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公開日:2021年7月31日
更新日:2021年7月31日
「オリンピックには魔物がいる」と言われている。
オリンピックでメディアが追っていた「注目選手」が予選で敗退する一方で、メディアがほぼノーマークだった「無名選手」や「無名競技」活躍する傾向があるように見受けられる。特に個人競技の場合には、世界ランキングなどに順当に決まっていく傾向があるが、それでも最有力候補と言われている人が予選落ちなどと続出している。この点について考察する。なお歴史的・統計的な裏は取っていない。予めご了承いただきたい。
メディアからの反応
プロリーグが存在するスポーツでは、リーグ戦で毎回のようにインタビューある。よって日本代表になるような選手はメディア対応に慣れている可能性が高い。
一方で、それ以外のスポーツでは、多くはオリンピック以外では意気込みを聞かれたりすることがそんなにない。少なくとも毎日のように張り付かれてマスメディアからのマイクを向けられたり密着されることはそんなに多くないだろう。
その中で各スポーツの「注目選手」「スター選手」等などメディアが中心に据える選手は、いろいろな対応をすることになる。免疫が無いのにもかかわらず。無観客では本番の状態だけでは普通の練習や練習試合と変わらないかもしれないが、それでもメディアやSNSで「意気込み」なんかを聞いてくる。他の大会ではそんなに聞かれないのにも関わらず。これが知らぬ間に精神的に重圧になる可能性がある。
一方でメディアからのノーマークの選手は、結果を出すまでは、半ばモブキャラで、このようなことはなかなかされない。ていうか居るのかいないのかもわからない。だから結果を出すまでノーマーク。変なプレッシャーもない。むしろ「私を無視しやがって、結果出してやる!」くらいに思っている人の方が多いかもしれない。
そして重圧を受けた注目選手は予選敗退をする一方で、無名選手がいきなり出てくるように見える。
なんかこれ、どこかで見たことないだろうか?アレだ。自転車のこれ。スリップストリーム/ドラフティング。
クロスバイクやロードバイクなどのスポーツサイクルに興味がある人がスリップストリームについて知らないワケは無いので、サラリと説明すると、高速走行する車などの後ろは空気抵抗が小さくなるので、前に何も無い状態と比べると楽に走れるようになります。また、空気が押しのけられて気圧が低くなるため、気圧が低い方向へ引っ張られる力が働くので、そういった現象を利用して走るテクニックのことで、詳しくはwikipediaでも参照してもらえれば良いかと思います。当然、風の影響も少なくなるので普通に走るよりも少ないエネルギーで同じ速度が出せるため、カーレースはもちろん、オートバイや自転車などの乗り物競技では、スリップストリームを利用するのが当たり前で、むしろスリップストリームを利用しないと勝てないと言われるほど重要なものです。自転車の場合はスリップストリームとは言わずにドラフティングと言うようなので以下、ドラフティングと改めます。
先頭の選手は風をモロにうけ、体力を消耗する。一方で直後に張り付いている選手は、先頭の選手が風避けとなり、体力を温存できる方法である。
これを重圧との対応を考えると、以下のようになる。
先頭の「注目選手」は、期待に伴って各種協会やスポンサー・所属企業・メディアなどから様々な称賛や応援を受ける一方で、同時に批判や誹謗中傷を受ける可能性も上がる。
一方で二番手の選手には両方とも少ないか、何もない。一番手の「注目選手」が全てを引き受けることになる。
そんな中で試合を迎えると、いろいろと消耗していた「注目選手」は失速する一方で、むしろ幸か不幸か温存していた、それ以外の選手が結果を出す状態である。
最後の方で体力を温存していた選手が追い抜く。
魔物の正体は・・・?
規模は異なるが筆者も「外野があれこれ言う試合」に何種類か出場している経験がある。ここで思うことは、正直試合自体は「普通の試合」である。無観客なら猶更である。もはや練習試合と変わらない。そんな中で、外野が勝手にストーリーを組み立て、勝手に勝敗や大会について意味づけをして、勝手にストーリーを作り、勝手に放送して騒いでいる感じに近い。
スポーツ大会の試合や結果に意味づけ・ストーリー性を持たせたいのは観客・外野のメディアだけの可能性:対策法
ところで、「オリンピックには魔物がいる」という表現が良く使われる。どうやら使われ方を考えると、番狂わせが起きるということが多いかと思われる。いくつか記事を紹介したい。
彼女の演技を通して、オリンピックの魔物がいるのではないかと改めて痛感しました。演技後のコメントで本人も明かしていましたが、周囲の期待がプレッシャーとしてのしかかってしまったのかなと思います。
トランポリン森ひかるの失敗で改めて感じたオリンピックの魔物 2大会出場の上山容弘委員に聞く
「オリンピックには明らかに魔物が住んでいるのだから、開会式の入場行進では、もっとモンスターハンターの曲を流すべきだった」
日本勢いきなり波乱にネット悲鳴 内村、瀬戸敗退「怖い」「魔物がいる」【東京五輪】
この「魔物」の正体を明確に解説しているのは、元スピードスケート選手の黒岩彰さんだ。1983年に世界スプリント選手権で日本人初の総合優勝を果たし、翌84年のサラエボ五輪では金メダル候補として一躍脚光を浴びた。ところが、日本中が注目した本番の結果は第10位。日本にとって唯一の金メダル候補だった黒岩さんには当日のレース直前まで取材攻勢が続き、コンディションを維持することができなかったのだ。
ここで、考えてみよう。普段の大会には居ない魔物がオリンピックにはいる。試合自体は日本の大会や世界選手権などとそんなに変わらない。「普通の試合」最も異なるもの、すなわち魔物の正体は、メディアをはじめとした外野の煽りと関係しているのではないだろうか?
果たして「成功者」はどっち?
オリンピックの番狂わせが起きやすいのは上記の理由なのではないかと予想している。では勝利するための最適解は「勝つためには目立たなければいい」になる。しかしそんなことが出来るだろうか?わざと世界選手権でオリンピック出場ギリギリになるようにコントロールするのは難しいし、そんなことしていると出られなく可能性もある。
またメンタルのコントロールが出来ているのであれば、番狂わせは起きない。競技団体も完全な取材拒否は認めないだろう。そんなことをされれば、スポンサーにも降りられてしまう。要するにこの辺りをコントロールするのは難しい。メディアが推す選手は競技とは別の構造で動いている。
ところで、メディアがノーマークの選手でも、活躍してメダルを取ったりすれば、賞金がもらえたりする。その後インタビューなども一定期間は来るだろう。
一方でCMやスポンサーは再三のように別の構造で動いている。実際には競技の強さよりも、キャラやタレント性などが重要になる。さらにこちらの方が競技での成績による賞金や所属企業からのボーナスなどよりも金銭的には桁が多い傾向もある。
さらに競技で結果を出したとしても、結果を出した選手よりもメディアが中心に据え置く「注目選手」の方が、コメンテーター等引退後の仕事があること傾向も強くなる。それこそ容姿やキャラなどの競技以外の側面がより重視される。結果を出していても引退後がアレな人が多い中で。
五輪アスリートを待つ「第二の人生」…引退後の年収300万円台、正規雇用者5割の現実
この場合実際の結果よりも結果出しそうな雰囲気と本人のキャラ・タレント性・人気の方が大事になる。
果たして「アスリートの成功」とは何なのだろうか?