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公開日:2020年2月15日
更新日:2020年6月7日
働き方改革が叫ばれている。働き方改革の中でも特に、副業が注目されている概念のひとつである。以前までは副業が禁止で専業が当たり前であった状況とは打って変わって、出来る人には第二第三の職業も兼任してもよい、という考えである。この状況ではどうなるだろうか?今回はそれについて考えていきたい。例によって心のスイッチを切って、構造を考えていきたい。
働き方改革と一夫多妻制
一人の人が1つだけではなく、複数に手を出してよいという状況は、何かに似ていないだろうか?そうである。一夫多妻制である。こちらの図をご覧いただきたい。
この図における男女を以下のように対応させると、なんと同じようなことが言える。
男→個人
女→(企業や業界における)ポジション
とすると、同じようなことが起きる。
副業禁止の状態では各個人は、社長を何個もやっている人や、兼任など一部例外はあるものの、ひとつのポジションやチャネルにしかアクセスができなかった。そこまで実力がない人でも、競争が激しくない業界の、「中くらいの企業」や「中くらいの役職」にありつくことが出来た。しかし、一旦副業が解禁されれば、副業でも、他の業界にも手が出せるようになるので、実力者が様々な分野へ手を出せるようになる。こうなると、競争が激しい人気の業界に身を置きながら、競争が激しくない業界の「中くらいの企業」の「中くらいの仕事」を本業の片手間でやる人も出てくるだろう。そして実力者の適当な片手間のほうが、芳しくない人の全身全霊の本気よりも生産性が高い可能性が高い。むしろそれ以上である。
同じように一夫一妻制では、2人以上に手を出すことは禁じられていた。しかし一夫多妻制では夫が複数の妻に手を出すことが出来る。実際に現代の日本では現状一夫一妻制ではあるが、時間差一夫多妻制という状況がある様子である。仰天、日本は「一夫多妻社会」? 未婚男性増のウラに「バツありオットセイ男」!
これは何を意味するかというと、有能な人物の副業のほうが、残念な人物の本業よりも企業や業界の発展に貢献できるために積極的に登用する。モテる男の正妻が望ましいが、ダメな男の正妻よりは、モテる男の2号さんのほうが良い、という状況になる。
逆に、能力のない人物は、専業で副業をしないとしても必要とされない。ダメな男なら、どんなに一途でも応えることが出来ない。無償でも要らないかもしれず、むしろお金を払ってでも働かせてもらったり、お金を払ってでも異性に相手をしてもらっている状況になる。前者に対応するものは最近のオンラインサロンで、後者は実際にホストやキャバクラをはじめいろいろある。
https://ja.wikipedia.org/wiki/一夫多妻制
https://ja.wikipedia.org/wiki/一妻多夫制
全体最適化
日本の小学校教育の「みんな輝ける」の否定
日本の平等観は小学校での平等の扱いに見られる。小学校の時を思い出してほしい。話の簡単のため、ほかの人たちよりも多才な出木杉A君と多才な出木杉B子ちゃんの2人がいるA-Tまでの20人のクラスを想定する。10教科の上位2位までが表彰される状況を考えたい。しかしこのクラスでは、「みんなの平等」を重視し「入賞は1人1つまで」と決めている。この結果、クラスの表彰結果は以下のようになる。
10科目で2位以内に入賞する学生は20人。全員何かしらで表彰されることになる。運動会と音楽祭は、リレーの選手や指揮や伴奏などの重要な役は1人1つでみんなで分け合おう!「みんな頑張って、みんな輝こう!」「誰にでも得意な分野がある!」という状況とも通ずる。上記の制限のため、どんなに優秀な出木杉A君と出木杉B子ちゃんでも、それぞれ一つだけ表彰にとどまる。それでもバレンタインのチョコは一部の男に集中していたはずだ。
一方で、このクラスで「入賞は1人1つまで」の制限が外れたとする。その場合には実際の能力を考えるとこうなるだろう。
出木杉A君と出木杉B子ちゃんが1,2位を独占。(音楽はBさんの方が出来たのでBさんが1位。本筋には関係ない)結果2位以内に入り表彰される人はA,Bの2人だけになる。残りの18人は何も表彰されない。これは「誰にでも特異な分野がある!」「誰だって頑張れば報われる!」という状況を真っ向から否定する状況である。
この場合でもバレンタインのチョコは、おそらく一部に集中する。むしろこのほうが余計に集中しそうである。
フラクタル構造により、より大きい社会になると、相手が強力になる。
この話の「1人1つまで」の制限と、「副業禁止」と「一夫一妻制」が対応する。現象の構造として当然ではあるのだが、自由競争が進めば進むほど、実力者がより多くに手を出せるようになる関係で、何も得られない「負け組」が増える。今までに副業禁止で守られていた、人々も競争にさらされ「何やっても勝てない人」が増加する。
一夫多妻制を合法化すると、生涯未婚のKKOがおそらく増える。「頑張れば僕だってできる!」はさらに幻想となり、承認欲求迷子の意識高い系みたいなものがさらに増えそうである。
ただそれでも、副業を解禁したほうが実力のある人が存分に活躍できるために、全体の発展はする。優秀な人材が片手間で入ってきた分野は恩恵を受ける。図で示すと次のような感じになる。
要は、一部の実力者が他分野に積極的に参入し、平均は上がるが、中央値が下がる。「働き方改革の副業で収入アップ!」と言っているが実際は、こうなるだろう。そもそも人口が減少する日本政府が働き方改革で望んでいるものは、まさにこれかもしれない。
「身の丈に合った受験」等の、「身の程を知ってその範囲で活躍してほしい」というような意味合いの政策からも感じられるように、国民一人一人が活躍するという「一億総活躍社会」は、「実力が無い人はトップを目指したりせず、待遇が悪いのは自分の実力相応だと実感し、現状を受け入れて身の丈に合った活躍をしてほしい」ということだろうか。働き方改革はどこへ行くのだろうか。
まとめると、
- 働き方改革と一夫多妻制は構造が似ている
- 働き方改革により一部の実力者が実力を発揮できる
- それに対応して立場を追われる人が増える
何とも現実は厳しいものである。
筆者も現実の厳しさは嫌というほど見せつけられてきた。知らないほうがいいかもしれない。しかしながら、進歩をするには、今おかれた現状を正確に把握することが重要であると信じている。現実に目を背け、カモにされ持ち上げられて迷走を繰り返すだけである。
なお、状況と仕組みについて構造を比較しているだけであるため、男がどうである、女がどうである、という話をしているわけではないことは念頭においていただきたい。さらに倫理的な問題などは置いておいて。