応しているイメージ。ただしディスクと違って浮かせられないので、精度が結構制限されますね。」
ただし、もともと、アルティメット自体が、ほかのスポーツの経験者が多いので、スムーズにいっている気がする。
以上は、チーム球技。これ以上はもう、特性が違いすぎて説明に苦戦している、がどうにか説明したのがこんな感じ。
テニス・バドミントン
テニスやバドミントンも、ラケットという「特殊な道具」を使って、行う競技であって、味方間のパスはない。
「テニスも、相手の動きで、次にどの辺に飛んでくるかって、予想つかない?むしろそれで自然とやってません?味方のパスの関係とディフェンスとの位置関係もそれに近くて、大体どの辺にいたら、次にどういうことが起きるかってわかりません?で、ラケットは持っていないから、手でキャッチするには、ラケット分差し引く必要がありますね。」
野球
日本での競技人口は多いものの、野球自体が、専門性特化のようなスポーツなので、結構説明が大変。ただそれでも、どうにか説明できそうなことはあるだろう。
「キャッチしたら、どうするとか、いろいろ型あるじゃないですか。コーフボールも、この状態の時は、こうした方がいいんじゃない?っていう不問律みたいなのがどんどん出てきます。こういう時はこう、こういう時はこう、っていうのが毎回ある感じ。キャッチングとかバッティングとかも細かいこといろいろありますよね?」
「あと、どちらかというと、肩の力抜いてください。適宜ボールが来た時に、対応する感じですね。力入ってると、身体固くなっちゃうので。全力投球するシーンはなかなか無いです。」
ただ、もうこれは、スポーツの説明ではなく、戦術論一般な気がする。
球技未経験者
もうこれは、スポーツの説明だと思わない方がいい。本質的に言って、何かを突き詰めていったことがある人には、多少は納得がいく説明ができるのではないか?というのが現状の結論です。
例:研究畑の人向け
「何事にも、分野の常識やセオリーってありません?分野で共有されている方法論。あれと同じ感じで、コーフボールでも、まずはこういう方向から行って、次はこうして、っというのがあります。もちろんわかったうえで、状況に応じて崩したりしていくのは、大ありです。ただ、最初慣れるまでは、こういう方がいいかなっていうイメージですね。それに応じて、立ち位置やポジショニングを含め、戦術が変わってきます。」
例:音楽をやっていた人
「音楽だと、例えば、和性(ハーモニー)とかに必ず理論体系ってあるじゃないですか。あれと同じ感じで、基本はこうやって、次はこうやって。ってやっていく感じです。自然とやってたけど、改めて理論の教科書見ると「あ、ほんとだ。」ってなるやつ。あんな感じです。この感じでコーフボールを説明すると、リバウンドの立ち位置はああなるんです。ちょっと直観に反するんですけど、確かにあの方がいいんですよ。」
ここでいう専門はもう受験勉強でも何でもいい。本気で突き詰めたことがあればわかる感覚だと思います。これが本当に何もないと、ちょっと難しいが・・・。いわゆるT字型人材っていうやつの重要性だと思います。
求む、オフ・ザ・ボールの概念の分かりやすい説明
さて、ここまで来て、コーフボールのみならず、ボールスポーツの説明において、一定のセオリーとなる型があること等は常識としてわかる。
しかし、フィールド型のボールスポーツ固有の、オフ・ザ・ボールやフロアバランスの概念は、どう説明すればいいのかが、よくわからない。
自分でも、他の選手とと話していても「さっきのは、あれ裏じゃない?」「うんうん。まさに裏パスの方がよかった。」と話してはいるが、何故だかを正確に説明するのは、本当に難しい。
何故私がそう考えるのかを、客観的に考えたところ、「味方のオフェンスの立ち位置と、それに対応したディフェンスの立ち位置から予想される次の展開として、どうなるを考えたところ、一定のプレイの方が良いという方法論が、共有されている」ということになった。
それにしてもこの感覚を説明するのは、相当に難しい。分かりやすい説明方法が思いついたら、また別途書きたいと思います。