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公開日:2017年9月25日
更新日:2020年6月3日
日頃から分野や部署・業界によって、それぞれ「人種」が異なるのは、皆さんが感じていることかと思います。
こちらの記事でファッションショーと国際学会の差を比べました。
込み入った状況になる方が、各特色をよく示すのは明らかです。
これを見るためには、全国レベル・国際レベルのカンファレンスや大会が有効です。
思えば、ここ数年で全国レベルの大会や、世界大会では出る機会が多かったので、そのような環境を見比べる機会は多くありました。分野によって流儀や傾向が全く違うことに対して、思い当る節が、結構あるので、ちょっとまとめてみることにしました。
競技者・参加者として
自分で参加した感想です。
マインドスポーツ ドラフツ
ドラフツは、日本では特にチェッカーとして知られているチェッカーボード上で行われるボードゲームです。
頭脳の戦いはマインドスポーツ(頭脳スポーツ)と呼ばれるカテゴリーがあります。
その中でもこのドラフツは、将棋や囲碁と同様に、二人零和有限確定完全情報ゲームというカテゴリーに含まれます。
運の要素が全くないため、数学的なモデルが組み立てやすいために、数理的な研究も盛んにおこなわれています。
実際にドラフツでは、お互いが最善手を指した場合には、引き分けになることが数学的に証明されています。
日本代表としてラトビア・リガで行われた国際大会に出場しました。
棋譜を登録し、オンラインで閲覧できるようにしています。
大会形式はスイス式トーナメント・レーティング方式。お互いのレーティングで、同じくらいの強さの人が戦うようにできている仕組みです。
中学生にもボコボコにされました。まあ、漢字も読めない外国人が日本の将棋大会に参加したようなもの何で気にしないでください。
会場は、ものすごく静か。これは、おそらく集中している競技者を邪魔しないためで、入り口にも「静粛にお願いします」という書き込みがある。
服装は、楽そうな服が多い。総じてあまり気にしていない。
参加している人たちは、なんとなく落ち着いている印象を受けます。所謂優等生な、いい子。
マインドスポーツ ポーカー
ポーカーはトランプを使ったゲームです。こちらも大枠ではマインドスポーツ(頭脳スポーツ)にカテゴライズされます。
実際にカジノで行われるのでギャンブル要素が強そうに見えます。実際は、数学的な確率投資ゲームです。
大体、運が3割、実力が7割くらいと言われています。
会場設定は、数字が分かりやすく大きく書いてあるパネルがあります。
これは、チップカウントや人数、残り時間で、戦略が大きく変わるためです。
個人的には、イギリス学生選手権本選に出場しています。
ポーカー学生選手権ヨーロッパ・イギリスUKSPC 「参加費/世界」
会場は、カジノ内でやることが多いので、ワイワイ・ガヤガヤしています。酒飲みながらやっている人も多い。
服装は、様々ですが、フード付きパーカーとサングラス、ヘッドフォンなどが多い。少なくともドラフツよりは気を使っている印象。これはポーカーの競技の特性上、相手にブラフ(嘘)がバレないように、フードでオーラを消し、サングラスで目線を読まれるのを防ぐためです。
見てみるとわかりますが、フィーチャーテーブルというテレビ中継が行われるテーブルもあります。このこともあって、ちょっとおしゃれ?なのかも。
チップのシャッフル音もあれば、お互いに話したりもしています。
カジノのせいか、どことなく柄が悪い?入れ墨の人も多め。
球技・スポーツ コーフボール
本ブログでは、あまり説明は不要かもしれませんが、コーフボールは、バスケットボール系のチームスポーツです。
オランダが発祥で第二のオリンピックとも呼ばれる、ワールドゲームズの正式種目です。
