目次
公開日:2021年8月7日
更新日:2021年8月7日
東京オリンピックが開催された。オリンピックの実施競技・実施種目であることはどれくらいの効果があるのだろうか?この辺りについて、特に
スポーツ競技の国際連盟とのかかわり
スポーツの日本協会の理事や監事の経験
スポーツ日本代表選手の経験
物理学PhD・コンサルの論理的思考
などの多角的視点から考えていきたい。
尚分かりやすいように、上場企業・非上場企業・新規上場企業・上場廃止企業を扱うことにする。
世界のスポーツ数
世界にはかなりの数のスポーツがある。日本でも「ぽこぺん」や「缶蹴り」「かげふみ」みたいなのもいってみればスポーツである。世界には無数のスポーツがある。その中でも特に多くの国に各国協会National Federation(NF)があり、国際連盟(International Federation)があり、IOCが承認しているIOC承認競技(競技として認めている競技)でもかなりの数にのぼる。次がIOC承認競技の一覧である。
https://www.joc.or.jp/olympic/federations/index.html
IOCの承認競技というものは、言ってみれば、競技として承認が下りた上場企業のようなものである。
一部アメリカンフットボールやクリケット等、IOCが承認していないものの、一部の国では人口も経済規模も大きいスポーツもある。こちらは既に興行として成り立っている。いわば非上場ではあるが有力な大企業(例えば サントリー)のようなものである。
オリンピック実施種目≒一部上場企業
ここで、オリンピックの実施企業は、企業で言えば一部上場企業相当といっても良さそうである。多くの利権も関わってくる。
助成金やサポートやメディアの持ち上げ等メリットがある。今回のコロナ下でもオリンピックの関係の選考会やオリンピック本選は半ば無理やりにでも実施された。
これは公的な資金で倒産を救済があったり、保護されたりする。一方で「そんなの知らない」と倒産を見殺しにされるような企業もある中で。
実際にIOC承認競技からすれば、メリットしかない。どうにかしてIOC実施競技を目指すだろう。要は上場企業が二部やマザーズから一部に移りたい、のような対応関係である。
オリンピック実施新種目≒昇格
ここで、新しくオリンピック実施競技として実施されるようになる競技は、昇格がされたような状態になる。インパクトとしては、降格昇格どころか、非上場からいきなり一部上場に代わる位のインパクトだろうか。
今までほぼなかったメディア対応が頻繁に行われ、世界選手権やワールドカップの結果も追われるようになり、誰が日本代表になるか?なんかも徹底的に調べられるようになる。助成金やスポンサーも桁が変わる。
オリンピック除外種目≒降格
一方でオリンピック実施競技からの除外は、上場企業の降格どころか、一部上場から一気に上場廃止くらいの落差を感じることだろう。
今まであったメディア対応がほぼなくなり、世界選手権やワールドカップも無視され、日本代表がだれか?すらも気にかかられられなくなる。
助成金も大幅縮小かなし、スポンサーも桁が下がるほうに変わり、一気に離れていく。
さらに今まで実施種目だったことから除外となると、今後は衰退するいわゆる「オワコン」として認識され、さらに荒廃する可能性も高くなる。落差が激しい。
少し具体例を紹介する。
ここで皆さんは「クラウマガ」という単語を聞いたことがあるだろうか?
これはある武道の名前である。関係者には失礼を承知ながら紹介しているが、おそらく大半の読者が「何それ?」と思ったことかと思う。
世界大会の動画があったので張っておく。
これは世界選手権の動画である。2019年実施のコロナ前の実施であり無観客開催ではない。こんな感じの市民大会のような規模の世界選手権が行われる。
例えばレスリングがオリンピックの実施種目でなかったらどうだろうか?「レスリング?何それ?プロレスの事?」と言われていてもしょうがないだろう。クラウマガを知らないのと同様に。仮にレスリングがオリンピックの実施種目でなかったら、レスリングもこんな感じの認識になっている可能性もある。当然どんなに強くても国民栄誉賞が与えられたりはしないはずだろう。世界選手権で優勝してもニュースにすらならないことが予想される。
ほかにもいくつか紹介したい。
基本的に世界選手権は、業界内の大会であることが多い観客も大体が関係者か地元民になりがちである。ましてや身に来るために世界中から飛んでくるようなことはなかなかない。
とりあえず映像を張ってみよう。これはテコンドーの世界選手権2019の映像である。色々と探すのが大変なのは、観客席が映っている映像がなかなかないためである。
もちろん2019年の開催なので無観客試合ではないはずであるが、観客席は無観客試合の東京オリンピックとあまり変わらない人の入りに見えないだろうか?
