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公開日:2020年10月11日
更新日:2020年12月2日
以前「馬鹿とブスこそ東大へ!」のキャッチで話題になった、マンガドラゴン桜。
(マンガ版のコマが見つからなかったのでドラマ版を張っておく)
https://www.youtube.com/watch?v=JMy6suxRGbo&ab_channel=%E3%81%97%E3%82%8D%E3%81%8F%E3%81%BE%E3%81%84%E3%81%AC
業界の構造や費用対効果、人生における「業務継続性」・リスク分析の観点から考えると、アスリートやアーティストのような職業を目指す人こそ東大を目指すのがいいのではないか?という仮説が立った。
スポーツやアート・作家等文化活動に必要な前提
まずスポーツやアートなどの文化活動を行うために必要な前提条件を確認したい。主に以下の3つである。
時間的余裕:暇
経済的余裕:金
精神的余裕:安定
である。簡単のためこの3つの余裕を「余裕3要素」としておく。
取り組むにはまず取り組む時間が無いといけない。道具や設備などを買うためのお金も必要。続けていくためにはそれらの安定と精神的な余裕まで必要になる。
スポーツやアート、科学研究などは歴史的に見て、貴族階級の文化であることが多かった。貴族は余裕3要素を自然と備えている。だからアートや遊びに集中できた部分は大きいだろう。ジャンルはともかく高貴で上品な暇つぶしであった側面が多い。
一方で、生活に余裕が無い状態でやってみたらわかるだろうが、日々忙しすぎて時間も金もなければ、精神的余裕なんてない。そんな中でスポーツやアートをやるのは辛いし、もはや、やる気にもなれない。私も無職を一時期経験しているがそんな心境であった。
新型コロナの影響で「スポーツがライブが!」と言っても「それどころではない」と真っ先に削減対象になる傾向がある。
スポーツや音楽活動のために不定期な休みが必要であるためにアルバイトを続ける人たちもいる。
しかし実際には最初はアートやスポーツのためにフリーターやアルバイトとして働いていたとしても、数年後に途中からは生きるのに大変になり、国際大会や展示会などにも手が出せずにアートやスポーツが後回しになってしまうのでは、本末転倒である。
さらに現状の日本の社会構造では、フリーターに代表される非正規から、キャリアの積める正規への転職は難しく、年齢が上がるにつれてますます人生の難しい局面に立たされることとなる。資産家の一族であれば問題はないが、多くはそうではないだろう。
実際に検索してみると先を案じていると思われる検索ワードが並ぶ。
フリーターバンドマンは就職すべき?苦悩と葛藤そして「タイムリミット」の現実
アスリートがアルバイトをしているのか?それともフリーターが世界大会に出ているのか?
プロとして活動できる確率
アスリートやアーティストのプロとして大成する確率を考えたい。簡単には競技人口・活動人口を活躍している人数で割ればいい。確率は0.1%(ナンバーズ3桁を的中させる確率)を簡単に割る。このような分野で「一発当てる」のは、実力はもちろんのこと、宝くじに当てるレベルで運・タイミング等などが全て揃う必要がある。そしてまずはチャンスが自動的に与えられる有名な方のご子息等というアドバンテージに持っていかれることもある。
もちろん将来性を買われスポンサーやパトロンが付けばよいが、その確率も既に低く、さらに期限が短期間である。その活動が他の分野で直接生きる可能性も高くはない。
よってそれらも自分に決定権が無い時点で、一寸先は無職かもしれない等の不安が尽きない。自分に決定権が無い状態だと、たったひとつの行動ですべてが無に帰すこともある。いわば業務継続性が断たれる可能性が上がる。
相性の良い仕事
上記のような状態であるので、スポーツや音楽といった文化活動を継続するには、余裕3要素の確保が非常に重要と言える。
そして世の中には余裕3要素が揃うタイプで、さらにキャリアや転職にも強いタイプの仕事がある。
いわゆるホワイト高給系の職業である。ホワイト高給職は、仕組み上、年収が多く、休みが多く、安定傾向にあり、さらに有効なキャリアも積める可能性まである。
そしてこの文化活動とホワイト高給職は相性が抜群に見受けられる。(まあ元々の貴族も資産と余裕と暇があったのでその傾向と一致している。)
さらに昨今の働き方改革で残業も少なく、有休消化率も高く、いざとなれば休職も出来る可能性も高い。
副業もどんどん認められ始めている。
そして今後リモートワークがさらに発展していけば、「本業」の方で海外に行かなければならなくても、現地から仕事をすれば、休む必要もない。そして有給休暇も20日以上あることが多い。
そんな典型的な時短高給ホワイト系職業の一例を紹介したい。
不動産デベロッパー
都市開発等を行っている不動産デベロッパーはホワイト職としてよく知られている。
不動産ピラミッドの頂点・三菱地所、ほぼ全社員45歳で年収2千万円に到達する模様
三菱地所は副業を認め始めている様子である。
アセットマネジメント
アセットマネジメントと呼ばれる資産運用の職種もホワイト傾向が強めになっている。
運用会社は基本的に穏やかな社風なのに高給という恵まれた環境です。
士業系
手に職の士業系はやり方次第で安定性が出せる。特に医師は単価も高い傾向にある。
アルバイトは禁止でも「働き方改革」でホワイト化、“今ドキ研修医”の懐事情
ソフトウェアエンジニア
ソフトウェアエンジニアも業種企業にもよりそうなものの、時短高給が達成できる可能性が比較的高い。
企業によっては副業が認められていない可能性もあるので、この辺りの精査は必要になりそう。
