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公開日:2022年12月31日
更新日:2022年12月31日
スポーツやアート、演劇などの業界に関わると、「もっと広めたい!」「もっと知ってほしい!」と言った発言をよく耳にする。
全てではないが、特に知られていないモノ、いわゆる比較的知られていないマイナーなものでこの傾向を強く感じる。
しかし、広めたり知ってもらうことによって、端的に言って広めたい!と言っている人が儲かるわけではなく、客観的に見て、特に足しになる要素が見当たらないことが多々ある。
今回はこの「もっと広めたい!」「もっと知ってほしい!」という発言傾向が何を求めているのか?を考えたい。
広めたい!の本心
広めたい!と言っている例を受け、文字通りの意味で受け取って、以下のような提案をしたことがあった。
これを広めるために、(あなた方ではなく、)もっと能力のある人にやってもらうようにしては?
これを広めるために、(あなた方ではなく、)もっと華のある見栄えがいい人材を使ってみては?
こういう提案は、明らかに嫌がっていた。
さらに「代わりに私たちはどうするのか?」という質問に対し、「本業で培ったスキルで貢献しては?」や「この人たちのサポートをするとか」
と言ったら、余計に嫌がりが強くなった印象であった。
こういう反応は色々あった。
こういう表現をしていると「お前みたいにどこ行っても、ちやほやされがちな奴には分からん」と言われたこともあれば「他に居場所があるんだから良いでしょ」と言ったことも言われたことがある。
これを受けて「広めたい!」や「知ってほしい!」が何を求めているのかが見えてくるところがある。
「広めたい!」が端的に求めているのは承認である。社会的地位やチヤホヤ、と言ってもいいだろう。広めたい!を本心を加えて表現すると、以下になる。
広めたい!広めることによって、この私の(業界内の)社会的地位を上げてほしい!
知ってもらいたい!知ってもらうことによって、この私に注目してほしい!
ということである。
地位や承認の追求
なぜに無償で生活も不安定な人が、さらに入れ込むことによってより厳しい状況になりそうなのにそこにこだわるのか?少し調べると分かってきたことがある。
社会的地位や健康と鬱
マウスではあるが、こんな実験がある。
国立遺伝学研究所によると、マウスを使った研究で、社会的順位が低いとうつ病のような行動を示すことがわかったそうです。
同じケージ内で飼育されたマウスを使って、研究は行われました。ケージにいた4頭の雄マウスを観察すると、それぞれの間で順位が形成され、順位が低いマウスほど不安様行動が見られたとのこと。
地位が低いと、ストレスが強くなり鬱になりやすくなるそうである。
また社会的地位が低いと不健康になりがちな様子である。
欧米では、社会経済的(収入、学歴、職業的地位)に不利な人にがん、循環器疾患、2型糖尿病の罹患率または死亡率が高いという結果が多い。• そのメカニズムとして、物理的貧困による不健康な生活習慣、健診未受診による発症予防、医療へアクセスが少ないことによる重症化予防の他、精神的ストレス、出生前や子どもの時期の低栄養が考えられる。
居場所が欲しい
学生の頃からは、スクールカーストは低く、いじめられ、班分けの時は「要る要らないじゃんけん」で、じゃんけんに勝った側が『要らない!』といって押し付けら、バイトも落とされ、就活の書類は学歴フィルターで弾かれる、働き始めてもまともな仕事もない、普段は「おい派遣」「おいそこのバイト」のように、年下の正社員からも、もはや使い捨てのコマやゴミのように扱われ、居場所どころか、ヒトとして扱われずに人権がないような扱いを受けている。ともすれば無視され過ぎていない扱いを受ける。
人によっては年も取ってきてキャリアも積んでいる。
そんな中、無償とはいえ「会長!」「先生!」のように個人名で呼ばれたり、意見のお伺いを立てられるような経験を、もしかしたら生まれて初めて経験し、非常に気持ちが良くなってしまい、もうこの地位を離したくない、と感じてしまいしがみつくような例もあるだろう。
図にするとこんな感じだろう。
こうなると、自分に能力があるかどうかなんて関係ない、ヒトとして扱われるのが嬉しい。どうにかこの座に残りたい!となるのも、人間として自然ではある。
差別化
そして、一旦それらの「地位」を得ると、差別化をしたくなる様子である。
「俺は理事なんだ!あいつら(非正規派遣)みたいな底辺とは違うんだ!」
的な発言も聞いたことがあった。それくらいに居場所がないことや地位が低いことは精神的にくるもののようである。
さらにここで「地位」を失うと、客観的に見て「あいつら」と同じになってしまうのだから、さらに必死に地位にしがみつくなるのだろう。
逆に足かせになることも
「広めたい!」という願いが叶って、広まったとする。どうなるだろうか?
広めるには該当の人材に出て行ってもらった方が広まるようなことも起きうる。
広めたい!という本人自体が、拡大の足かせになってしまうような場合すらある。
広めたい人は、広めることにより自分の地位は固定化されたまま、自分の地位が相対的に上がってほしい、と思う。
図にするとこんな感じ。
と思うものの、人数が増えてきたことにより多くの実力者が業界に入ってくると、立場を追われがちになる。
さらに、適性がないのに大きい金額を管理することが出来ずに結果として横領、などという例も枚挙にいとまがない。
結果としてこんな感じ。
広めることによって、居場所がなくなってしまうのであれば、元々広めたい!と言って広めたことによるメリット、要するに承認と地位、を享受できないからである。よって、広めることに抵抗する。結果として業界が広まらないで、小さいまま、なんてことも。
図にするとこんな感じ。
広めるのに有効な人材
最後に、お金になりづらい分野において本当に「広める」という目的だけに注目して人選をすると以下のような傾向になるだろう。
- お金に余裕がある
- 時間に余裕がある
- 精神に余裕がある
- 能力が高い
- 他の分野で成功している
- 他に居場所がある
余裕があり、能力もある人に、本気ではなく、週末や月末などに片手間でやってもらったほうが、成果は上がりやすい。
ただこういう人材を「あいつらとは違う!」というタイプの人は嫌がりそうであるので、強力に排除する。近々立場を追われるのが明確だからだ。
やはり難しいところである。
終わりに
利益などの利権が関わると、このようにシマ争いのようになりがちなのは言うまでもないが、それ以外でも上記のようにどんなに小さくても、承認や、地位で利権のような争いになるようである。難しいところである。