こちらはフェンシングの世界選手権。同様に無観客試合ではないはずである。なんかもう地元のサッカー大会の方が観客数多そうである。
アーチェリーも探していたら、美しい過ぎて射貫かれたいコロンビアの方が出てきた。射撃やアーチェリーは的が見えにくいなんて言う別の理由もあるかもしれないが、観客席はそんなに大きくない。
アーチェリーコロンビア代表のバレンティナ選手めちゃくちゃ可愛い。これは撃ち抜かれますわ… pic.twitter.com/wqLjyNQi6K
— 臨死のうみちゃん (@umiuminemui) July 24, 2021
コーフボールの方が観客数多い感じが。
もしかしたら超満員の大会もあるかもしれないが、見つけることは出来なかった。
要するに多くのオリンピック実施競技は、仮にオリンピック実施競技から除外されると、多くの競技は、興行として使える大きな大会は、人がいないガラガラな各国選手権やガラガラな世界選手権位しか残らない。助成金も大幅に削減され、スポンサーも激減し、注目度も世界のスポーツの中心から、ほぼ無視レベルまで下がる。そして今までオリンピック実施競技であったのに、外されたとなるといわゆる終わったコンテンツ、オワコン、「今後の社会に必要ない競技」という認識もされかねなく、余計に人が離れることになる。
要はオリンピック実施競技の統括団体は、統括している競技がオリンピック実施競技から外されると、享受している多大なメリットを失うことを、無意識レベルで理解しているはずである。
このため除外種目にあげられた際に大慌てしていたのは覚えている人も多いだろう。署名活動まで行われていた。
国際オリンピック委員会(IOC)理事会によるレスリングの2020年オリンピックからの除外勧告に対し、存続を求める署名運動へのご協力、ありがとうございました。
何が競技の「価値」を決めるか?
ここで何がスポーツの価値を決めるか?スポーツでは、メジャーか?マイナーか?みたいな話はよく出る。これは何が決めているのだろうか?
政治・利権・メディア
色々な話があるだろうが、これに関してはもはやこれはもうマスメディアが報道するか、しないか?が大きいだろう。報道対象に入っているか否か?が重要となる。
ここでオリンピックの実施競技であればどれだけクオリティが低かろうがルールが意味不明だろうが、ていうかなんでこんな競技やってるの?と思われようが、報道対象である。
競技人口?
よく「競技人口」が指標になると言われるが、果たしてどうだろうか?そもそもこの「競技人口」とは何だろうか?実はこの「競技人口」かなりごまかせる指標である。1年間で一瞬でも体験すれば、競技に参加したとみなされる。例えば「日本一競技人口が多い競技は?」と聞かれたら何と答えるだろうか?
サッカー?野球?バドミントン?