スポーツ大会の服装は大体チームジャージかパーカー等スポーツウェア。もちろん試合前後はユニフォーム。
廊下等でも、試合前後に走ってアップしたりなど。
ストレッチしている人も多数。
スポーツ会場なので、声援が多い。
スポーツは全体的に体がデカい・強い。(もちろん競技による)。
水分補給のボトルを持っている人も多い。
イギリスのインカレ本選、ケンブリッジ州選抜・アジアの大会に出場していますが、飲み物の種類など細かいところは違いましたが、どこでも同じだったので、やっぱり同じなんでしょう。
デザイン・デジタルアワード
デザインは、ウェブサイトやアプリの表彰式です。
ウェブサイトやアプリというのは、目に見えるモノなだけあって、表彰式も演出などもしっかりしていました。
http://thedigitalawards.co/one-week-until-cda2015-at-burgess-hall/
服装も表彰式・レセプションという、お祭りに来ているという認識が多いようで、フォーマルな格好が多い。
これは表彰式一般でしょうが、タキシードなどのドレスコードもあります。
欧米式の表彰式・年間アワードセレモニー【オスカー/コーフボール/受賞/表彰状】
国際会議・国際学会
学術系の集まりです。いわゆる「学会」というやつです。
もちろんこれは、分野の影響を非常に受けます。
よく言われているところでは、企業とタイアップするような分野は、よりフォーマルになっていきます。
私は電池物質の化学的なものと、物性物理学のものに参加経験があります。
実際化学・工学的な分野はスーツ率が高かった。対して、数学・物理は本当にTシャツの世界。
もちろん私は参加していませんが、国際サミットのように政治が関わってくると、今度は付き人が多くなって護送船団同士の動きあいのようになるようです。(参加者に聞きました。彼ら的には小規模の国際会議くらいの方が、気楽でいいんだとか。)
アントレプレナー・イノベーションチーム
innovation team i-teamという学内起業関係の組織で、途上国のスラム地域の水質開発のプロジェクトリーダーを担当させていただいたことがあります。(現在では、私は関わっていませんが、今も発展は続けています。)
明らかに、興味を持つ部分が違う人が混在している状況でした。
貧困解決のNPO関連の人は、これを行うことで、どれだけの人が救われるかという部分に興味がある一方で、投資家などは、どれくらいの利益が上がるかどうかに興味があるというのが雰囲気や会話内容でも伝わってきます。
服装はもっぱらスーツ相当でした。
パブリックスピーキング・3MT thesis Falling walls
私は3分トークを始めとして何度か登壇していますが、分野外向けの発表会です。
3分プレゼン/スピーチのコツ!ネタや構成,スライド,文字数まで
分野外の人に説明するということもあって、詳細な込み入った説明よりも、ざっくばらんに「こういう感じ」という説明が増えるので、どちらかというとトーク・ショーです。
順位を決めるものと、決めないものでは、少々空気のピリピリ感が異なります。
服装は、どことなくフォーマル寄り。襟はあるといった感じです。
参加者は様々ですが、3分トークの場合は、対象が大学院生であったため、国際会議と同等でした。
観客として
ここからは、観客として傍観していた感想です。
ファッションショー・ロンドンコレクション
ファッションショーは、流行の最先端、むしろ流行を作っている領域です。
サングラスかけたくなるくらいには派手。スタイリッシュ。
もはや見た目に命を懸けている感じ。会話も、どうかっこいいか、等に注目が集まっています。
雰囲気も、お祭りに近い。
フォーミュラー1 モナコグランプリ
人類催促の戦いF1。しかも聖地モナコ。お祭りで参加しているセレブ系の人と、メカに興味がある人が大きく分けて2ついたように思います。
服装は、キャップと、レーサースーツ?
