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公開日:2018年1月24日
更新日:2019年7月15日
以前こちらで紹介した宇宙を動かす力は何か-日常から見る物理の話- の著者である松浦壮氏の新作が発表されました。
時間とはなんだろう 最新物理学で探る「時」の正体
本書では、時間の概念を極力わかりやすく多面的に論じられています。本の内容は、時間の概念を、専門用語をなるべく使わずに、わかりやすく記された本です。新書・Kindle版両方あります。
大学で何かしらの物理や物理工学などに関係する分野で物理を学んだことがある人にとっては、「どこかで読んだことがある?」感じがするかと思います。
しかし、大学の物理系の教科書では、数式がふんだんに使われていますが、本書では数式はほぼなく、読み物として記述されている点に特徴があります。
いわゆる理工系の専攻の方々にとっては、読みやすい本です。
一方で、松浦氏第1作目と比べると、高度で専門的な概念が多く出て来ます。
全8章ですが、特に6章目以降は、結構好きな人でないと、厳しいかもしれません。理由は量子力学が直観に反するためで、これをうまく説明するのは、内容を理解している人でも「そうなるもんだから」という感じで、説明が難しいのは分野の特徴といってもよさそうなものです。
■おもな内容
第1章 時を数えるということ
第2章 古典的時間観 ――ガリレオとニュートンが生み出したもの
第3章 時間の方向を決めるもの ――「時間の矢」の問題
第4章 光が導く新しい時間観の夜明け ―― 特殊相対性理論
第5章 揺れ動く時空と重力の正体 ―― 一般相対性理論
第6章 時空を満たす「場」の働き ―― マクスウェルの理論と量子としての光
第7章 ミクロ世界の力と物質 ―― 全ては量子場でできている
第8章 量子重力という名の大統一 ―― 時間とはなんだろう?
これに関して、本書に対するアマゾンレビューを引用します。
この本は、「時間」の本質を追究したものではなく、「時間概念を軸に相対性理論と場の量子論をNon-Math方式で説明」したものというべきである。すなわち、難しい数学抜きで、一般相対性原理と場の量子論とその発展形を説明しようとする無謀な?試みである。
ただ最先端の研究分野である量子重力理論について説明された最後の章(第8章)についてはかなり難解で、著者が意図した「文系」の人にも理解できるようにという点は達成されていないのではないかと思われる。
この本の 難易度は、理系レベルで言えば、高校で 理系を専攻し、理系大学での 教養課程で「物理学」を 習った程度の レベルが 必要かもしれません。
この手の本ではかなりわかりやすい
概ね引用したような他の方のレビューと同じ意見です。
もし理工系専攻ではないものの、興味がある方は1冊目の宇宙を動かす力は何か-日常から見る物理の話-を先に読まれることをお勧めします。
宣伝活動の精力的にされています。慶應義塾大学日吉キャンパスの生協2階の図書コーナーはこのようにずらり。
「本屋の活字の中に、手書きがあると目立つ」とされ、ポップを手書きで書かれています。確かに目立っています。
私は慶應義塾大学修士課程在学中に、この松浦教授の元で実験物理学のTAを担当していました。(専門や専攻は全く無関係です)
クラスは、理工系ではない、文学部・商学部・法学部・経済学部などの学生を対象とした、教養としての実験物理学のコースであるので、松浦氏の本人の能力に加え、このような本を得意とする土壌もあると言えます。
このような講座では「単位目的」のやる気がなく下手したら物理なんて興味すらない人がとっています。そのような学生を相手に説明しているのですから、分かりやすく説明する能力には磨きが日々かかっていっていると予想しています。
普段は私はKindleで買える本はKindleで購入していますが、今回は私も久々に日本語で書かれた単行本を購入しました。理由はこの偉大な大先生のありがた~い・ありがた~いサインを頂くためです。
サインをいただきました。ありがとうございます。本人曰く「このような酔っぱらった感じで適当に書いた感じがとてもいい」そうです。確かにその方がオリジナリティは増しますね。
著者紹介・・・?
そんなアウトリーチを専門とする物理学者さんの著者紹介をご紹介します。
松浦 壮
1974年生まれ。1998年、京都大学理学部卒業。2003年、京都大学大学院で博士号(理学)を取得。その後、素粒子物理学者として日本、デンマーク、ポーランドの研究機関を渡り歩き、2009年、慶應義塾大学商学部勤務、2016年から同大学教授。研究テーマは、超弦理論と数値シミュレーションによる超対称ゲージ理論の解析。研究の傍ら、自然科学を専門にしない学生を対象に物理学の講義をおこなう。趣味は、武術(合気道他)、水泳、クラシックギターなど。著書に『宇宙を動かす力は何か』(新潮新書)がある。
「研究の傍ら、自然科学を専門にしない学生を対象に物理学の講義をおこなう。」とありますので、あくまでメインは素粒子物理学者でサブがアウトリーチのようです。
今後も多方面でのご活躍を心よりお祈り申し上げます。
なお、本記事や宣伝は、担当教員から強制されている等は全くありません。そもそも半ばこの茶化している記事を本人に見せています。