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公開日:2021年8月5日
更新日:2021年8月8日
オリンピックのアスリートもいつかは引退をする。引退した後のキャリアは度々話題になるが、画期的な方法はまだ出て来ていない。
オリンピック選手は、多くは引退した後に仕事がない様子である。ほかの国でも同様の傾向もあるようである。
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引退した後のアスリートが希望する仕事は、多くの場合「スポーツで培ったスキルを活かせて、スポーツに関われる仕事」等と言われる。具体例として真っ先に上がるのは、監督・コーチ・協会役員・解説者・コメンテーター・タレント等である。ただしこれは数が非常に限られており、担当している人の任期はかなり長い。さらにスポーツ以外のタレント性のような別の要素も重要になってくる。圧倒的な活躍か、圧倒的なキャラ立ちが無いと厳しいものとなる。
ここで、「スポーツで培ったスキルを活かせて、スポーツに関われる仕事」として、今回話題になっているオリンピックのアルバイトのような、スポーツイベントのアルバイトは、どうだろうか?
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なぜアスリートにはイベントバイトが適しているかを説明したい。
イベントバイトとは?
まず、イベントバイトについて簡単にまとめておきたい。
イベントバイトは、イベント会場の設営や運営を行う仕事で、立ちっぱなしであったり重いものを運んだりすることが多い。場合によっては怒号が飛んだりもする。
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アスリートが希望するスポーツのスキルが生かせる
先述のようにアスリートが希望する仕事に、オリンピック等のイベント関係のボランティア・アルバイトが、鍛えたスキルを活かせてスポーツにも関われることを希望する傾向があるようである。
ここで、イベントのアルバイトはいかがだろうか?次のようなアスリートが今まで鍛えてきたスキルが生きるだろう。イベントバイトは
鍛え上げられた筋肉を用いて、次々とパイプ椅子を畳み、運ぶ。
グリップするスキルと暑い中グラウンドに立つスキルを活かして「立ち入り禁止」の看板を握って立つ。
高いところへよじ登っていき、設備を設置する
気合いの入った掛け声と礼で、客にパスを渡す。
気合いと根性で年上のバイトリーダーからの斜め上か下のよく分からない理不尽な指示にも耐えて日々作業をする。
まさにトップレベルのアスリートのスキルが役立つ。何ならすぐにでもバイトリーダーには出世するだろう。
スポーツに関わる仕事
イベントバイトでも、スポーツイベントのアルバイトであれば、スポーツに関わることが出来る。
スポーツ大会の床や会場を設営する。
スポーツ大会のチケットをもぎって、スポーツ観戦する観客を誘導する。
スポーツ大会のトイレを掃除する。
引退後もスポーツイベントに関わることが出来る。イベントバイトはスポーツに関わることが出来る仕事である。
持続可能性のSDGsにも適している
最近言われているSDGsの側面もある。アスリートは、試合に出る合間に、イベントのバイトをし、いざ大会に出ている時には、試合に集中する。引退後には、イベントバイトを行えば、イベント運営の持続可能性も満たせ、SDGsにもぴったりである。以上、アスリートは、イベントの派遣アルバイトなどでスポーツに関わっていくのが最適解なのではないだろうか?
アスリートと短期の派遣バイトは置かれている状況・構造が似通っている
またオリンピック選手はじめ、スポーツ選手は各大会ごとに、代表者や出場者が選出されるいわば超短期の非正規派遣アルバイトとほぼ同じ仕組みになっている点でも共通している。派遣バイトでも、毎回の会場ごとに参加する人が変わる。このように構造からも類似している。
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しかし・・・?
上記のように、アスリートの身体能力を中心としたスキルセットと、イベントバイトで必要なスキルセットが一致している。よってアスリートはイベントバイトが向いている。・・・本人の気持ちを除いては。しかし肝心のオリンピアン・アスリートたち自身は、こういった仕事はやりたくはない様子である。聞いている限りでは、おそらくヒエラルキー・社会的地位の問題である。
仮にオリンピックのメダリストがオリンピックのボランティアやスポーツイベントのバイトをしていたら、上司に当たるイベントバイトのバイトリーダーこのような会話が始まりそうである。
バイトリーダー「おいバイト君(オリンピックメダリスト)、これ運んどけっつったろ?マジ使えねーな。」
メダリスト「なんだと?俺はオリンピックのメダリストだぞ!」
バイトリーダー「あ?んなもん関係ねーよ。早く運べよ。」
メダリスト「少なくとも名前で呼んでください。」
バイトリーダー「ん?バイト君はバイト君だろ。」
メダリスト「・・・辞めます。」
こんなことになりそうである。
イベント設営の仕事で、お立ち台を組み立てて、マイクをセットする業務なんかをやっても「前は自分が立ってたのになぁ・・・」と思うのだろう。
アスリートとイベントバイトは同じ身体を使う点で共通している。しかし各国代表のアスリート特にメダリストは、該当のスポーツの競技者内ではヒエラルキーの頂点である。名前で呼ばれ、本人にスポットが当たる。一方でイベントの派遣アルバイトは、イベント運営のヒエラルキーでは、最底辺に近い。そして人数合わせて的で、名前で呼ばれることもなく他の誰とも替えが効く。この点がプライド的に嫌だということだろう。
アスリートの本音で希望する仕事
アスリートは「スポーツのスキルが生かせて、スポーツに関わる仕事」のような説明をすることが多い。しかしながらこれは、本音で希望する仕事では、少し違うもののように感じる。要するにアスリートの希望する仕事は「スキルが生かせて、スポーツに関わる仕事」というよりも、「社会的地位が高い仕事」・「チヤホヤされる仕事」ということなのだろう。
「スポーツに関わる仕事」というのも、アスリートは経験として、コートやピッチに立っている時は、周囲から「優勝候補の凄い人」のような羨望のまなざしで見られたり、競技力の向上に関していろいろと質問をされたり、モテたりしたという成功体験があるからではないだろうか?一方で競技関係以外では全く相手にされないのにも関わらず。逆に言えばチヤホヤされさえすれば、スポーツに関係なくてもいいのかもしれない。チヤホヤされないのであれば、スポーツに関わっていても嫌、ということになる。
しかし、該当するスポーツの業界・特に競技に直接関係する領域を離れてこのような仕事に就くには、基本的に高い知能が必要となる。
個人的にはスポーツ団体の関係者や選手としても、アスリートへ等は次のような提案を常々している。
「スポーツを楽しむには時間的な余裕・金銭的な余裕・精神的な余裕が揃っていないと難しい。国際大会に行くには、調整も必要になる。ここで、派遣や短期のアルバイトではなく、場所を選ばない時短高給系の仕事(例えば サイバーセキュリティやAIのエンジニア)をしつつ、国際大会に出るのはどうか?これであれば仕事にも困らず、お金にも余裕があり、引退してもキャリアがある。」
しかしながら、今までの経験上これは受け入れるのが難しい様子である。傾向として、スポーツ推薦・実業団・プロ等の制度により、どこかのタイミングで机を捨てている(周囲の人が捨てさせることもある)ことや、学業へのコンプレックスが強いことが多いため頭脳労働の適性がどうしても低くなりがちである。
これを根本的に解決するには、机を捨てずに勉強するしかないが、現状ではこの仕組みを変えない限り、続いていくことになりそうである。