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公開日:2021年11月12日
更新日:2021年12月15日
石川県金沢市でコーフボールの大会が開かれ参加する際に、旅行にスポーツやアート、食を積極的に組み合わせようという試みであるスポーツツーリズム・アートツーリズム・ガストロノミーツーリズムを同時に行うことになった。金沢でのツーリズム体験を例にまとめておきたい。
スポーツツーリズム
まずスポーツツーリズムの定義は次のようになっている。
スポーツツーリズムとは、スポーツを見に行くための旅行およびそれに伴う周辺観光や、スポーツを支える人々との交流などスポーツに関わる様々な旅行のこと。アジア有数のスポーツ先進国といわれる日本では、プロ野球やJリーグ、大相撲、ラグビー、ゴルフなどのスポーツ興行や、各地で開催されるマラソン大会など様々なスポーツが盛んに行われている。これらのスポーツ資源を生かし訪日外国人旅行や国内旅行の振興を図るとの趣旨で、2011(平成23)年に「スポーツツーリズム推進基本方針」が取りまとめられた。2019年のラグビーワールドカップや2020年のオリンピックが日本で開催されることもあり、官民を挙げて取り組みが始まっている。スポーツツーリズム JTB総合研究所
要するにスポーツをするために遠征したり観戦するための旅行と周辺観光を指す様子である。
試合をして観光をすれば、まさにこれに当てはまる。確かに多くのスポーツ、特に激し目の競技の場合お互いに競い合って消耗し、大量に食事をする。気分も高揚するし、観光には良いのかもしれない。
さて、今回はコーフボールジャパンオープンと日本代表候補練習会が開催された。詳細は日本コーフボール協会公式ページを参照されたい。
様子は北國新聞社にも記事を掲載いただいている。
【メディア掲載】北國新聞社コーフボールジャパンオープン 日本コーフボール協会
アートツーリズム
公的なページが見当たらなかったが、アートツーリズムの定義は以下のようになっている。
「アートツーリズム(Art Tourism)」とはなんでしょうか。三省堂『大辞林』によると「美術館などの展示施設や野外彫刻などの芸術作品を巡ることで地域の文化に触れる観光活動」アートツーリズムとは
地域の文化にふれればよい様子。こちらはアート・芸術と観光の組み合わせである。伝統工芸品の体験をすれば要件は十分満たすはずである。そこで体験したのは加賀友禅染と金箔貼りの二つ。
加賀友禅
加賀友禅(かが ゆうぜん)は、日本の着物の染色技法である友禅の一つ。その名の通り、加賀国(現・石川県南部)の経済産業大臣指定伝統的工芸品で、現在も金沢市を中心に制作・販売されている。源流は、室町時代に加賀国で行われていた無地の梅染めにある。江戸時代中期に加賀藩にて栄えた加賀御国染を基に、京友禅の創始者といわれる絵師の宮崎友禅斎が晩年、金沢の加賀藩御用紺屋棟取であった太郎田屋に身を寄せ、加賀御国染に大胆な意匠を持ち込んで確立した染色技法と、その作品が現在まで続く「加賀友禅」である 。加賀五彩(藍、臙脂、草、黄土、古代紫)と呼ばれる艶麗な色彩で知られ、特に紅、紫、緑系統の色を多用する。柄は、図案調の京友禅に対して草、花、鳥等の絵画調の物が多く、自然描写を重んじる中から「虫喰い」等独自の装飾が生まれた。「ぼかし」も京友禅以上に多用される傾向にある。金沢市内を流れる浅野川では、工程の最後の方に、余分な糊や染料を洗い流す友禅流しが見られることがある。加賀友禅 Wikipedia
