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公開日:2020年10月31日
更新日:2020年10月31日
定期的に出てくる経歴詐称。最近もまた話題になっていた。
これについて傾向をまとめていきたい。なお意図的なミスリード誘発もこちらに含めることにする。大きく分けると、学歴・職歴・実績であろう。
進学関係
卒業・修了
大学の終わり方はいくつかある。卒業・修了以外にも、中退、除籍処分など。
しかし実際には卒業が出来なくて中退していたり、日本では単位取得退学のような状態でも「修了」という例。
すなわち、底辺大学の教員で「博士」でもないのに「博士課程修了」って名乗ってる連中は、「博士課程単位取得満期退学」の「退学」っていうワードが恥ずかしいから、博士課程を修了してないくせに「博士課程修了」って勝手に名乗ってるわけよ。いいかい、もう一度念を押しておくけど、それは明らかに学歴詐称だからね。
東大大学院卒
いいか悪いかは別として、特に日本では、どこの大学の学部に入学したか?が指標になる傾向にある。逆に言えば、大学院以降は気にされないことが多い(実際に定員が割れていたりする例もあって、極論希望すれば入れることもある。特に博士課程)。東京大学ですら例外ではない。その中で、かたくなに東京大学大学院修了という方もいる。一般的に現状の日本での傾向では、大学の学部が指標になりがちである。それをどうにかして隠したいということであろう。これに関係して学歴ロンダリングという単語まで出て来ている。(これがあったので以前は私も慶應義塾大学・工学学士・工学修士、といちいち学部も書いていることもあった。)
実際に「・・・?話が通じない???」と感じた方がおり、ちょっと調べてみたら、いわゆるFな感じの学部卒であったこともあり、妙に納得した覚えがある。
医学部卒
医学部にはいくつかの学科がある。しかし一般的に「医学部卒」というと医学部医学科卒を連想させる。このミスリードを狙って医学部卒を押す。医師免許が取得できるのは医学部医学科だけである。しかし医学部には別の学科も存在する。例えば医学部保健学科。
ネットの情報によると、この方、1964年に奈良県でお生まれになり、医学部を志望して6年浪人されたのち東京医科歯科大学保険衛生学科に入学、看護学専攻の4年制を1993年に卒業されたということですから、29歳で看護師の資格を取られたということと思います。
通信制
コロナの影響で全員通信制みたいになってはいるが、現状の大学では普通科や夜間・通信制などいろいろある。しかし一般的には「昼間普通科」を指す。そして競争が激しいのは昼間普通科だろう。そこで通信制に入学し、普通科を偽る。
留学
留学関係はミスリードが多い。そもそも留学の定義は何か?という話である。一般的に「留学」と言って予想されるのは「正式に入学し、学部や修士や博士などの過程を終えて、卒業・修了する」である。
しかし実際には、夏季の講座等いろいろある。場合によっては1日体験授業に参加しただけとかでも「ハーバード大学留学」とかはよくある。オンライン授業なんかでも。いろいろ。
これはこれで「夏季の講座の学生やマスターコースの学生は金稼ぎコース」と大学が位置付けていることもあるので、利害は一致しているようである。ただ個人的には夏季講座などは経歴にはならないと思うが・・・?
ケンブリッジに留学
個人的にはこれは何回か見かけた。イギリス・ケンブリッジ州には、ケンブリッジ大学だけではなく、いくつか学校が存在する。特にアングリア・ラスキン大学ケンブリッジキャンパスという別の大学があり、ここに在籍している人も「ケンブリッジに留学している」と言っている人を見たことがある。
Cambridge campus – ARU – Anglia Ruskin University
ポスドク・フェロー・研究員
細かい話であるが、ケンブリッジ大学には、Junior Research Fellow (JRF)と呼ばれる倍率数百倍の採用されるだけでも相当なポジションがあった。関係者界隈では「フェロー」と言うと、多くはこれを指していた。その状況の中で、いわゆる「ポスドク」の人も、フェローを名乗っているなど。ポスドクであるはずなのだが、ポスドクと言いたくないからなのか「フェロー」と、かたくなに主張する例があった。
特任准教授・特定助教・特別研究員
これらもなんだか強そうな名前ではあるが、実態はいわばアルバイトであることが多い。
東大の「特任」は把握できないほど多い
10月15日放送のフジテレビの「とくダネ!」に出演した医療ジャーナリスト、伊藤隼也氏は、「知人の東大医学部の教授に聞くと、『特任』と付く人は多すぎて把握しようがないと答えた」とのエピソードを披露した。「特任」も「客員」に似て、「特別に高い地位」というわけではなさそうだ。
聴講生・客員研究員・訪問研究員・協力・上席等々
研究員関係は、なんだかいろいろな名前がある。
一方で、これまで名乗り続けてきた米ハーバード大学客員講師という肩書きは、「うそではない」と主張を曲げていない。この「客員」という身分は、米国の大学では比較的簡単に得られるようだ。 そもそも「客員」とは、どういう立場なのか。10月15日放送の「やじうまテレビ!」(テレビ朝日系)では、文字通り「お客さん」として大学に招かれる人を指し、非常勤で年1回の来校でも許されると解説。ガッツ石松さんや桃井かおりさんのような芸能人が「客員教授」を務めた事例を紹介した。
場合によっては、雇われている・職業どころか、むしろ逆にお金を払って在籍させていただいているだけという、高額オンラインサロンのような形態の場合もある。
SFC研究所受入れ研究者(上席所員・所員)とは
SFC研究所(以下「研究所」という)における研究活動に参加させる目的で、受入責任者からの申請により、研究所が受け入れる研究者です。
■上席所員
修士の学位を有するかまたはそれと同等以上で、自律的な研究者としての経験・実績を認められた者
