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公開日:2017年7月22日
更新日:2019年7月21日
留学といえば奨学金。「奨学生だと、返すの大変ですね。」的な話をされることがあります。
海外留学の奨学金は基本的に返済不要です。しかしながら、こういう認識差はどこから来たのでしょうか?
何故奨学金≒返済なのかと思い調べたところをまとめることにしました。
特待生と奨学生、スカラーの違い。学生ローン?
さて、なぜこんな認識の違いが生じるのでしょう?順にみていきます。
日本の奨学金≒学生ローン
「利子や返済、取り立て」など、借金と関連性の高い単語が出てきます。
これらの単語から検索すると、日本で奨学金というと日本学生支援機構(JASSO)奨学金がでてきます。
http://www.jasso.go.jp/shogakukin/oyakudachi/sukara_ps/index.html
一部給付のものもあるようですが、大多数が貸与、要するに借金になります。
また、奨学金という言葉自体を調べてみると、こうあります。
奨学金(しょうがくきん)とは、能力のある学生に対して、金銭の給付を行う制度である。奨学金の厳格な定義としては、学業成績等が優秀な生徒・学生に対して、修学を促すことを目的とするため、返済義務が全く無い給付奨学金(英語: scholarships)の事をいう[1]。
もっとも、このような厳格な定義の下で奨学金事業を運用すると、選抜される給付対象者が著しく少なくなるため、通常は、学生支援の制度趣旨に鑑み、奨学金の定義を無利子ないし低金利を伴う貸与も含めることで、幅広い層が奨学金事業対象とする。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%A8%E5%AD%A6%E9%87%91
よって、日本語版Wikiによりますと、通常バージョンの借金も奨学金に含める。としています。
この日本語での奨学金の関連項目はローン・教育ローン≒借金です。
説明にもあるように、返済不要のほうが数は少なくなるので、貸与のほうが大半になります。
よって日本では、奨学金≒借金という認識があります。
ちなみに奨学金 フリー画像でこの記事のサムネイルを作ろうとしたところ、以下のような画像がヒットしました。
この画像が日本の奨学金の印象をすべて物語っているように思います。
世界標準では奨学金≒返済不要
これに対して、他の国ではどうでしょうか?少なくとも欧米では奨学金の英語訳はScholarshipです。
定義はこうなっています。
A scholarship is an award of financial aid for a student to further their education. Scholarships are awarded based upon various criteria, which usually reflect the values and purposes of the donor or founder of the award. Scholarship money is not required to be repaid.[1]
Scholarship money is not required to be repaid. 奨学金は返済を必要としない。
とはっきり書いてあります。
関連ページにローン関係のものはありません。
関連ページに、韓国・米国・台湾のScholarshipについて書いてあります。見てみましたが、やはり給付の返済不要です。
よって世界標準では奨学金=返済不要です。
ちなみに、日本式の貸与の”奨学金”はStudent Loanと言います。
A student loan is a type of loan designed to help students pay for post-secondary education and the associated fees, such as tuition, books and supplies, and living expenses. It may differ from other types of loans in that the interest rate may be substantially lower and the repayment schedule may be deferred while the student is still in school. It also differs in many countries in the strict laws regulating renegotiating and bankruptcy. This article highlights the differences of the student loan system in several major countries.
学生の期間に合わせて遅らせたり出来る低利子の借金とあります。
やはり、そこはしっかり分けた方がいいと思います。
特待生と奨学生、スカラーの違い
特待生・奨学生・スカラーの違いは何でしょうか?
スカラー
スカラーというと、論文検索システムのGoogle Scholar等を思い浮かべるかもしれません。一般には学者などの意味です。
スカラーは英語のScholarの和訳です。向きを持たない大きさという意味のスカラーは、スペルが異なります。scalarです。
Scholarの意味はこうなっています。
noun 1.
a learned or erudite person, especially one who has profound knowledge of a particular subject.2.
a student; pupil.
3.
a student who has been awarded a scholarship.
奨学金関連でScholarというと、Scholarship holder、要するに、英語の意味の奨学金、要するに返済不要の奨学金を貰っている人となります。
ここでScholarの日本語訳はこうあります。
1(特に人文科学の分野の)学者.
an eminent Shakespeare scholar 著名なシェイクスピア学者.
2奨学金受領者,給費生,特待生 (cf. scholarship 1).
a British Council scholar ブリティッシュカウンシル給費生.
3[通例否定文で] 《口語》 教育[学問]のある人.
He isn’t much of a scholar. 彼は大して学問のある男じゃない.
関係するのは2の意味です。奨学金受領者・給費生・特待生。
奨学生
日本でなじみ深いのは、奨学生というのがあります。
奨学生は文字通り、奨学金を貰っている人となります。
しかしながら、上で述べているように、日本語では奨学金が借金の可能性もあります。
奨学金受領者も、同じ意味になりそうですし、給費生というのもなんだか配給を受け取っている人のような印象があります。ただこれには借金の意味はないようにも受け取れます。
よって、奨学生という言い方は誤解を受ける可能性を含んでいます。
特待生
さて、ここで便利なのは、この単語。特待生。
特待生(とくたいせい)とは、入学試験や在学中の成績優秀者等に対して、学費の一部、もしくは全てが免除されたり、奨学金の支給などの特別な待遇を受ける学生や生徒である「特別待遇学生」「特別待遇生徒」の略語、また制度そのものを示す言葉として、教育現場等で広く用いられている。
これであれば、日本語でも、借金のイメージはないでしょう。
実際に私もプロフィールにあるようにWinton Scholarの日本語訳をウィントン特待生としました。
ついでに関連ワードで「特待生 イシス」っていうのも手出来ました。スマホゲームのキャラだそうです。
奨学金の歴史
他の国とは定義が違うというのは、おそらく日本で貸与のものを奨学金と言い出したのが事の発端のようです。
少し調べると以下のようにあります。
日本育英会という団体が、戦時中からあり、現在の奨学金はその名残ということになっています。
http://xn--n8jp9b4cw991aprcpy7kkld.net/genjo-rekishi.php
貸与のものを奨学金として引き継いだ、ということでしょうか。
終わりに
たかが1つの単語の訳ですが、文化背景的に意味と印象が大きく変わってきます。徐々に変わりつつはあるようですが、日本もグローバル・グローバルというのであれば、こういったところを変えていきたいところですね。