加賀友禅染の体験では多くの工程のうちの絵付けの部分を体験した。加賀友禅工房 長町友禅館
約20の柄と5色の布から好きなものを選ぶ。
絵の線は糊で書かれており、一定の量であれば染料の侵入が止まるようになっている。
染料に水を混ぜ、水の量で色を決める。
色も混ぜると中間の色が出来る。色が決まったら糊を混ぜて布に塗る。
グラデーションにするには、薄い色を先に塗り、乾く前に濃い色を乗せることで、濃度が濃い方から薄い方へ拡散していく。糊の量が少ないと線から染み出してしまうので注意が必要。
浸透と濃度による拡散を利用して色を付けていく形である。この後煮る工程で糊は溶け出て、染料のみが布にしみこみ色が付く。
数週間後に郵送されてきた完成品を額に入れ、壁に飾ったところ「巨匠の傑作」のようになってしまった。
金箔貼り
「金沢と言えば金箔」といっても過言ではないほど至る所で金箔を見かけた。コンビニでも金箔パック、金箔入浴剤と金箔コーナーがあった。(実際買ってしまった。)
そんな金箔貼りの体験を行った。かなざわカタニ
まず、黒い皿にシールを張る。
シールの部分に漆を塗る。
ぺっらぺら 確か説明では0.0001mmの金箔をひらッと漆を塗ったシールのところに乗せる。
金箔を押し付ける。
シールを剥がし、ラメを塗り、コーティング加工をして完成。
何ともあっけなかった。(仕上げは講師の方にやっていただいた)
前者の加賀友禅染は伝統工芸的な本格的な体験で、後者の金箔貼りはお手軽にできるタイプの体験であった。後者はこのようにお手軽にできることが売りのようで、修学旅行生が多く参加していた。
実際私も学ランの高校生たちの隣で真剣に金箔をはっていた。
ガストロノミー・ツーリズム
ガストロノミーツーリズムは、スポーツツーリズムやアートツーリズムよりは馴染みのない言葉かもしれないが、定義は以下のようになっている。
ガストロノミーツーリズムとはその土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史などによって育まれた食を楽しみ、その土地の食文化に触れることを目的としたツーリズムで、欧米を中心に世界各国で取り組まれています。ONSEN ガストロノミーツーリズム
ガストロノミーは日本語訳では美食学とも呼ばれる分野であり、上記の定義から行けば「旅行をして現地の名産品を食べる」ということで成立しそうである。(普通の旅行じゃないか!)
金沢は海の幸が豊富で、ガストロノミーツーリズムに適していた印象である。
香箱蟹
金沢市内で「今年は11月6日に蟹が解禁」という宣伝文句を至る所で見かけた。この「蟹が解禁」とは何だろうか?調べると以下のようにある。
石川県のカニ漁の解禁日は毎年11月6日で、同日深夜0時に船から網を投げ入れスタートします。11月6日の夕方には漁を終えた船が金沢港に戻り、カニの到着後すぐに競りが始まります。金沢の冬の味覚の主役であるカニ競りは、市場内に緊張が走り、セリ人たちの間にピリピリとした雰囲気が漂います。毎年、石川県民もこの時期を心待ちにしており、金沢の街中はカニを求める人々で賑わいます。香箱ガニの漁期はとても短く、11月6日~12月29日と2ヶ月未満なので、食べられる時期に限りがあります。また、2020年度より、甲羅が8センチ以上のものは「金沢香箱」という名でブランド化されることになり、専用のタグを付けて出荷されます。金沢のプレミアムな冬の味覚となりました。11月6日北陸のカニ漁解禁!金沢港で揚げられる希少な「香箱ガニ」を【金沢回転寿司 輝らり】全店舗にて販売開始!