Windows 2000
これは職業ではなく一種ポジションである。Windows 2000 年収2000万円の窓際族。最近では在宅勤務のせいでWindows 2000 Home editionと呼ばれている様子。
年収2000万円の窓際族を「Windows 2000」と呼んでいる会社がある!? 「自分もなりたい」「もう使えないという意味では」
この制度がいつまで持つかは分からないし、年功序列で上がっていかなければならないために高齢になりがちである。しかしながら、残業もなく2000万円で好き勝手出来る状態は、200万円で不安定で心身ともに疲れ切っている状態よりも、趣味や創作活動に捗りそうである。
公務員を入れていない理由は、公職の場合には副業が認められていないことが多いためである。これも認められれば入れてもいいように思う。他の職種でも余裕3要素と、出来ればキャリア構築が出来るものであれば、相性は良い。
もちろんアーティスト・アスリートとして成果が出せれば最高である。しかし万が一出せなかったり、飽きて辞めてしまったとしても、それらを辞めれば、晴れてただのホワイト高給職でキャリアを積んでいるいわゆるエリートになる。人生のセーフティネット・滑り止めとしてはそんなに悪くはないだろう。むしろ仕事の方の経験を買われて、音楽やスポーツ業界団体の役員などになって、引退後も関わる可能性まで出てくる。
一方でスキルが付くタイプの定職につかずに日雇いやアルバイトで食いつなぎつつ売れるために目指していても、途中でやめてしまえば何も残らない。そして他分野への転向も難しくなる。ついでに大怪我なんかをしたら一発アウトである。
実際のところ作家や漫画家などは、歴史的に見ても会社員・医師なども多めである。仮にもし売れすぎちゃって単価が上記職業よりも圧倒的に多くなってしまった場合には、本業の方を辞めてしまえばよい。取引のコールオプションみたいなもんである。(見方によってはプットオプションかもしれない)。
「海外修行に行くから、正社員は出来ない」というような意見も、確かに組み合わせやタイミングが難しいかもしれないが、海外駐在や社費派遣で行ければキャリアも同時に積める。この確率はアルバイトをやるよりも確率は高いだろう。
アスリートとアーティストこそ東大へ行け!
当然ながら上記の職業は、人気が高かったり、専用の資格が必要である。
人気が高くなると、倍率が高くなるために、特に新卒では学歴フィルターが高いレベルで設定されている。転職であっても、中小・ベンチャーから大企業へ転職するのが難しいように、ホワイト職に就くのは猶更難しくなる。
そこでタイトルにもある「アスリートとアーティストこそ東大へいけ!」である。
現状の仕組みでは、上記のようなホワイト職に就ける確率を上げるためには、ある程度の学歴とある程度の頭脳が必要になる。
もちろん上記のようなポジションが高確率で取れるのであれば、なんでもよい。ただ日本における現状の仕組みを考えると、東大辺りが確度が高そうである。
また若い間から頭角を現し本当にプロや、それに準ずるレベルなら推薦入試なども門戸を開いている。この推薦の際に重要なのは、スポーツやアートであっても、設備や先生も重要ではあるものの、なるべく学歴フィルターに引っ掛かりにくい大学に行くことである。これによりホワイト職に近づく。怪我などでどうなるかはわからない。セーフティネットは重要である。
詳しくは以下の記事を参考いただきたい。
何事にも「選ばれる側」に回るべきという話 -キャリアの機会や付加価値・リスクの観点から-
運が重要な業界での冒険には良い滑り止め・セーフティネット設置のすすめ
集中力や突破力・追及する力
「集中して取り組む力や突破する力は、音楽やスポーツでなくても何にでも生かせる!」という主張は常にある。筆者もこの点については賛成であった。
しかしスポーツ団体を通してこの意見に対する結論は、このような抽象化して応用するような力は、ある程度の頭が前提として必要であるということである。
これが無いと他の分野に生かすことは難しい。そもそもその力をどう生かしていいのかが分からないのだろう。これは個人の内部で消化する必要があるために、教えられて出来るものでもなさそうである。ということは、ある程度の頭が無いと、せっかくの集中力や突破力、追究力が宝の持ち腐れになってしまう。
そういう意味ではこういった能力を生かすためには文武両道は前提中の前提となる。
将来を見据えた明確な目標があれば、アスリートやアーティストも(受験勉強を含め)勉強するモチベーションも上がるのではないだろうか。
また引退後きっぱりやめるのもよいが、現状の仕組みや運営に興味があった場合には、頭がいい・高学歴というのは非常に有効に働く。業界団体などは上記のような企業の例と同じ論理で構成されているためである。
逆に知能を兼ね備えて集中力・突破力のある人材は仕事でも成果を上げやすい(もはやどっちが本業でどっちが副業だかわからなくなってきた)。もしかしたら今後の時代にはさらに出世も近いかもしれない。
これらの付加価値を含めても「アスリートとアーティストこそ東大へいけ!」は本人の為だけではなく、社会のためにも理にかなっていないだろうか。
終わりに
「アスリートとアーティストこそ東大へいけ!」というタイトルではあるが、東大に行くのが目的ではない。アスリートやアーティストにとって続けたいスポーツや音楽などは、時間的余裕・経済的余裕・金精神的余裕の余裕3要素が必須になる。この余裕3要素を備えるためには、東大をはじめとした高学歴とそれに付随する頭脳は非常に有効に働く。そしてさらに付加価値として多様なかかわり方が開けてくる。参考いただければ幸いである。