【超訳】目的によって表現は使い分けるべき典型例【超訳ニーチェの言葉】


 はじめに

巷には様々な書籍が溢れています。特に歴代の名著とされている本の解釈本も最近は多いように思います。この「超訳ニーチェの言葉」もそうでしょう。

超訳ニーチェの言葉

超訳ニーチェの言葉

  • 作者: フリ?ドリヒ・ヴィルヘルム・ニ?チェ
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2012/10/18
  • メディア: Kindle版
  • 購入: 1人 クリック: 1回
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私自身ニーチェに詳しいわけでは無いので、そこまで突っ込んだことは分かりませんが、この本自体としては面白かったと思います。形式としてはニーチェの言葉に作者が解釈解説を加えた本になっています。大体1つの言葉が1ページほどにおさまっています。ベストセラーにもなっているこの本ですが、Amazonレビュー的には賛否両論が割れているようですが・・・?

Amazonレビュー

この超訳ニーチェの言葉、2016年2月現在では

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Amazon.co.jp: 超訳ニーチェの言葉 電子書籍: フリ-ドリヒ・ヴィルヘルム・ニ-チェ, 白取春彦, 白取 春彦: Kindleストア

と、典型的な賛否両論なレビューの分布になっています。もうちょっと詳しく見てみると、全体的な感じを一言でまとめると、

高評価

分かりやすい。読みやすい。

低評価

ニーチェの言葉じゃない!!正確さに欠ける!買って損した。

という感じ。

目的に合わせて表現も変えたほうがいい典型例

こういったちょっと専門的に込み入ったものを一般に分かりやすく説明しようとした際には、正確性を欠いたりすることは日常茶飯事に起こっています。ちょっと見てみましょう。

何でも凍らせる液体:液体窒素

例えば、よくテレビなどで「何でも凍らせることが出来る液体」として「液体窒素」が紹介されることがあるでしょう。液体窒素にゴムボールやバラの花を入れて凍らせてパリパリニなった状態を披露。「何でも」凍らせます。

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1.4 実験:液体窒素で花を凍結する

ちょっとでも科学の知識がある人は「液体窒素は何でも凍らせることは出来ない」ことをしっているはずです。液体窒素の融点は77ケルビン(約-140℃)。絶対零度は0ケルビン(-243℃)なので、77ケルビン以下のものを凍結させることは出来ません。最も簡単な例では、特に低温の物理実験で利用される「液体ヘリウム」沸点4.2Kは明らかに凍らせることは出来ないでしょう。そもそも液体窒素自体が液体なのだから、それ自体が液体であることを考えると、「何でも」凍らせることにはなっていないでしょう。

ということで、ここでいっている「何でも」は「人間の日常生活で利用されている一般的なものであれば何でも」ということになります。

じゃあそういえばいいじゃないか、という意見もあるかと思います。しかし、そんなことを言えば余計に伝わらなくなってしまうのではないでしょうか。

例えば、液体窒素の説明をテレビで「日常生活で利用されている一般的なものであれば、何でも凍らせることが出来る液体」といったら、聞いただけで超意味深じゃないですか?なんだよその回りくどい表現!ってなりそうです。

取扱説明書

取扱説明書などもそうでしょう。電源が入れられて使えればいいだけの、プログラムといえば、運動会の冊子と思って疑わないレベルの一般のユーザーに、難解なプログラムのコーディングの詳細を押しつけても、スルーされるだけならまだしも、苦情さえくることになるだろう。

そもそも、何のためにデベロッパーモードがロックされていたり、一見探さないと分からないような位置に設定されているのでしょう?これもいろんな理由が突き詰めるとあるのかとは思いますが、ざっくばらんに言うと、「「通常ユーザー」と「込み入ったユーザー」の棲み分けをするため」ではないでしょうか?

言葉覚えたての子供に「キリン」を説明

相手が初級者、初心者という場合の最たるものでいきましょう。相手は「言葉を覚えたたての子供」幼稚園入園前後くらいを想定しましょうか。

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キリン – Wikipedia

子供の質問「ねーねー、きりんさんってなあに?」

さてどう答えるでしょう?

例えば一般的な模範解答は「首の長いどうぶつだよ!」

くらいなもんでしょう。間違っても、

「そもそもキリンと呼ばれるものには、一般的には三種類ある。ひとつはキリン(学名:Giraffa camelopardalis)は、偶蹄目キリン科キリン属に分類される偶蹄類の動物。二つめは、「麒麟」と書く中国神話に現れる伝説上の霊獣。最後に日本では有名な酒造会社だけど、そのうちどれを聞いているの?そもそもどのキリンも人では無いのだから人間に対して利用する接尾辞である「さん」をつけるのは日本語文法的に間違えている」

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麒麟 – Wikipedia

キリン 一番搾り 350ml×24本

キリン 一番搾り 350ml×24本

等とは言わないだろう。むしろ本気でこう言ってるやついたら何かしらの病気の可能性が高い。こんな言い方をされてはこどもも二度と近寄らなくなってしまうのでは・・・?

個人的にもなるべく近づきたくない。

超訳

よって、この「超訳!」などのシリーズは、そもそも「超」なので「翻訳」では無いのでしょう。それこそ「超入門」だと思えば、しっくりくるんじゃないでしょうか?この本をきっかけにニーチェに取り組む人が増えれば、この本も役目を果たしたことになるのではないでしょうか?

気になったので「超訳」を調べたらあった。

「超訳とは“意訳をより洗練したもの”です」という返答を頂いた。さらに、アカデミー出版のウェブページには「自然な日本語に訳すことを目指した」ものとして「超訳」が考案されたとある。

www.sinkan.jp

 超訳とは、天馬龍行(アカデミー出版社長・益子のペンネーム)が考案した翻訳法で、作者が何を言おうとしているのかを主眼にして、読者が読みやすいよう自然に訳す、という概念の翻訳法である。直訳や意訳など、他の翻訳法と比較される。アカデミー出版の登録商標。

アカデミー出版 – Wikipedia

やっぱり。元々超訳は翻訳ではないそうですよ!多少は解釈も違っちゃってもしょうがないかも。

まとめ

どの場合でも共通して言えることは、相手の要求レベルに合わせて、返答や表現を変えているところにある。しかし、「超訳」のような書籍タイトルのように主としたターゲット以外の層の視界にも入ってしまった結果、「正確さを欠いている」のような「キリンは偶蹄目キリン科キリン属に分類される偶蹄類の動物」のようなレビューがついてしまうのだろう。テレビも同様に視界には入っていると思うが音や文調、表現などで比較的「空気を読みやすい」環境にあるので、そこまで目立たない、といったところだろうか。ということで「超訳をニーチェはそんなに軽くない的な発言は、超訳の定義に沿うとやはりお門違いのようです。「これはこれ」として読むと結構面白いんでは?

こういうのを検証するには現本も読んでみるべきなんでしょうね。ちょっと原本の方も読んでみようと思います。

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