石川県のカニ漁では11-12月の2カ月未満のみでしか味わえないために盛り上がっている様子。なんだか毎年のワイン解禁「ボジョレーヌーヴォー」のようである。
ズワイガニ漁は6日解禁され、金沢港で行われた初競りでは、形が立派でサイズが大きい「輝」というブランド名が付いたオスのズワイガニ1杯に、過去最高値となる500万円の値段が付きました。
ということでいかにもな感じの居酒屋で金沢香箱蟹。
香箱ガニのジュレ漬け
おいしくいただきました。
のどぐろ
金沢の魚と言えばのどぐろ。
のどぐろは、白身魚でありながらも淡白ではなく、とろけるような脂の旨みをもつことから「白身のトロ」と呼ばれています。全国に漁場があり、特に知られているのは島根や長崎、そして石川県です。石川県内には多くののどぐろ店があり、なかにはメディアに取り上げられている有名店も。観光客がのどぐろを求めて訪れることもあり、地元へ根付いた魚となっています。「のどぐろ」の旬はいつ?金沢の美味しいお店10選を大公開
のどぐろの一本焼き
桶盛
日本海の刺身は、桶に盛られる「桶盛」という形をとられるそう。こちら。人数によって豪華さが変わってくる様子。
海鮮丼
ビジュアルで最も感銘を受けたのがこちらである。金箔海鮮丼。金沢下堤町 加賀能登海鮮丼一番星 | 元祖!“一番星金箔丼”
店長によると、まず金箔を破らずに写真を撮る。
次に金箔を破って写真を撮る。これにより金の角度がランダムになり反射光の量が増えて、よりインスタ映えする様子。確かに。
味は甘エビが甘く、ウニも全く臭くないという非常に新鮮な海鮮丼であった。
会席料理
どこかで読んだ気がするが、「金沢には割烹と料亭が多く会席が盛ん」との記述があったために会席料理を食した。料理旅館金沢茶屋
会席料理とは以下のとおりである。
会席料理(かいせきりょうり)は宴会や会食で用いられるコース形式の日本料理。連歌や俳句の会席で、本膳料理を簡略化したもの。 献立に従って、一品ずつ食べていく「喰い切り」のものと、宴会時の配膳方式のものと2種類の傾向があり、いずれも一品料理ではない。会席料理の献立は、一汁三菜が基本である。現在の三菜は懐石にならい、刺身・膾、吸物・煮物、そして焼物・焼魚とすることが多い。さらにお通し・揚げ物・蒸し物・和え物・酢の物などの肴が加えられ、最後に飯・味噌汁・香の物、水菓子となる。
献立の例
先付(さきづけ)・・・ 前菜
椀物(わんもの)・・・ 吸い物、煮物
向付(むこうづけ)・・・ 刺身、膾
鉢肴(はちざかな) ・・・ 焼き物、焼魚
強肴(しいざかな) ・・・ 炊き合せ等
止め肴 ・・・ 原則として酢肴(酢の物)、または和え物
食事 ・・・ ご飯・止め椀(味噌汁)・香の物(漬物)
水菓子 ・・・果物ご飯、止め椀、漬物は同時に供される。ただし上記以外にも油物(揚げ物)や蒸し物、鍋物が出ることがある。油物が供される場合には一般に強肴のあとである。飲み物は基本的に日本酒、または煎茶である。近年はほうじ茶やコーヒーが出されることもある。明治時代以降は肉も出される。シチューなどの洋食の皿が交えられたり、デザートとして洋菓子が供されたり、ご飯の代わりに蕎麦やうどんが出されることもあり、上記のような献立の流れに必ずしもとらわれるものではない。以下に料亭や料理旅館で供される一般的な流れを記す。なお、店によって若干の違いがある。
要するにハレの日のごちそうコースということで間違いはなさそうである。
会席では、お品書きの通りに9回運ばれてくるために各写真は省略する。しかしこちらにも蟹がおりました。蟹は期間限定だから食べておかないと!と思っていたら4日で3回食べていた。
それにしてもこの会席料理は個室であったが、仲居さんが、丁度食べ終わったころに部屋に入って新しい料理を運んできてくれた。この「丁度加減」が、実は部屋に隠しカメラが付けられていて監視されているのか?と思ってしまうほどであった。
余りにも正確なので、思わず仲居さんに「監視カメラがあるのか?」と聞いてしまったが、どうやら客の雰囲気と最初の1皿目辺りのペースを見て「そろそろ食べ終わるころだ」と感覚で時間を予想して持ってくるという結構な職人技であることが判明した。ボクサーが3分を感覚で測れるのと同じだろうか。
いずれにせよ有意義で貴重な体験であった。
ミギカレー
朝食を探しにふらっとカフェに行ってみた。
カフェでモーニングか、モーニングカレーセットが選べることが判明した。
そして店内を見渡すと、軒並みカレーを食べている人が多くいた。更に「ミギカレー」という謎ワードのカレーがあった。
