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公開日:2020年9月30日
更新日:2021年5月29日
新型コロナの影響で特に海外出張がなくなり在宅勤務ばかりになった私は、もう今年は自宅浪人生だと割り切って、国際的に通用する資格(いわゆる国際資格、以下国際資格で統一)を受け続けている。この関係で、好きな観光地はピアソンテストセンターのような状態になっている。
国際資格とはいえ、資格団体が用意する国の会場に行って試験を受けるわけではない。中にはそういうものもあるのかもしれないが、多くはWeb形式で提携されているテストセンターで開催される。しかも結構受験料は日本円換算で6万円・10万円などと軒並み高い。
この記事ではそんな国際資格の試験の実態をお届けしたい。
なおオンライン監視受験についてはこちらを参照ください。
テストセンター
事前に申し込みを済ませ、当日はテストセンターに向かう。テストセンターは、パソコンがひたすら並んでいる自習室のような建物という理解で問題ない。多くはビルの1テナントとして入っている。
詳細は以下のような記事を参考いただきたい。
テストセンターの入り口には受付とロッカーがある。
受付で身分証明書を提示し、本人確認をされる。
試験場に持ち込めるものは、文字通り、身分証明書とロッカーのカギのみ。それ以外は荷物を全てしまうように言われる。
この荷物検査はかなり厳重である。上着は一度脱いで確認される。ボディチェックをされることもあった。それだけでなくポケットの中、靴の中と靴下の中、ズボンの裾までチェック。
・・・普段は触りもしない後ろのポケットから、クリーニングのタグが出てきてしまった。タグは入室前に処分するように伝えられた。
いよいよ入室かと思ったが、今度は
「メガネを置いてください。」
と、メガネを所定の位置の台に置き、係員がメガネに細工がないかを確認する。
こんな厳重な体制では、江戸川コナン君の秘密兵器も根こそぎ没収されてしまうだろう。メガネだけでなく通信のできるバッジや蝶ネクタイ型の変声機、麻酔銃時計まで取られたら、コナン君は本当にただの見た目は子供頭脳は大人、だけども周りには何も出来ない小学生になってしまう。
逆に言えばコナン君を封じたければ、テストセンターで行うべきである。
これだけ厳重な体制であるため「大切なことはすべてYahoo知恵袋が教えてくれた京都大学の入試カンニング」みたいなことはできない。
上記のようにチェックをされるので、テストセンターの服装については、基本的に自由で普通のスーツや私服で問題ない。
ただカンニングペーパー所持などの疑いを避けるためには極力軽装の方が良さそうである。この理論で行けば、なるべく隠すところが無い服装で行けばよい。例えばブーメランパンツやマンキニでテストセンターへ迎えばカンニングの疑いは晴れるだろう。
しかし、なんだか別の疑いをかけられそうである。
試験
テストセンター内部は予備校の自習室のようにパーテーションで区切られ、各席にパソコンが設置されている。指定の席に通されると、パソコンの画面に氏名とテスト名が表示されている。
あとはインストラクションに沿って進むだけである。
試験時間はものによるが、私が受けるものは4時間や6時間程である。もはや1日の労働時間と大差がない。途中で休憩も出来るが、休憩中も時間は止まらないため、あまり息抜きが出来る状態ではない。ついでに英語。
ずっと画面に向かっていると、途中からは疲れてくるし、集中力も切れてくる。そして色んな事が頭をよぎる。
なあ、疲れたよ、パトラッシュ。。。
立て、立つんだ、パトラッシュ!
いけ、パトラッシュ、10万ボルトだ!
https://prcm.jp/list/フランダースの犬
疲れすぎて、全てのキャラがパトラッシュに見えてくるではないか。10万ボルトが出来るのは、犬ではなく電気ネズミだしもはやモンスターである。あしたのジョーに至っては読んだこともない。そんな区別も出来ないくらいには疲労がたまる。PriorityとかPrioritizeなどの単語までもがパトラッシュに見えてくる。ちなみにパトラッシュの冒険もとい「フランダースの犬」には「疲れたよ、パトラッシュ」というセリフは存在せず、「なあ、疲れたろう?」と語りかけるネロのセリフのみである。考えてはいるものの、精神状態はまるでラインに一列に並び、お刺身の上にタンポポを乗せるアルバイトのようである。
上記のような感じであるために、資格の受験は見方によってはこんな感じになる。
数万円支払って、持ち物を徹底的に監視され、身ぐるみを剥がされ、監視カメラで監視され続ける中、数時間ひたすら画面に向かって考えながら画面を操作するという閉所恐怖症には耐えられなさそうな拷問を受ける
何ともマゾ極まりないアクティビティである。
なお家のパソコンでひたすらリモートで監視されながら受験をする方式もあるが、これもあまり気が進んだものではない。ずっと見られている中での試験だなんて、自宅であってもさらに閉塞感と拘束・隔離感が増す。
試験会場の脆弱性
一応曲がりなりにもハッカーなので、脆弱性やハック方法を考えてしまう。ぱっと思いついたところでは、途中でトイレ休憩は認められているため、問題を覚えてトイレで待ち構えている仲間と相談等ならできそうではあるが、まあそこまでしないのだろう。まともに試験対策の勉強しよう。
試験結果
上記のように、試験対策も、受験中も結構大変である。費用も掛かる。精神的にも経済的にもかなりのコストである。資格自体は曲がりなりにも「最も年収が高い資格ランキング(Highest Paying Certificates)」にも載っているような資格であり、取得自体にも一定の価値があるはずである。そして試験自体も半ば拷問のように感じるほどには過酷なものである。
さて世の中の多くの重要なイベント、合格発表や大会の勝利では様々な祝い方をする。例えば、いくつかの大学の合格発表では、合格発表の掲示板の前にアメフト部が待機しており、合格者の胴上げが行われる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/胴上げ
重要な大会の表彰式や祝勝会では、シャンパンを掛け合うファイトを行う。バーシティマッチの優勝時や博士論文の提出なんかでも安物ながらこれを行った。
その他にも花火がパチパチ光っているロウソクが刺さったHappy Birthday!と書いてあるプレート付きのチョコレートボードが付いたバースデーケーキが出てきて、いきなり音楽がかかってハッピーバースデー!みたいになったり。
バースデープレートがかわいい渋谷カフェ7店!特別な誕生日にしよう♡
これは映画ではあるが、お魚さんを釣り上げて1万円札の札束のビルシャワーなども。
https://youtu.be/k2ISPOcSG1I
以上のように様々な祝福やお祝い方法がある。重要なものなら猶更である。
ではこれらを踏まえて、過酷な環境下で国際資格に合格するとどうなるだろうか?クラッカーとか鳴らしてくれるのだろうか?胴上げとかされるのだろうか?100ドル札とか舞うんだろうか?もう気になって仕方がないだろう。
実際にはこのような試験では、試験が終了した後に以下のような文面が表示された。
You have PASSED your exam.