ある正解のひとつは「ウォーキング」というものがある。要は1年間に1歩でも歩いていれば、ウォーキング競技に参加していることになる。これは寝たきりか足が不自由でもない限りほとんど全員が参加していることになる。似たようなもので「計算」なんかもとてつもない競技人口になる可能性がある。
似たようなもので、武道系やライフルなども競技人口は多い。軍が関係するためである。戦場で実弾で打ちあっているものを競技というのもなんだかアレではある。
ここで競技人口を「各国の協会(日本協会NF)の正会員で、かつ日本選手権(予選含む)に出場している人数(重複無し)」のようにいわゆる「比較的真面目にやっている人数」とすれば、どうだろうか?高校のインターハイの参加選手のように、正確な人数を把握できるはずである。
ただこの視点で見ると、オリンピック実施競技も、結構人数が絞られるものが多いことに気が付くだろう。日本代表の選考倍率が1桁、多くても十数倍、なんていうものは結構ありそうである。(名指しするとアレなので、ここには載せないが、興味がある人は調べてみることをおすすめする。なぜ日本協会・連盟のサイトに参加者数やリストを載せないのか?も納得がいくだろう。)
なお冬季オリンピックや、パラリンピックは、該当選手がいないために、どうにかこうにかトライアウトを開催して選手を確定させたり、見込みがありそうな人にお願いして代表になってもらう、なんていう事態も発生しているようである。該当者がいないと該当代表枠を放棄することになる。勿体ないと思うのだろう。
利権ピックの攻防
さて、何が決めるのかと言えば、利権で決まっていることが分かるだろう。これもいろいろある。
なおオリンピック憲章に収まっていないが、現状実施している競技もある。例えばフェンシング・近代五種・馬術等がある。
「オリンピック競技大会のプログラムに含まれている競技でこの規則(オリンピック憲章)の基準を満たしてはいないものも、例外的な場合については、オリンピックの伝統のために、大会で継続して実施することができる。」救済規定であり、実質的な普及度や実施の容易度という点で不利となるフェンシング、近代五種、馬術などは伝統的競技としての要素も考慮されている。
ここでオリンピック憲章を改定して中核競技というものが出来た。いかが中核競技の説明である。
よって、ここでどの競技をオリンピックの実施競技にするか?ろいう、オリンピックのメダル争いのようにスポーツマンシップにのっとった綺麗な争いではなく、ドロドロな権力闘争が世界中で繰り広げられている。オリンピック競技大会で優先的に実施される競技。五輪実施競技ともいわれる。国際オリンピック委員会(IOC)はオリンピック競技大会の肥大化を抑制する目的で、2007年のIOC総会でオリンピック憲章を改訂し、2020年開催大会以降、競技大会は25の中核競技と最大で3競技を限度とする追加競技によって構成することを決めた。中核競技は特別な問題が発生しなければ実施競技からは除外されることはない。新たに採用する追加競技になるには、理事会から提案されたうえで総会で決議され、投票総数の過半数を獲得する必要がある。冬季大会は現行の7競技が中核競技として認定されており、追加競技の枠は設けられていない。2013年2月に行われた総会では、2012年のロンドンオリンピックで行った26の競技数から1種を減らし、2020年の大会開催に向け、25の中核競技を選定する決議が行われた。中核競技として選ばれたのは、陸上競技、水泳、体操、重量挙げ、バスケットボール、バレーボール、バドミントン、サッカー、ハンドボール、ホッケー、テニス、卓球、ボクシング、フェンシング、柔道、テコンドー、ボート、カヌー、セーリング、自転車、馬術、射撃、アーチェリー、近代五種、トライアスロンの25競技である。2020年大会の追加競技としては、2016年大会から7人制ラグビーとゴルフの2競技がすでに採用されており、未定の1枠については2013年9月のIOC理事会で選考が行われ、同年2月の総会で中核競技から除外されたレスリングが復活した。https://kotobank.jp/word/中核競技-894736
利権を憲章を改定することで守るという利権政治である。守る側もあの手この手を駆使する。
よって、今後は追加種目は今後の方向性などを見据え、あの手この手でルールを変更したり、マーケティング・ロビーイングをして、実施種目になるように取り組むということであろう。この憲章自体も変わるのかもしれない。
正にオリンピック実施競技にするかしないか?の戦い、利権ピックの攻防である。
終わりに
オリンピックの実施競技であることとは、多くのスポーツにとって非常に大きい利権であるために、結局多くの競技の国際連盟が、あの手この手を駆使して、競技のルールを変えたり、オリンピックの実施競技に立候補をしている。一方で、オリンピック実施種目でプロリーグがないものは必死に外されないように、オリンピック「実施種目利権」が繰り広げられている。ということである。
この辺りを知ると、純粋に競っているアスリート同士のスポーツマンシップはドロドロとした利権構造の上に成り立っているという事実が見えてきそうである。