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公開日:2016年12月18日
更新日:2019年7月21日
こんにちは。篠原肇(@HajimeShinohara)です。
前回の記事では、日本では盛んではない競技を効率的に向上するには、強豪国に滞在するのが効果的で、社費留学などのキャリア形成の「ついで」にスポーツの武者修行をすることが効率のよいひとつの滞在方法であると紹介しました。それには文武両道の考え方が重要になってきます。
ただ有名人のプロスポーツ選手・アスリートでそれができれば素晴らしいですし、是非成し遂げていただきたいですが、現状契約条件や、その他制約により少し厳しそうなので、今回は、プロではなく、自分たちで普及などもやっていかなければならないベンチャースポーツ(マイナースポーツ)を対象に考えたいと思います。
文武両道の有名人を目指す重要性アスリート
そもそもよく言われる文武両道とは何でしょうか?
パワーポイントで作った習字風。
辞書的な意味では
文武両道(ぶんぶりょうどう)とは、文事と武事、学芸と武芸、その両道に努め、秀でていることを指す語。求道的な評価にも用いられる語である。転じて、現代では勉学と運動(スポーツ)の両面に秀でた人物に対しても用いられる。
勉学と運動の両面に秀でた人物を指すようです。特に高校や大学まではよく使われている印象です。今までの感じでは、文武両道では、両方を別々にやっているというのが現状でしょう。スポーツ選手を引退した後に、セカンドキャリアとして医者に転身するなどはこれに当たります。確かに辞書的な意味では、それで正しいです。教員免許を取得するというのもこれと同様です。スポーツを通じて、頂点を目指すために努力を重ねた経験などが役に立つでしょう。
また、文武両道を薦めたりする人々も、上記のように、別々にやることを想定して、スポーツの経験で得た忍耐力などが、人生に良い影響を与えるというものが大半であったかと思います。確かに両方出来た方が、できないよりも人生の幸福度は高くなるのでしょうし、指導者側もそれを望んでのことだと思います。しかしながらこれでは、両方を一定レベル以上の高いやることによる、精神的な充実のみで、経済的な利点など、実利的な部分の説明にはなっていません。
もちろん精神的な充実が実利によい影響を及ぼすのは間違いないでしょうが、他人を説得するには、精神的な部分以外にも、客観的な目に見える利益についても説明できたほうが、説得力が上がります。同時に文武両道と器用貧乏は、紙一重でもあります。基準によって決まります。
π(パイ)型人材・ダブルメジャー
ところで、人材開発では、専門をふたつ持つ「π(パイ)型人材」や「ダブルメジャー」が重要というのは、よく言われています。π型人間に期待されることは、二つの専門を独立にやることだけではなく、さらにその相互作用により、新しい価値を生み出すことでしょう。
DNAの構造が二重らせん構造であることが発見されたのは、他分野の研究者同士が毎日のように、ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所のすぐ隣にあるパブ「The eagle」で議論していたことによることが大きいと言われています。この教訓には、新たな発見やイノベーションは、分野間交流によることが大きいことです。
専門を二つ以上持つ人は、分野間交流が一人の人間の中で起こりうるので、新たな発見や創造がしやすくなるのでしょう。ここで、高いレベルのスポーツと、特定の能力の組み合わせは、このπ型人材の表現にもあうと言えるでしょう。
ということは、時代の流れを考えると、現代の文武両道のアスリートには、スポーツと勉学やその他能力の相互作用によるイノベーションが期待されているといっても過言ではありません。
これを応用する
さて、ある程度高いレベルでできている場合に、どのようなことができるかを見ていきましょう。
あえてここで使い分けまずが、今までの「マイナースポーツ」では、このような発言が多々見受けられました。「『海外遠征が多いと正社員として働くのは厳しいために、正社員をやめて派遣社員を掛け持ち食いつないでいます。世界制覇の夢を追うため、どうか支援をお願いします』とクラウドファンディングを行う。」
これに対して、以前の記事では、「ベンチャースポーツ」では、このようなやり方を提案しました。
「クリケットなどコモンウェルスで盛んな競技の日本代表選手が、武者修行をするために、社費留学でオックスフォード大学のMBAに進学する」
こういうやり方であれば、個人的には競技の武者修行ができ、キャリアアップにもつながります。スポーツ協会としても有益でしょう。もしかしたら企業の宣伝にもなります。かなりの実利になります。
これも長期的な目標と計画があれば、理論上はこのようなことも可能になります。
「ラクロスやアイスホッケーの派生競技などのアメリカで盛んなスポーツの日本代表選手で、海外武者修行をする。その際マサチューセッツ工科大学の工学系専攻の博士課程に入学し、スポーツ関係のモデリングや自分の運動の解析を行い、アスリート向けの新しいプロダクトの研究・開発を行う」
この場合、キャリアアップのみならず、自分のデータの解析を自分で行うわけですから、自身のスポーツ技能の理解やの技術向上にも役立つはずです。また、双方の経験を生かして新たな価値が創造できそうです。
社費留学でなくても、欧米の博士課程(PhD)では、フェローシップ(奨学金)やリサーチアシスタント(RA)として雇用される機会が多くあるため、金銭的な負担もなくすことも可能でしょう。
日本からも、海外の名門大学でPhDを取得するための返済不要の奨学金を出している財団ががあります。私も採用いただいている船井電機グループの船井情報科学振興財団もそのひとつです。
他にもこのような複合的なやり方は様多岐にわたると思います。このように他との組み合わせでやっていると、該当競技の知名度も上がっていくことでしょう。こういったやり方は理論上は可能ですし、歴史的・国際的には存在しているはずです。今後も出てくるかと思います。
セレンディピティ
しかし、人生とは難しいもので、予定通りにはいかないことが多いです。私もズタボロです。それでも、その過程で得るであろう様々な武器を持つことは、その後の選択肢の幅が広がります。またとっぴな組み合わせによる新たな発見や創造につながる確率が高くなります。
そもそも、全くと言っていいほど取り上げられない無名なスポーツに関して、私がハフィントンポストのような影響力のある大手メディアに連載を持たせていただいているのは、私が、ただ無名な競技に取り組んでいるだけではなく、そのほかにも物理学科のバックグラウンドを通して、論理的・体系的に書いていることによる部分もあるでしょう。経歴的にも、ケンブリッジ大学の特待生で、同時にスポーツ選手として日本代表の経験があるというのは、客観的に見て説得力を増す効果も全くないとは言えないでしょう。そう考えると、両方できることにより、新たな価値を生み出したということで、文武両道の実利的な恩恵を受けていることになります。(まだ器用貧乏かもしれません。判断はお任せします。)、(無名なものは、知名度があるものと並べておくと、その無名な競技も価値があるのではないか?と思うようになるだろうと予想し、普段から並べて書いています。 )
まとめ
文武両道に代表されるように、両方をある程度のレベルでできると、単に二つを別々にやるのではなく、現在人材開発で重要と言われるπ型人間のように、スポーツと勉学や仕事などの他の能力が相互作用を起こし、新たな価値を創造していくことができます。また、組み合わせも考えると選択肢の幅が広がります。今回取り上げた例が、文武両道による実利として使えれば幸いです。
本記事は、一部改訂し、ハフィントンポストへ転載しました。その記事はこちら。文武両道の効果とπ(パイ)型人材