以上。
番号を見つけたフリをして「受かった!」と大声で叫んでも、アメフト部の人たちが駆け寄ってきて胴上げをしてもらえるでもない。伝統の一戦の勝利の際や博士論文の提出の際にシャンパンシャワーをしてもらえるわけでもない。ロウソク吹き消すサプライズもなければ、札束が舞ったりもしない。
ただ画面に「PASS」と出るだけ。
何とも無味乾燥である。もはや注意してみていないと「終了しました」の画面と間違いそうなほどには気付かない。
テストセンターの職員の方々は、私が受かろうが落ちようが何の関係もない。興味もない。もしかしたらプライバシーとして結果を聞いてはいけないのかもしれない。このため「受かったよ!」という機会すらない。
「試験が終了しましたか?」と聞かれ「終了しました。」と答えると、「ではご帰宅されて結構です。」と言われるだけである。人間味などない。
後日、合格証明書も郵送してくることもあれば、PDFファイルが送られてくるだけのこともある。本当にこれ以上は何もない。むしろ登録費を払わされる。
達成感という意味では「ニンニク入れますか?」でお馴染み、ラーメン二郎のラーメンを野菜マシマシで食べ切った時の達成感や、公演チケットを買いイベントに参加し、部屋に閉じ込められ、クイズや謎解きをして部屋から脱出を試みるというドM極まり無いゲームであるリアル脱出ゲームで「脱出成功」したときの達成感の方が明らかに高い。
ラーメン二郎は確かに達成感はあるが、褒めてはもらえない。むしろ残すと怒られそうである。そして健康に良さそうというわけでもない。
脱出ゲームも「脱出成功!」と成功率ボードと共に場合によっては記念写真を撮る位である。スタッフさんはこれ見よがしに褒めてくれて、さらにシールなどのグッズの購入を薦めて来る。ネタバレは禁止だけどSNSにはアップして欲しいという素晴らしい営業力。ついでにミュージカルのチラシのように、他のイベントの宣伝も挟まれている。
どこかの夢と魔法の国では夢が金で買えそうな感じがしてしまったが、達成感もまた、金で買えてしまうんだろうか。(心がこもっているかはさておき、称賛はおそらく金で買える。)
ディズニーリゾートを斜に構えた穿った目線から見た仕組みの考察
やれやれである。しょうがないので、資格取得を記念して自分でネタ写真を撮って満足することにした。
ホワイトハッカー認定時。
背景をハッカー仕様にして、フードを被りアノニマスのマスクを装着。アノニマスマスクはAmazonで購入できます。こちらなんかは2枚で1000円。20年前のお値段です。公認AMLスペシャリスト(アンチマネーロンダリング)。
手に持っているのは葉巻に見えるが、これは葉巻型の香水である。
正直なところ、このネタ写真を撮るために国際資格を取得しているのではないか、という感じすらする。
ちなみにPASS(合格)だったらまだいいものの、FAIL(不合格)とか書いてあったらもう立ち上がれない。実際になった時にはそのまま疲労と喪失感だけが残り、ジーンと嫌な汗をかいた。結局5分くらい立ち上がれなかった。なお再受験の際には同一の高額試験料を支払う必要があり、この拷問をもう一度受けることになる。後日送られてきた結果が問題1問分で不合格だった時なんて、喪失感も2回やってきた。
終わりに
以上テストセンターと国際資格についての実態であった。
一部の資格は就職や転職に大幅に有利になると言われているものもあり、取得希望者が多い。しかしその過程は大変過酷な割には、地味で無味乾燥なものである。
落ちるとやっていられない気分になるので、是非とも一発で合格するよう、用意周到な準備をお勧めしたい。
なおどういう資格を受けるとよいか?どのように対策をすればよいか?という真面目な対策は次の記事を参考いただきたい。
資格・試験の意味のある実践的で効率的な勉強法と資格の選択について