とりあえずこれを注文してみることとした。
ミギカレーとはハヤシライスとカレーのコラボで、読んで字の如く向かって右側にカレーが掛かっちょるもんでミギカレー。
丸皿の中央にライスが帯状に盛られて向かって右側がカレーで左側がハヤシライス。
しかも朝はミニサイズで提供されるみたいやわ、ランチではもう一回り大きいお皿で提供されるみたいやわ。
トッピングとしてヨーグルト、スティックきゅうり、ゆで卵、小倉餡、ジャム、カレーの6品の内1品を選べるもんでヨーグルトをチョイス。
右がカレーで左がハヤシライスであった。
「名古屋ではカフェでモーニングの小倉トーストを食べる」ように「金沢では朝からカフェでカレーを食べる」という説明であったが、体験教室などで伺う限りでは「朝からカレーを食べることはない」とおっしゃっていた。
しかしながらこの記事を書いている間に「ミギカレー」の説明を探している時に判明した。ミギカレーで検索してヒットするのは、この「喫茶めるつばう」だけであった。どうやらカレーが有名な店なので、周りもモーニングからカレーを食べていたというだけで、金沢は、名古屋のカフェモーニングのようにカレーを食べるわけではないことが分かった。土地勘がない場合の特異的勘違いの最たるものであった。
ツーリズム
観光地を観光するのにも名前が付いていそうであるが、探したところ特になかったのでツーリズムとする。時間の関係で金沢城公園と兼六園のみを廻った。
松島・宮島・天橋立の「日本三景」と間違えそうだが、兼六園・後楽園・偕楽園の「日本三名園」のひとつ、と古典向けの便覧資料集か何かに書いてあった気がする。
玉泉院丸庭園がライトアップされていた。思わずドローンを飛ばしたくなってしまった。
詳細な説明や写真画像等は各種検索と公式サイト等を参照いただきたい。
「〇〇ツーリズム」は元々あったのでは?
旅行してスポーツしたり、美術館行ったり名産品を食べたりするのは何も今に始まったことではない。古典や和歌にも地方の絶景の話などがいくらでも出てくる。上の日本三景や日本三名園もそうだろう。
よって「〇〇ツーリズム」はマーケティング用の単語のようである。調べてみると「ニュー・ツーリズム」と新しいツーリズムとして売り出しているようである。(実際は新しくない)
ニューツーリズムについては、厳密な定義づけは出来ないが、従来の物見遊山的な観光旅行に対して、テーマ性が強く、体験型・交流型の要素を取り入れた新しい形態の旅行を指す。テーマとしては産業観光、エコツーリズム、グリーン・ツーリズム、ヘルスツーリズム、ロングステイ等が挙げられ、旅行商品化の際に地域の特性を活かしやすいことから、地域活性化につながるものと期待されている。一方、こうした強いテーマ性を持ち、新たな国内旅行需要や旅行スタイルを触発する旅行商品化への取組みや、旅行商品流通システムの創出もニューツーリズムの概念として位置づけることができる。即ち、新たな旅行分野の開拓のため、地域密着型のニューツーリズム旅行商品の創出・流通を包括した新たな旅行システムの構築全体を指すものである。https://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kankochi/pdf/ikiiki2009_05.pdf
「あたらしいツーリズム」とは:コロナ対策の徹底と魅力的な滞在コンテンツ造成を目指す
観光庁は、感染対策を徹底してより安全で魅力的な観光イベントや観光資源への磨き上げを行う「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」実証事業を進めており、安心・安全な観光事業の先行モデルの形成を目指しています。「あたらしいツーリズム」は、新型コロナウイルス対策を徹底した、魅力的で安心・安全な観光の実現を目指すもので、観光庁の「あたらしいツーリズム運営事務局」が選定しています。https://honichi.com/news/2021/02/26/newtourism/#newtourism-1
「ついで」が肝心
一般的に、旅行において費用が高いのは交通費と宿泊費である。他の費用は基本この2つと比べると安くなる。ここで「せっかく行ったのだから」といろいろと体験を積んでもらうのが効率的な体験であろう。
特にスポーツ・アート・文化体験辺りは、2つ以上を同時に行われることが少ない印象があるので、この辺りの組み合わせを考えて大会やイベント・協賛の設計を組み立てると新たな発見があるかもしれない。