連れの方は、つまらないのか、イベントブースにいらっしゃいました。
レース場と、イベントブースで明らかに雰囲気が違う。
F1-フォーミュラ1-は思ったよりも速かった。モナコGP 旅行記
映画 カンヌ国際映画祭
フランスはカンヌ。国際映画祭。
会場内には入っていませんが、それでもなんとなく雰囲気は分かりました。
服装もファッションショーやレセプションに近い。
カンヌ国際映画祭 -レッドカーペットは思ったよりも赤かった- 旅行記
これらを踏まえて
共通部分
共通する部分は、もちろんあります。
真剣
形は違えど、皆さん大真面目に、真剣に取り組んでいるのは、雰囲気で明らかです。眼が違う。
同時に、それぐらい真剣にやらないと、分野・業界内で上位には来られないというのも、また事実です。
同窓会
同分野の大会に参加するのは、大概同じ人たちなので、お互い知り合い率が高くなってきます。
個人的には、国際学会では、「前回フランスの学会でお会いましたよね?」ということがありました。
コーフボールでもオランダの大会に出場していた際に、イギリス人に「ケンブリッジの77番の人ですよね?」と聞かれたりなど、分野の狭さを感じます。
これは、どの集まりでも同じ可能性が非常に高いです。
「ステレオタイプ」も間違ってはいない
業界ごとに傾向があるというのは、まさにステレオタイプそのものです。
よって、ステレオタイプもあながち間違えてはいません。
ただ、ステレオタイプは、全体の平均・中央値的な部分が多いので、完全に当てはまる人はなかなかいないでしょう。
スポーツにおいて体格は大きな要素なので、でかい人の方が強い競技なら大きい人が生き残るでしょう。
生物の進化論のように、自然最適化されていくんだろうか。
「現象には必ず理由がある」ではないけれども
福山雅治さんの湯川学先生「現象には必ず理由がある」ではないですが、各業界の「奇妙な」習慣には、合理的な理由があります。
ガリレオ名言・格言3位:『全ての現象には必ず理由がある』
ポーカーなんて、比較的薄暗いことが多いカジノ内でサングラスですが、「目線で嘘がバレないため」というのが理由です。
数学や物理の人に「なんで服装、シャツなんですか?人前に出るんだから…」
と言ったら恐らくこういう感じの返事が来るでしょう「服装?発表内容には関係なくない?」
彼らにとって重要なのは、発表、というよりも「現象の中身」です。
もちろん、内容を分かってもらうために分かりやすく説明するというのは重要ではありますけれども…。
デザイナーが穴だらけでくたびれた服装だったらどうかと思われても無理もないでしょう。
廊下で走っているのか?ウォーミングアップの重要性について。パフォーマンス如実に変わります。
ついでに試合後に、靴を脱いだり・ストレッチをしているのは、クールダウンと言って、回復力に違いが出ます。
分からないことを、分からないこと、と知っていることの有効性
ここまで書いていて、ひとつ思ったのはソクラテスの「無知の知」です。
無知の知
他人の無知を指摘することは簡単であるが、言うまでもなく人間は世界のすべてを知ることはできない。ギリシアの哲学者ソクラテスは当時、知恵者と評判の人物との対話を通して、自分の知識が完全ではないことに気がついている、言い換えれば無知であることを知っている点において、知恵者と自認する相手よりわずかに優れていると考えた。また知らないことを知っていると考えるよりも、知らないことは知らないと考えるほうが優れている、とも考えた。
知らないということを知っているということは、知らないということを知らないよりも、モノを知っているということです。
孔子も似たようなことを述べています。
知らざるを知らずと為す是知るなり
アインシュタインも似たようなことにふれています。
常識とは、18歳までに身に付けた偏見のコレクションである。
Common sense is the collection of prejudices acquired by age eighteen.
いろいろ引用しましたが、自分の常識は、相手の常識ではないのは明らかです。
重要なことは、レスペクトを持つこと
自分には明らかに見たことがない奇妙な方法がとられていたり、逢ったことがない状況になることはままあります。
それをあたかも、「こいつらは変な人間だ」と決めつけて嘲笑するのはナンセンスです。
相手も人間です。いきなり馬鹿にされたら、いやな気分になるでしょう。
気になったら聞いてみればいい。純粋な興味で「それって、どういうことですか?」と聞いたら、答えてくれると思いますよ。
相手だって理解しようとしてもらって悪い気分はしないでしょう。
感覚では、ある領域外から見れば非常に奇妙なことも、9割以上合理的な理由があります。
似たようなことは、異分野交流でよく起こります。
個人の経験でもそこで、状況を知らないことに対して、「そんなもん」とか、あたかも知っているかのように半ば見下して言い出す人は、ちょっとぎょっとしますし、少なくとも意欲がそがれます。
対して、「その時はそうした方がいいと思うんだけども、なんかあえてそうする理由はあるんですか?」という聞き方をしてくる人に対しては、説明もしやすくなるのは明らかでしょう。
もちろんある分野では盛んにおこなわれていることには、何の合理的な理由もなく「伝統」や「ゲン担ぎ」というのもあります。
これも、そんなのは「論理的ではない」と言い出す人もいるかもしれません。
しかしながら、ぎりぎりの争いをしているところでの、ゲン担ぎによる、マインドセットは、結果に如実に差が出ます。
今後、様々な分野で、相互理解が深まっていきますように。