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公開日:2019年12月28日
更新日:2020年11月25日
アカデミアな領域には必ずと言っていいほど存在する「学会」。個人的には日本の学会にはほぼ参加したことがなく、あったとしても学内のものや、物理・工学系のものだけであったが、大体どのようなものかは分かっているつもりであった。
今回お誘いをいただき参加した学会は「イベント学会」。コンサルではなく物理でもなく、スポーツ団体の代表理事として参加した。
私が知っている「学会」とはだいぶ異なった「学会」であったので、少し紹介したい。
イベント学会とは?
そもそも「イベント学」とはどういうものなのだろうか?公式サイトによると、以下のようにある。
1)活動方針
1.イベントに関わる学術研究の質と量を向上させる。
2.イベントに関わる学術研究の社会的認知・評価を獲得する。
3.組織・資格者制度を活用して、全国規模の会員構成・活動を実現する。
4.国・地方行政への提案・発信力を強化し、イベントの実現力を高める。
5.安定した収支と健全な機関運営を行う。
どうやら、イベント運営に広く関連した事柄を話し合う学会のようである。これが「イベント学」ということなのであろう。
なお、英語でEventologyを検索すると
(statistics) The branch of statistics that deals with random, vague events
ランダム性やあいまいさを取り扱う統計学の1分野
とあった。おそらくこういうガチガチな数理とは違うものであろう。
参加者層・雰囲気
イベント学会の参加層は、もうイベントさえ関係あれば、運営・コンテンツ・研究者・行政等なんでもありのようであった。プログラムはこちらから閲覧できます。
発表用件は特に厳しいわけではない様子で、「〇〇オタク」のような肩書で発表されている方もいらっしゃった。(なおこの方の発表のクオリティは相当に高かった。)
このため、学術会議というよりはいろんな分野のアウトリーチ合戦に近い雰囲気を感じた。逆に言えば私のような「イベント学」の初心者でも内容が理解しやすいような発表が多かった。(仮にこれが量子物理の学会であれば、まあ確実に分野外からの参加者にとっては意味不明である。発表の最初の一文が分からない可能性が高い。「発表第一文『量子コンピュータの高速化には、~』、・・・そもそも量子コンピュータって何?ていうか量子って何?」て感じになる)
学生の発表
私が知っている「学会」の発表は、学生だろうが高名な教授だろうが全く関係なく、根掘り葉掘り質問・議論をするものであると感じていた。そもそも所属以外学生とかどこにも書いていなかった。同時に学生だからといって容赦はしない、相手は研究者として話し合うのが常である。そういう環境では、クオリティが低いと判断された発表は、容赦なく炎上している例もよく見てきた。むしろ質問も出ず、ほぼ無視みたいな発表も特に国際会議なら、よくあるのが通常であった。
もはや教授同士の喧嘩みたいな発表・質疑応答なんていうのも日常茶飯事のような分野もあった。空気は張りつめている。むしろ格闘技かなんかを見ているような気分であったこともある。
上記のようなものが知る会議であった私は、今回の学生発表を聞いて
私の心の中「・・・もしかしたらこれ、炎上するやつ・・・!?!?」と思っていた。
その発表に対しての質疑応答。
〇〇協会理事「素晴らしい発表ですね。今度の会議で提案させていただきます!」
はい、拍手~~~~!!!!
私の心の中「・・・!?!?」
▽▽会社「いいアイディアですね!!!□□についてはどうなんですか?」
私の心の中「・・・!?!?!?!?!?!?」
どうやら私が知っている「学会」とは何かが違った。「学生の発表だから、頑張って考えてるだけで十分!」ということなのだろうか?クリティカルな質問をする人もいなければ、批判する人もいない。全体的な雰囲気がそんな感じであった。
これらの発表に対し、懇親会では、学生発表の投票形式での表彰をしていた。発表全4チーム。2チームが優秀賞で、残り1チームも表彰され、計3チーム。
さらに残り1チームだけ何も賞が無いのはかわいそうなので「頑張ったで賞」よって全員表彰!おめでとう!!
・・・やはり私が知っている「学会」とは何かが違うようであった。
ただ、発表と発表後に憂鬱になるよりも、これくらいの方が参加してくれる人は増えそうである。
趣味は本業を超える(こともある)
こういった趣味と本業の業者が入り乱れる業界では、いわゆるプロアマ混在の状況になりがちである。なお私自身も、本業を午後半休を取って参加した。
仕事でイベントに関わっているいわゆる業者・行政・研究者の方々に加え、ボランティアや趣味で参画されている方も多くある。
しかしそれでも、趣味やボランティアだからといって、クオリティが低いわけではないし、むしろ縛られていない分独自の視点が出てくるのは世の常である。今後はこういう方々を他の分野でもむしろ積極的に登用し、話を聞いたほうがいいとすら感じる発表が多かった。
個人的な考えは以下にまとめたが「仕事」では、対価のために要件を満たせば終わりな一方で、趣味では際限がないので、クオリティは高くなりがちになるという側面があるように思います。
イベント学会の位置づけ
イベント学会について、常連と思われる参加者の方と話していたところ、興味深い話を伺った。
「イベント学会は学術会議ではない」
「イギリスで量子物理のPhD取ったみたいな、いわゆる本物は来ちゃいけないかも!」
っていう感じの学会だそうである。
イベント学会は22年続く学会だそうである。
22年も続くのだから学術会議の連盟にも加盟しないか?という話が出たものの、「参画したくない!そんなことをしたら自由にやれなくなる!」という考えを持つ方が多いようで、22年も続く学会なのにもかかわらず、いわゆる学術会議の業界団体などには加盟していないそうである。私はここでこの例を思い出した。
ゴールデンボンバーである。ゴールデンボンバーは紅白歌合戦にも出場するほどの、もはや日本を代表するバンドのひとつといっても言い過ぎではないバンドである。しかしながら未だにインディーズバンドである。
2010年にメジャーレーベル7社からメジャーデビューのオファーを受けたが全て断っている。そのため、現在でもメジャーレーベルと契約をしていないいわゆるインディーズである。
https://www.youtube.com/watch?v=vvepe04Dbh4
インディーズを続けるのは、理由はいろいろあるようだが、「いろいろ言われたくない」というのがあると予想する。なぜメジャーデビューしない?鬼龍院翔が語るインディーズのメリット
「学会界のゴールデンボンバーイベント学会」
個人的には完全に今までとは知らない分野に迷い込んでいった気分ではあったが、これはこれでアリ、と感じる、むしろ今後の「働き方改革」が推進されている本業と副業・趣味の境界があいまいになっていく日本社会では、むしろ参考になる部分が多いのではないか?と感じるイベント学会体験であった。
関連:イベント検定を受験