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公開日:2021年7月23日
更新日:2021年7月23日
コロナで出張がないため「今位しかやらないこと」を求めた結果、伝統工芸品などの風変わりな体験に行き着いた。
そんな体験教室も様々あり、変わった体験教室をめぐることとなっていた。30以上の体験教室・体験教室を通して得た考えをまとめておきたい。
世の中には様々な技術が溢れており、一見何ということはなさそうでも、応用範囲は大海のように広く、専門性は底なし沼のように深いのが常である。
体験教室は短い時間で、「やった風を味わえる」ように設計されている。よって該当の技術でやった感のあるコアな部分を体験できるようになっている。
体験教室を通して「にわか」の限りを尽くした考えをまとめておきたい。
体験教室の特徴
一般的な体験教室の傾向は以下のとおりである。
約1-2時間程度の時間制限
小さい基本的な作品
革新的な技術の基本的な部分
やった感が得られる
以上を踏まえて、考える必要がある。
体験教室は3種類
体験教室も大きく分けると3種類ある。以下の3つである。
- カルチャースクール・マダムたちの地域教室
- 観光客・インバウンド向け体験
- 職人たちによるアウトリーチ
それぞれ背景や目的が大きく異なる様子である。
1. カルチャースクール・地域の教室/工房
まずは、地域の体験教室である。カルチャースクールなどで、担当の人が見本を並べつつ開いているような形式。講師の先生は基本的に育ちの良さそうなマダムさん達が、どこかの協会などからライセンスや検定認定を取得し、趣味で開講しているような印象である。会場も公民館のようなところであったり、自宅のガレージなどであったりする。このため住所も住宅エリアであることが多い。技術や歴史などにはあまり詳しくないかもしれない。
プリザーブドフラワー(Flower Chell)
2. 観光客・インバウンド向け体験
日本文化の伝統工芸品を、特に観光客向けに特化させたタイプの体験教室。心なしか、「体験映え」・「インスタ映え」に特化している印象である。会場も特設の会場であったり、企業の販促体験ブースであったりと、商用色が強い。ガイドブックなどにも積極的に露出し、観光地に多い。伝統的な技術であるかは不明であるが、少なくとも工程は同じものである可能性が高い。
江戸切子 (創吉)
3. 職人のアウトリーチ
本業が職人で、その職人の技術を一般向けに体験教室として開催している講座。こちらは何代も継がれている伝統工芸の工房や町工場などで行われている傾向がある。ただあまりプロモーションや売り出しは得意ではなさそうな傾向を感じる。技術的には本物である。
銀のぐい飲み(日伸貴金属)
これらを表にまとめると、以下のようになる。なお個々の体験商品により大きく異なるので、あくまでも大まかな傾向である。
全体的にカルチャースクール系は「まずやってみて、そんなに背景や技術にはこだわらないで、ほんわかしたコミュニティを過ごしましょう。」、観光客向けのところは「何よりも観光!やった感とインスタ映え!」、職人の「これが本物の伝統の技術だ!」という傾向が感じられる。
体験内容も2種類
体験教室の分類だけでなく、体験内容も大きく分けて二種類ある。
- 技術を体験し、忠実に同じものを作る
- 特定の技術や技法を使って何かを作る
順に説明する。
a. 技術を体験し、忠実に同じものを作る
特に伝統工芸品などで多いのが、こちらの、忠実に同じものを自分の手で作ってみる体験である。伝統工芸品に多い。(例:組紐・鍛金・鋳造)
b. 特定の技術や技法を使って何かを作る
特定の技術や技法を使って、何かオリジナルなものを作るものである。絵を書いたり、彫ったりする場合に多い。(例:蒔絵・ガラス細工・フラワーアレンジメント)
前者は極論動作を経験するだけなので、個人のアートのセンスが入ってくる要素はほぼない。どちらかというと見て盗むスキルを活かしていくことになる。部活をやっていた人などは得意かもしれない。一方後者は、特定技術のみを提供され、個人で何をどのように使うか?を決める必要がある。後者の方がいわゆる絵心的なセンスが必要となる。まとめると以下のようになる。
これらを踏まえると、伝統工芸品を純粋に楽しみたい場合には、3-a, オリジナリティを出したい場合には1,とにかく映えたい場合には2辺りにするのが良いだろう。
体験教室のコツ
体験教室のスタンスを考える。
制約条件は絶対
上記の時間内に終わらせることや、基本的な技術のみで作品をまとめることは、体験教室における絶対的な制約条件である。これを曲げることは基本出来ない。たまに次のお客さんが来ていなければ延長できることもあるが、これは期待しないほうがいい。よって、使える時間と道具と空間はかなり厳密な制約条件になる。破ってはいけないスポーツのルールだと思ったほうが賢明である。
一方で年密な計画を立てることは難しく、PERT図やガントチャートなんかを書いている時間もない。よって早い段階で全体を把握して、何に時間がかかるのかを把握して、スケジューリングすることをおすすめしたい。計画8割実行2割である。いい計画になれば、うまくいく可能性は高い。(そして技術的なところは教室の先生が助けてくれる)。
郷に入りては郷に従え・餅は餅屋
体験教室は分かりやすく「やった風」が出来るようになっている。場合によってはその道何十年という方が、何も知らない人に説明をしている。(たまにそうでもなさそうなこともある。)
これはもう餅は餅屋である。素直に従おう。
更に職人さんたちは、何百人と例を見ているので、「これくらいまでならできそう」と初体験者の力量を瞬時に判断できる。無理はしないほうが身のためでもある。
体験者よ、大志なんて抱くな、小さくまとまれ!
「近頃の若者は、大志を抱かず、小さくまとまりおって。」という感じのお説教を受けることはあるが、体験教室に至っては、大志なんて抱かず、むしろ小さくまとまることをおすすめする。クラーク博士もびっくりだろうが、格言も状況によって変えるべきだろう。
体験教室で使われるものは、その道数年から数十年の方々が「これなら素人でも出来るはず。そして体験できる」というものを、厳選して数時間の体験パッケージに組み込んでいる可能性が高い。
それから特に技術的に逸脱をしようとしたり、難易度の高いことをしようとすると、まあ基本うまくいかない。少なくともそんなに器用ではない私は、難しいと体験教室の先生が言っていたことで試してうまくいった試しがない。それ以上の事であると体験教室のパッケージとしてのバランスが崩れる。
基本的には上記だろうか。具体的な方法や対策については別記事にまとめることとする。