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公開日:2019年3月17日
更新日:2019年7月20日
就職関連が伸びたので、派生して関連記事を。
最近いろいろなところで、
「物理と、この分野と何の関係が?」
といったような質問・疑問を持たれることが多い。
この記事ではこれについて考えていくことにする。
なお、この話は、物理のPh.D.だからなのか、Ph.D.一般なのかは正直よくわからない。様々な人と話した感じでは、どうやら物理と数学やコンピュータサイエンスなどの基礎寄りの分野では共通している様子である。もしかしたらエンジニアリング・工学系はまた少し違った雰囲気がある様子であるが、これもおそらく中での分野による。話したのは大体はケンブリッジかオックスフォードのPh.D.の学生や教員など。国籍は世界中多岐にわたる。
もちろん個人次第であることは言うまでもない。
その分野と何の関係が?
では前置きが長すぎてどういう映画だったのかを忘れそうになるくらいの前提をもとに、本題に入りましょう。
「博士まで取った物理と、この分野と何の関係が?」
という質問である。正直何を意図しているのかがわからないことが多い。
おそらく一番多いのは、純粋な疑問で聞いているものだろう。「物理の専門知識とこの分野の専門知識に何の関係が?」ということだろう。
場合によっては「そんなことやってたからって、無駄だろ?私のほうが、この業界長いんだよ!」と言いたいんじゃないかと思う場合などもあるだろうし、様々である。
現状での効果は
『この分野と何の関係が?』という質問をすることがなくなる
これに尽きる。
まーた、物理学者さん何言っちゃってるの?「実に面白い。」的な奴だと思ってんの?それとも揚げ足取ってるの?
などと言われそうではあるが、これについて見ていきたい。
木の幹と枝の関係
ところで、木には幹と枝がある。葉は枝になり、幹にはならない。同じ種であれば、枝が強ければ強いほど多くの立派な葉が出来る。枝を太く強くするためには、幹が太いほうが良い。一旦枝を生やしやすい体質になれば、新しい枝を生やすのは容易である。
木の幹が専門性を深めた結果に身につく基礎力で、枝が専門性、葉が専門知識に対応する。
この木の幹を強くし、強い枝を生やしやすくするのが、いわゆるPh.D.での教育で得られる部分である。
狭い業界に通用する細かいテクニックや狭い業界だけの専門用語という意味だと、確かに関係がないのかもしれない。銅の電子スピンの数や相互作用の強さの知識は、コーフボールの戦術にはもちろん直接は関係ない。
しかし、枝は幹を通してつながっている。幹が太く強いほど、生えてくる枝もおのずと太くなり、枝の細部まで多くの栄養が行きやすくなることで、立派な葉も生えやすくなる。
おそらく理詰めの度合いが高い基礎的な分野のほうが、この幹の部分が、より太く、より強くなる傾向にある。
関係ある・なしも見方による
よって「関係がある」・「関係がない」も見方による。ほかの枝とその枝についている実や葉は違うものだろう。
そしてなんで「何の関係が?」というのは、枝葉である専門知識だけを比べようとしているから出てくるのであって、そもそも木の幹の部分の存在を認識していないとそうなるのではないだろうか?
「ビジネス経験が~」と言い出すのも、似たような状況に思われる。
ただ軟弱な幹に立派な枝と葉だけを作り飾ろうとしも、枝ごと折れて倒れてしまう可能性すらある。
専門性は、専門用語をたくさん覚えるというのとは別である。専門知識の量を専門性というのであれば、専門知識だけなら、分野にもよるだろうが、数か月程あれば、トップレベルまで行くことも不可能ではないんじゃないか?とすら感じている。むしろ追及している間にいろいろなことに詳しくなるのではないか?
木の幹の部分を地頭というのであれば、地頭で事が済むが、日本でいわれている「地頭」とはまた何か違うように感じる。
だれかこれに名前を付けてほしい。便宜上ネオ地頭とかにしておこうか。
応用すること
応用が利くも何も、違う分野のことであっても自分の中では「枝を生やす」という同じことをしているので、応用とすら思っていない。実際のところ、サイバーセキュリティからスポーツ戦術に至るまで、いろんなものが同じに見える。
逆に、ある業界が長い「専門家」という人でも「え、その程度の浅い理解で、結論出しちゃっていいの…?」だとか「『〇〇さんが言ってるから大丈夫!』という意見なども。〇〇さん自体も微妙な気がするんだけど…。」ということを、少なからず感じることがある。「(多分受け売りで話している人は)実はそんなにわかってないけど、わかった風に話していません?」
と感じることもしばしば。
おそらくこの説明を見てピンとくる人と、一体何を言っているのかわからない人に分かれるだろう。
こういった話は、人によってものの見方・見え方が違う典型例だと思われるため、話がかみ合わないのも無理もない。お酒を飲めない人に対して、「お酒を飲めないだなんて人生損してる!」とお酒を飲まない人が言われてもしっくりこないのと似たような状況である。
こういった基礎力は、古典の読書などと同様に、効果はあるが直接的に表面では見えづらいというのもまた共通している。
結論
まとめると、「物理とこれと何の関係が?」と聞かれた際の、私の心の中の回答は
「え?別物に見えますか?私には同じに見えます。」
である。しかしながらこう答えると余計に理解されないと思うので、
「特にないかもしれませんね。」
と答えるのが無難であると思われる。しかしこう答えると、「やっぱ無駄じゃないか」という結論が相手方の中で出そうで、難しいところではある。なので実際には、
「複雑な計算とかはできます。」
というなんとも微妙な回答になりがちである。
特に日本では、相手より優位に立ちたいと思っている人が多いようなので、なるべくそれらを刺激せずに納得いただける何かいい回答方法があったら教えてほしい限りである。
なぜそうなるのか?を自分なりに客観視して描写しているだけなんだけれども、偉そうに、無名なお前の話なんて聞きたくない!って人はこういうほかの人のでも読んでください。表現は違えど、似たようなことはいろいろ言われているように思います。
https://yoshikazu-komatsu.com/ted2013-elonmusk/#i-2