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公開日:2018年4月26日
更新日:2019年7月15日
さてさて、大学では、研究室やゼミを選ぶ機会があります。
留学ブログとしても、認識されているようですので、今まで見てきた中で、研究室の選び方を考えていきます。
私も今まで散々な目に遭っているので、その辺りの見極め方法も考えていきたいと思います。
例えば、ケンブリッジ大学の博士論文の終盤のまとめはこちらを参照ください。
なお、他のカテゴリにも極力当てはまるように考慮しつつ、話を進めていきますが、主に理工系の博士課程を中心に考えていきます。
特に留学・研究系の記事だと「夢が~!」といったアツい(暑くるしい)記事が大半かと思います。一方で背に腹は代えられないのは事実です。よってこの記事では、徹底的に打算的な見方をしていきます。
効果的な研究室・ゼミの選び方!
以下研究室とゼミは、同義です。
研究室・ゼミの構成要素
そもそも、研究室を決めるにあたって、重要な構成要素はなんでしょうか?主な構成要素は以下の通りです。
- 研究内容
- 研究成果
- 研究設備
- 研究資金
- 教員の性格
- 卒業生
順番に見ていきましょう。
1. 研究内容
研究グループ選びに関しては、一般的に研究内容が最重要と言われています。研究内容。何をやっているか。どのような事柄を研究しているのか?
研究内容は、研究グループのウェブページで一発で分かります。少なくとも研究の大体の方向性や雰囲気は分かると思います。
2. 研究成果
成果が出ているのか?はかなり重要です。成果が出ないと、資金も取れない、資金が取れないと悪循環です。よって研究成果も重要です。
研究成果も、論文リストなどがウェブページに上がっているはずです。それを見れば、直近の成果も分かります。
全く更新されていない場合には、既に少々怪しいですが、それでも、Google Scholarなどで検索すればわかるかも。
3. 研究設備
分野にもよりますが、設備が必要なことが多いです。必要な設備がそろっているか?また、仮に設備があったとしても、マシンタイムが確保できるか?などの問題はあります。
大型研究設備のみならず、プログラムなども見ておくといいでしょう。
また、研究設備は広くとらえると、研究を通して、身につくスキルが分かります。
これは、卒業後に分野を変えるなどの場合に有効になります。
汎用的なスキルの他に、数学・プログラミングのスキル、実験スキルが身につくような分野に行けば、さらに潰しが利くようになります。
これは、研究成果のMethodからある程度の予想はできますが、なかなかウェブサイトには載っていないので、直接所属学生等の関係者に聞く方が効果的です。そのための研究室訪問とも言えます。
4. 研究資金
資本主義下では、何をやるにも資金が重要です。
資金が超潤沢な研究室では、旅費などが出やすいこともあります。
一方で資金繰りが火の車の研究室では、指導どころか、必要最低限の文房具などまで自腹などまでも予想されます。
そして、世界の大半の国では、大学院生は雇用されるため、資金がないと新しい学生も取りにくくなります。
「世の中ね、顔かお金かなのよ」という有名な回文(上から読んでも、下から読んでも同じになる)は、研究でも正しいようです。
一般的な傾向として、資金獲得に自信のある人は、ウェブサイトに載せていると思います。逆に載ってないと、怪しいかも…?
企業と共同研究するような分野の場合には、それらのリストも載せてあるはずです。
日本の場合には、研究者検索などで調べることができます。
日本の研究資金の場合には、いろいろ載っているかと思いますが、例えば、以下のようなものが載っていれば(出来れば代表者として)、おそらく安泰です。
CREST
FIRST
ERATO
基盤研究(S) (A)
5. 教員の性格
研究室を選ぶという際には、研究内容や研究設備に目が行きがちですが、教員の性格は非常に重要です。
教員の性格には、コアタイムの有無などのローカルルールも含まれます。
そもそも研究は、人間が行います。装置が勝手に行うわけではありません。
卒論、修論、博論を執筆するということは、少なくとも一定の期間以上一緒に働くことになります。
ソリの合わない教員だと大変です。
ソリが合わないだけなら、まだしも、意図的に学生をイジメて快感を得るような人格が崩壊している人物も、少なからずいるのは事実です。
大学の場合にはハラスメント防止委員会なども設置されていますが、少なくとも日本の場合は、事実上の揉み消し組織という場合が大半です。
そうなると、もうどうしようもありません。
そういう研究室は、全力で避けるべきです。
教員の性格は、直接会えば、なんとなくわかるかと思います。
口が達者だけど、行動が伴っていない、というのは最悪です。
行動だけで、言動はあまり良くない、のほうがまだましです。(おすすめできたもんじゃないですが)
ただ、第一印象ではわからないことも結構あります。
これに関して、もう少し見ていきましょう。
研究者には、研究は出来るものの、マネジメントは全くできない、人の感情が分からない等、一緒に働くことが困難な人格の人も残念ながらいます。
さらに故意ではない場合まであります。
研究が好きすぎて、研究費や学生の奨学金なども全く気に出来なくなってしまう人までいます。
それが輪をかけて厄介になります。
これになると結構大変です。
コースの終盤で指導教員を変えるというのは実質的に不可能です。
いくら一生懸命やろうが何しようが、卒業が出来なかったりもします。
これは次の卒業生の項につながります。
6. 卒業生
さて、これに関しては内容を聞かないと「?」となりそうです。
要は「ちゃんと卒業しているか?」「卒業した人がどうなっているか?」ということです。
そんな「真面目にやっていて卒業できないなんてあるの?」と選ぶときは思いそうなもんですが、現にそういう研究室はあるのが現状です。
学部生の卒業論文などでは、どの大学でも大半が卒業していることかと思います。
ただ修士論文以降は、失踪しているなどが出てきます。
博士論文に至っては、博士号が取得できずに退学などもいます。
修士論文や博士論文は学生が自身で書くと言いつつも、指導教員の力が暗に含まれており、その量は少なくありません。
言い換えると、無事に学位を取得し卒業できるかどうかは、指導教員の指導力に、かなり関わってきます。
これを、卒業生リストなどを見れば、「何人学生がいて、何人卒業している」というのが分かります。
特に海外の場合、大体何年で卒業しているかなども分かります。
学生に話を聞いても分かることでしょう。
仮にこの卒業生リストがガタガタだと、頑張っても卒業できない、病み過ぎ、等様々な負の面が予想されます。
これに関して、「若すぎる教員はリスキー」ということがあげられます。
なぜならば今までの学生履歴が未知数のためです。
以上が、研究室を選ぶにあたっての主な構成要素です。これらを踏まえて「打算的に」研究室を選ぶ方法を考えていきます。
優先順位
大学院研究室編
さて、研究室を選ぶ際にどうすればよいでしょうか?