■所員
大学卒業またはそれと同等以上で、研究者としての経験・実績を認められた者
【登録料】
50,000円(年間)⇒前期(4/1-9/30)、後期(10/1-3/31)いずれかの場合は25,000円
これらは元々名前が似ているが、そのような制度なので、そのままを説明すれば問題はない。しかし問題になるのはお金を払って居させていただいている、というのではなく大学の正規の教員として振る舞うのが問題視されるというだけである。
私も修士修了後ドイツにDAADという奨学金をもらい「客員研究員」をやっていた時期がある。ただこれはドイツ関係の話をするとき以外では、まあ出すことはない。隠しているわけではないが、全く重要ではない認識である。
企業・就職系
上記のようなよく話題に上がる大学関係だけでなく、他にもいろいろ存在する。
雇用形態
よく知られるように、雇用形態には主に正社員・非正規社員があり非正規社員が正社員を偽ることは散見される。子会社の社員が親会社の社員を自称するなど。派遣社員や業務委託でも、知名度のある企業の正社員を名乗ったり。凄いものだと、孫会社の派遣社員が親会社の総合職を名乗るなど。
実績系
業界も多種多様。実績も多種多様。詐称も多種多様である。
「起業した会社を売却した」といっているが、実際にはただ倒産しただけなど。
純利益ではなく年商という。「フリーランスのエンジニア」等にも多い様子。なんだか私が認識しているフリーランスは「業界でも有名すぎて、強すぎて1つの組織に収まらない人が参与のように参画する感じ」かと思っていたが、最近ではなんだか違ってきているようである。
お金を積めば、誰でも出来る自費出版を商用出版と偽る。
捕食学会(実績作りのための杜撰な学会)での発表を正規の方の似せて作った本物の方の学会の発表と偽る。
官報にも載る「自己破産」。その事実をひた隠しにする等。
「ベンチャー企業」というのも、これもSNSなどの雰囲気だけで、実態は中小・ブラックな状態を正当化しているだけのことが散見される。
元プロサッカー選手とかも、あるあるかもしれない。一般認識だとどうだろうか?プロサッカー選手と言うと、海外クラブやJリーグでもトップ選手・日本代表の選手辺りを思い浮かべないだろうか?プロの定義が「プレイに対して対価が出る」という意味では、年収が1円でもプレーに対して費用が出ていればプロはプロである。
日本代表などでもいろいろある。(なんかこれは人のことを言えたもんではないかもしれない。ただオリンピックなんかでも定員割れしているスポーツなんかもあるので、それよりはマシかもしれない。いやむしろ定員割れでもオリンピックブランドには価値があるのか・・・?)
手が込んでくると「表彰している団体が、被表彰企業の株主」のような何団体かでつながって、手の込んだ一見では自作自演に見えないタイプのステマなんかもある。
SNSは規約違反ではあるもののフォロワーは購入できる。例えばこちらのページ。https://social-market-jp.com/
ホワイトハッカーとして述べると、購入しなくてもそんなに複雑ではないプログラムで作成で出来る(検索してみてほしい)。なお筆者はCertified Ethical Hacker(CEH), 認定ホワイトハッカーの資格を取得しているが、これも詐称ではない。
他にもお仲間のアカウントでひたすらリツイート・引用していっぱいいるかのように見せかける等。
人は何を見ているのか?
経歴から何を見ているのかと言うと「何を学んだ」だけでは自称であるため宛てになりにくい。よって経歴を見て「客観的に見てどの程度の人か?」を測っているということなのだろう。これだから客観的に難しいと認識されているものを突破している人材に価値を感じるということである。専門性にしても、専門分野において、どの程度の位置にいるかで大体の能力が予想される。様々なファクターの中で、関わっているものが多いのは学歴・職歴であるためにこの辺りに対する詐称が目立つということである。
そして各ヒエラルキー上位の方が露骨に得をする仕組みになっている。
何事にも「選ばれる側」に回るべきという話 -キャリアの機会や付加価値・リスクの観点から-
詐称の何が問題か?
詐称の何が問題なのか?例えば以下の状態を考えてほしい。
スーパーで国産牛肉と表記されていて、実際に中身は海外の豚肉。でも値段は国際牛肉だった。
これは詐欺に見えないだろうか?これと同じ状態である。おそらく他人の目を欺こうというスタンスがまず問題で、嘘でなくても限りなく黒に近いグレーな表現を用いて、実体以上に大きく見せようとしている・盛ろうとしているという姿勢に対して問題がある。
(なおこの画像はphoto ACから拾ったフリー素材「パックに入っているアメリカ産ステーキ用牛肉(背景木目)」である)
ハロー効果の、後ろからの威光の部分だけで中身は無いということか。逆に詐称している方々の典型的な盛らない場合の典型的な経歴はこんな感じになるのだろうか?
ぱっとしない学校を卒業し、ぱっとしない仕事を始めるがついていけずにすぐやめる。その後も基本ぱっとしない能力と実績で、辛うじて法人登記して起業した。(登記もしていないかもしれない)。そんな「成功者」の「成功」セミナー
・・・確かに、これでは誰も聞きたいと思われないだろう。
要するに詐称しなければ見向きもされないために、詐称してみたらめっちゃ注目されて麻薬のように病みつきになりやめられなくなった、ということだろうか。
個人的には仮に自分を大きく見せたとして、実力以上に扱われても、結局苦しくなるのではないか?と感じる今日この頃である。
詐称と疑われても問題ない方法:学歴/経歴詐称と調査確認されても問題ない大丈夫で実践的な方法
ついでに逆詐称みたいなのまである:TOEICの点数すら無い30歳社会人経験無しの無職が、外資系企業に就職し、すぐに昇進し、グローバルプロジェクトに参画するようになった話