一般的には、上記の順番で重視しそうなもんです。
研究内容>>>研究成果>研究設備≒研究資金>>>教員の性格>卒業生
しかし、私は、以下の順位で選ぶことをお勧めします。
研究資金>>>卒業生≒教員の性格>>>研究成果>研究設備>>>研究内容
そもそも、日本以外の大半の国では、資金がない研究室には、フェローシップなどが取れない限り所属できません。ただ働きになります。自ら進んでただ働きしたいですか?
おそらく、研究グループを選ぶ際には、「卒業出来る」は暗黙の了解で大前提、くらいに考えているかと思います。教員も人格者が大半くらいに考えている可能性も高いです。
しかし、これがとんでもない誤解です。
仮に卒業生が30%位しかいない場合、70%の確率で、あなたの数年の努力は無駄になりかねません。
ということで、「卒業生リストがまとも」というのは大前提です。しかし当たり前ではありません。調べることをお勧めします。
卒業した学生も、病んでいないですか?教員の性格も超重要です。向こう数年の生活が左右されます。
さらに、研究成果は出ていますか?
研究成果が出ていないと、じきに資金もとれなくなっていきます。研究設備や環境は十分ですか?この辺も資金に関係があります。
さらに、研究成果が出ていると、アカデミックの就職には有利になります。
アカデミック以外でも例えば統計学や機械学習の論文が出ていれば、就職にも有利になったりなどメリットばかりです。
そして最後に研究内容になります。
そもそも資金がある研究室で設備も人もそろっているような研究室では、研究分野の拡大も可能なはずなので、より融通が利くはずです。
マズロー心理学でもあるように、自己実現などの高次の欲求は、安全などの低次の欲求の上に成り立っています。
http://viral-community.com/starting-side-business/maslow-hierarchy-of-needs-4710/
研究室選びでいってみれば、
生理的欲求が、奨学金や研究資金
安全の欲求が、退学失踪せずに卒業できるか?
所属と愛の欲求は、研究室に所属する時点で達成されます。
承認の欲求が、研究が価値がある≒いい研究発表や注目を受けるか?
自己実現の欲求が、やりたい研究をする
と対応付けられます。
こういう見方をすれば、「研究内容だけで研究室を選ぶというのは、心理学的に非人道的」と言っても過言ではなさそうです。
そもそも学生を取る側の教員も、研究室わけの説明会等で、研究内容ばかり紹介していないで、研究資金が多い、などに触れた方が、客観性が保たれるように思います。
絶対にこれがやりたい!の「絶対」はどれくらい絶対なのか?
たまに聞く話ですが、「絶対に〇〇の研究がしたい」という人がいます。
その絶対の対象と度合はどの程度でしょうか?
本当に、その研究に取り組んでいるのは、その1グループだけですか?
同じ分野の人だったら出来る内容ですか?
ていうかもっと広めに「ナノテクノロジーなら何でもいい」「がん治療なら何でもいい」、という感じでしょうか?
さらにそのモチベーションは一生ものですか?数年で変わることはないですか?
もしそうであれば、研究内容なんて二の次三の次で問題ないのではないですか?
ちゃんと卒業できており、資金が潤沢で、成果が出まくっている研究室を選びましょう。
背に腹は代えられませんよ。
卒業できるかわからず、身も不安定で、教員も人格崩壊者で、成果も出るかわからないけど、それでもその研究が絶対にやりたいのであれば、その研究室を選べばいいのではないでしょうか?
ゼミの場合
学部生のゼミの場合には、研究成果や研究設備はなかなか関係がないかと思います。
大体、卒業もしているはずです。その場合には、教員の性格と、研究内容だけで決めても問題ないでしょう。
後は学生の雰囲気かな。
卒業生のネットワークも重要になりがちです。
そもそも大学院を選ぶ際は?
そもそも大学院への応募の際などは、どのようにすればよいでしょう?
よく言われている前提として、ある程度高いレベルの大学院に行った方が、研究分野を除いたとしても、卒業後のネットワークの関係で有利になります。
それを除いたとしても、
複数以上興味のある教員のいるコースを選ぶ
のが効果があると思います。興味がある教員が、必ず取ってくれる可能性はないので。
この「興味がある」というのは上記の基準と同様です。
以上が、いろいろと要素を考えつつ、極力打算的にものを考えた際に研究室やゼミを選ぶとこうなる、という指針になります。
上手く良い研究室を選べることを祈っています。